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61:alchemy?

 ご馳走様をして本日の予定確認。

「ふもとの寺跡かなんかまで歩いてどのくらいかかるの?」

 すてが盆を下げながら答える。

「1時間もかかりません。」

「ゆき、伏見課長は何時頃に来るって言ってたっけ?」

「何時とは言っておられませんな。」

 じゃあ、村中の様子見て、伏見課長が来なければ一度下山してみようか。そうや、金を持ってへんねんな。どうしようか。

「錬金すれば良いですな。」

 そうか、金が出せたっけ。いや、どうなんやろ、ええんやろうか、この地球環境的な意味で。

「特に問題ないですな。金が何キロか増えたところで地球的にも宇宙的にも問題ないですな。」

「今の日本は金山とか稼働してないよな。」

「はいな。」

 まいっか。そういやこないだ作った金はどうしたっけ?

「多分洗濯のときに捨てられてますな。」

「やっぱり?」

 袂にバラバラ入れただけやし、ピカピカしてるわけでもないし少量やし、砂金見たことなかったらちょっと重い小石みたいなもんやからなあ。

「いえ、とってあります。」

 すてが小さめの巾着を持ってくる。

「ああ、ありがとう。」

 ついでに乾いた布巾をもらって広げ、その上にあけると、10グラムもないか。

『金』

 その上に更に追加で金を出す。サラサラと手のひらから何かがこぼれ落ちる。お茶碗半膳くらいで止める。

 これで、百グラム以上あるかな。どれくらいの価値があるやろ?ていうかこれ、どこで換金できるんやろ?いや、国家が独占したりしてないか?ハインラインの「夏への扉」で何かそういったことが有ったような無かったような。そういえば、れいえもん殿に無一文みたいなこと言ったような気がする。これで返そうか。じゃあもうちょっと出そうか。

『金』

 同じかもうちょっと出したところで止める。せや、時計欲しいなあ。

『金』

 更に倍ほど出す。これで1キロ位か。

 金一キロってなんぼや?まあ、伏見課長に聞こうか。いやとりあえずれいえもんさんに聞こうか。第2次世界対戦くらいから現代までで物凄い金相場が上がってるっていう話は知ってるけど、細かい数字は知らんからなあ。今は元の世界では5000円位?とか言っとけばだいたい良かったけど、こっちではどんなもんやろ。そもそも統治納税形態からして分からんし相場も全く分からん。でもまあ自由貿易ではないにせよそれなりに世界と国交が有るなら米本位制は流石にやめてるやろうし。グラム5000円なら500万、100円なら10万、但し貨幣価値による。明治から戦前の貨幣価値なら千分の一とかそれ以下とかやったと思うから、まあわかりまへんな。北海道でのゴールドラッシュが有ったか否か、で変わりそうやけどなあ。

 ああ、しかしこんな能力あったら絶対働けへんよなあ。金を出すのが労働?いやいや。ミダス王やあるまいに。耳がロバになってまうわ。ミダス王すげーな、よく考えると世界的な寓話二つの主人公やで?ものすごく人口に膾炙しとるで?これ日本ではアンデルセンとかグリムと同列な扱いやから気付けんけど、ギリシャのお話やもんな。

「ちょっとすんまへん、これは、もしかして金どすか?」

「ああ、はい。」

「錬金術、ということどすか……。」

「素晴らしいですねえ。」

 りくとあおいさんのことを忘れてた。興味深そうな顔で真剣にこっちを見ている。そらそうやな賢者の石も無しに金を錬成なんて手品にしか見えんわ。

「この金はどうされますかな。」

「ああ、失礼、巾着の小さめのん、いくつもあるかな?」

「はい!持ってきましょうか?」

「ああ、頼む。」

『主様、金を分けるつもりですかな。』

『うん。よう考えたら、いや、考えんでも皆に世話になっとるしな。いざという時に役に立ちそうやん。』

『お人好しですが、主様の好きにされるといいですな。』

『うん。』『金』

 気合を入れて食卓に出す。大きめの土鍋をひっくり返したくらいの山ができた。これ、何キロやろ?

