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48:伏見課長1

 振り返ると、すてとれいかがこちらに歩いてくる。ちょっと怪訝そうな顔やな。

「あ、お嬢さん、こんにちわ。」

 無言で歩みを止める二人。警戒してるわ。そらそうやな、でもそんなら何で俺は無警戒に近かったんやろ。やっぱ垂れ流しのせい?

「いやあまだまだ暑いね。」

 無邪気そうな顔をして目を細める課長は、一体幾つやろう。パッと見三十路?

 二人は無言で俺の影に隠れるように近付き、立ち止まる。伏見はすっと前に立ち、飴ちゃんを魔法のように取り出す。うっわーべたやな!

「食べますか?」

 セロファンや無いな、印刷されたパラフィン紙みたいなもんでひねられた飴ちゃんを絶妙なタイミングで俺とれいかとすてに手渡す。思わず受け取ってしまう。あれ?いつの間に?

 自分も開いて食べる。れいかとすてもつられて食べる。ああ、まあ食べるわな。もう相手の術中にハマっとるで。ま、ええか。俺も食べる。おお、黄金糖の味。

「最近お気に入りなんですよ、ほっとする味ですよね。どう?」

「あ、はい!おいしいです!」

「……はい。」

 れいかは満面の笑み。すては少し納得いってない風。

「今日はお父さんにお話があってきたんですが、連れて行ってもらっていいかな。」

「はい!かねかつら様もお話があるそうなので、ちょうどいいです!」

 まあ、れいかはこうなるよねー。すては俺を見たりれいかを見たり課長を見たり、忙しそうやね。

「じゃあ、早速参りましょう。それにしてもいい村ですね、米ももう収穫時期ですね、よく実って穂が重たげですね。ああ、お宅はあっちですかね。」

 喋りながら上手にリードして歩いて行く。伏見、れいか、俺、すての順番になっている。すげー、イケメン力か。いや、これがコミュ力ってやつか。

「このお寺も立派ですが道がきれいですね、ゴミひとつ落ちてない。きれい好きなのは、得難い性質ですよね、美しい村作りには欠かせない。」

 いやまてよ、何度か課長の部下か関連の下っ端が来てるんよな、そんならこの娘達がもっと餓鬼っぽいというかゴブリン状態だったのも知っているはずやんな。何で驚かへんねん。えー、なんかやっぱり恐いなあ。

「暑いとは言えこのあたりまで来ると、秋の風が気持ちいいですね。麓の村とは大違いですね。フィトンチットが良いなあ。近くに森があるからでしょうね。自然が本当に美しいなあ。」

 ようもまあべらべらしゃべるなあ。意味が有るような無いような、持ち上げられて悪い気分はしない、よく出来た話術。ゲームやったらどんなスキルになるんやろうか。詐術とか?スキルレベルMAXやろなあ。

 なおも話し続ける課長に続いて歩いているとすぐに村長宅に着く。

「では少しお待ち下さい!」

 れいかとすてが小走りに母屋に入っていく。あれ、そういえば課長、『お父さん』て言うてはったよな。何で知ってたん?さっきも思たけど、なんでや?魔法?

『いえ、魔法でも直感でも無いように感じますな。』

 そんならなんでやろ。戸籍か人別台帳か住民票か知らんけどそんなもんがあるんやろか。それで年齢を想像して……、にしては、断定的すぎるよなあ。

「こちらが村長さんのおうちですか。思ったより小さいかなあ。」

「そうですかね。」

「まあ、集会場が別にあるんでしょう。裏手の方かな。ところで金桂さんが使える魔法はどんなものですか。」

「はあ、まあ色々使えますが。」

「でしょうね、いろいろと言わず、何でも、というくらいの力を感じますよ。私など、名前の通り見ることは得意ですし、気配を消すのも得意ですが、放出系は苦手なんですよね。」

 ハン○ー○ンターか!そうか、そういうもんだよなあ、狐の口ぶりからすると。やっぱ名前か。でもそんなら馬鹿みたいに長い名前にしたらええんちゃうのん?寿限無や無いけど。

『どうやら、制約はあるみたいですな。普通は一文字。強い家系で二文字。後、当然カイは真名ではありませんな。主様も偽名というか通称を考えておかねばなりませんな。』

「私は放出系は水が得意ですね。」

「ああやっぱり。でも色々お出来になるんですね。すごいなあ。スカウトしたいですよ。是非国家公務員になられませんか?どこも本当に人手不足で、金桂様のような人なら、真に引く手数多ですですよ。」

「あははありがとうございます、考えておきますね。」

「ほら。最近の地力問題で何処もかしこも大変なんでよね。その点自分など楽させてもらってる方で申し訳ないんですがね。こちらは、ほら寺の倉、あれ、ご存知ですか?」

「ええ、まあ。」

「あの恐ろしい結界に近寄るだけでもほんの一握りのものしか出来ませんから、あの寺付近で平然としておられるのを見て、ビビっと来たんですよ。ねえ、金桂様はどこから来られたんですか?ちょっと、いえ全く普通の人ではないですからね。本当に在来の神なんてとっくに超えておられます。いきなり都なんかに現れたりしたら多分とてもめんどくさいことになりますよ。」

「あ、そうですか。」

「はい、もうそうですね、ちょっと先ほどの名刺を貸してもらえますか。これに個人的な連絡先を書いておきますので、いつでもご連絡ください。基本回線はオープンですが優先度をあげておきます。いやあ、今日は本当に運が良かった、陰陽庁の言うことを聞いてよかったですよ、方違えまでしましたからね。土御門さんにはお礼を言っとかないと。あ、でも紹介はできないな、引っ張られたら辛いですからね。こちらに優先権が有ることだけは知らしめておかないとね。」

 にーっと目を細める。うっひー、超恐い。なんか色々大変な情報を話してくれているなあ、よく考えないと。ていうか自分が異世界人やて話したら、やっぱりあかんねやろなあ。

『何を今更当然のことを。あおいさんだから良かったものの、個人情報の秘匿は、今生では常識でございますからな、ゆめゆめお間違いなきよう。』

 わかりました狐様。



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