 うーん、鉱物生成できるならもしかして、ダイヤモンドも出来る?

『出来ますな。』

『金剛石、ダイヤ、炭素?立方結晶?正八面体?C?トランプのダイヤで菱?なんかちゃう。』

『炭素高温高圧ですか?』

『いや長すぎてあかんような気がする。』

 うだうだ話しているうちにれいかとすてが巾着を幾つか持ってくる。

 適当に二百グラムかそこらで分けて袋に入れる。れいか、すて、あおい、りくの分。まだ2/3は残っているので半分づつくらいに分けるが巾着に入れると重みでヤバそうなので更に幾つかに分ける。

「かねかつら様と一緒に居るとほんまに飽きひんわぁ。」

「本当にそうですね。ちょっと考えられない扱いですね。」

 適当に手を払っているといつの間にか出した扇で口元を隠しながらりくとあおいさんがささやきあっている。ああ、粉な。もったいないわな普通。

『これ、引寄アポートちゃうやんなあ、この場で合成してんねんやんなあ。』

『はいな。多分窒素とかもとに強い力と弱い力で原子を組み立てていますな。核融合どころではない効率ですな。』

『じゃあ、空気薄なってるの?』

『妙に風が吹き込んでいるでしょうに、気付かないのも鈍いですな。』

 なるほど。一体どのくらいの空気を使ったのか、計算すりゃあ出るんやろうが、化学は少し苦手やから、まけといたろ。立ち上がって四人に一袋づつ渡す。

 あおいさんはにこにこしているが、他は皆微妙な顔をしている。りくは考え込むような感じで巾着を見つめている。れいかはキョトンとした顔で巾着と俺を交互にキョロキョロ見比べている。すては訴えるように俺を見つめている。

「えーと、これは多分二四金ですが明確ではありません。現状金の価値もあまりわかりませんが、それなりだと思います。信頼のおける貴金属商店で調べて貰う必要があります。で皆さんに配ったのは、いつも面倒を見てくれているすてとれいかとあおいさんへのお礼と、俺に関わったことによる問題が生じた際の安全マージンだと思って欲しい。なので黙って受け取って下さい。」

「これは一個一個の粒が起きいので、砂金というよりは、ナゲットどすな。これが純金やとしたら、どえらいもんどすわぁ。ほんまにもろうてもよろしおすか?」

「ああ、勿論です。換金できればいいんですが。」

「大きな町なら両替屋は必ずおますから、そこで替えれば宜しおすぇ。」

「そうですね。皆さんに配ったのは半ばお守りです。いざという時のために持っていて下さい。それから、俺が金を錬成できるのは内緒です。自分に非常に不利益になる場合を除いて、必ず秘密にしておいて下さい。濫りに自分から話さないようにして下さい。いいでしょうか。」

「はい!でもこんなに持つのは不安なので、お返しします!」

「私もです。どうしたらいいのかわかりません。」

「私はもらっておきますわ。これだけあれば色々出来ますからなぁ。」

「二人共、もらっておくのよ。使わなくてもいいし、使ってもいいし。小分けにしておくの。ほら、お守り袋とか匂い袋とか財布とかそういうところに少しづつ入れて、残りを巾着にしまって、大事に隠してとっておくのよ。これだけあれば、いざとなれば一年近く過ごすことも出来るし、一人で大病や大怪我をしても助かるわ。そういう価値の有るものなのよ。かねかつら様に感謝して、もらっておきなさい。」

 あおいさんが上手に説得してくれたので、皆得心した顔で受け取ってくれた。助かるわ。

「じゃあ一度れいえもん殿のところに参りましょう。」

 またぞろぞろと屋敷に向かう。今日もええ天気やね。





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