47:ワイハ、良いところですよね
「では一度村長宅に伺って、相談してこようと思う。」
りくは必ず連れて行って、処遇の相談。あおいさんととつかさんは一旦引き上げる話。れいかとすても来るということで、結局全員で向かうことになった。れいかとすてが着物とか用意が有るということで、庫裏に戻っている間に、烏と猫もすっといなくなる。と言っても烏は屋根だろう。りくが眠たそうなので抱っこしてやるとすぐに寝付く。やっぱり耳は尖ってはいるが、でも耳たぶもあり、なんか妙な感じやな。ハーフ?ハーフエルフ?ちゅうか、混血児とか?いやでも京都人か。んなら混血ではないわな。ああ、りくの魔法も聞いてみやんと。でも説明とかは難しいか。
「ふもとから、見知らぬ人が村に近付いています。」
くろめから緊急電。いや耳で聞こえたからちゃうか。あれ、烏が普通に鳴いているように聞こえるって、変な感じやな。こうカラスの鳴き声プラス会話文的な聞こえ方は出来ひんかな。
「出来なくはないですな。」
あ、狐またエスパーしとる、ちょっと驚くからやめちくれ。
『こんな感じでよろしいですか?』
『まあ、ええか。話は早いしな。』
くろめが旋回するように上空を飛んでいる。
『くろめ、どんな人?』
『えー、洋服を着た、猪豚のような人です。』
豚ですか!オークですか!いやそれはドラ○エ以降やから。まあその印象が強いけど。いや、猪は乙事主とか一本何とかとか猪笹王とか、おったと思うけど、豚は、ああ沖縄らへんにはおるんか。
『暑そうです。』
『そうか。』
『鞄を持っています。目にガラスを付けています。』
眼鏡!いやモノクル?インテリなんか?いやそれは偏見やな。
『どのくらいで着きそう?』
『もうすぐです。』
あ、そう。
「とつかさん、あおいさん、猪か豚のような、洋服を着た見知らぬ男がもうすぐこの村に入ってくるみたいですが、どうします?」
「わしは、少し身を隠す。」
「そうですね、私も物陰から様子をうかがいます。」
「わかりました。」
言うが早いか、さっさと本堂の影に二人は入ってしまった。
「俺はどうしようか?」
「どうぞ、ご自由になさると良いですな。主様を止められるものは、この世界にはほぼほぼおりませぬ。」
ほぼほぼいただきました。
「じゃ、あいさつしてみるか。」
『くろめ、凶暴そうではないんだよな?。』
『はい。文化人だと思われます。』
これは、前の世界の文化人とは意味が違うな。
『魔力とかありそう?』
『いえ、ほとんど感じられません。今ならすての方が上です。れいかよりはあります。』
これはまた。
『警察じゃないよな?』
『けいさつ?はよくわかりません。商人では無さそうです。お役人かもしれません。』
『ありがとう。』
「カーッ(どういたしまして!)」
うわ、いや、まあそうは思ったけどいきなりやな。驚くでしかし。
ああでもこの子はどうしようか。まあいいか。れいかもすてもまだ掛かりそうやし。いきなり取られることもないやろ。
りくを抱っこしたまま狐を連れて寺の門をくぐる。
とつかさんもあおいさんも、やっぱり普通は人前に出ない存在なんやな。なんというか、それは不幸なことなんか、どうなんやろな。いやあおいさんは町中で暮らしてたこともあるみたいやし長生き過ぎるしちょっと別格かいな。やっぱり、とつかさんが気になるなあ。
寺の門前は村長宅への途中ではないが、やや開けた景色で、ふもとからの道を見ることが出来る。そこに着流し姿でぼーっと立っていると、やがて黒っぽい服を着た男が見えてくる。スーツやん!ネクタイかなんかしてるやん、ボタンは多いけど!三つボタン、いや四ツボタンか。茶色っぽい色で、そら今の時期ここまで着込んだらまだちょっと暑いやろな。んで、眼鏡やん。メタルフレームやん。ていうか何これ、こうシュッとしてるやん。えぇー、たしかに豚っぽい顔やけど、あからさまにイケメンやんナニコレ。二律背反やん。おかしいやん。
男はこちらに気付き、手を上げた後、こちらに向かって歩いてくる。革靴やし。ドクターバッグみたいなダレスバッグみたいなのを手に持ってる。重たそうやなあ。
「こんにちわー。はじめまして、ですよね。」
うわっ濃厚なリア充臭。出来る営業マンのかほり。これは、飲まれんようにせんとやばいタイプや。
「はい。そうですね。」
「私こういうものです。」
流れるような動作で名刺を差し出す。名刺やん!なんか、前の世界とほんま違和感少ないねんけど!これはこれでちょっと嬉しいわ。文明の風を感じるわ。
「はい。申し訳ありませんが私名刺を持ち合わせておりません。」
りくを抱いている都合上、両手では受け取れない。仕方なくと言った風で、片手で丁寧に受け取る。
『 文部省 初等中等教育局 特殊教育課 特殊教育係 係長
新教育審議会 地方教育分科会 特殊教育課 課長 伏見 カイ 』
……。これって無茶苦茶偉いさんのような……。
「わたくし、金桂と申します。」
あんまり余計なことは言われへん。
「少しばかりハワイイの血が流れておりまして。カイというのはハワイイ語で海を表す音でもあるそうです。」
なんかやたらと人懐っこい、この男、チャームの魔法でも持ってんちゃうん?豚っぽいけどハンサムとかおかしいやん。
『この男は実は結構大きな魔力を持っていますな。あまり漏らしていないようですが。』
「おや、狐ですか。いや、妖狐ですね。私のことはカイとお呼びください。」
「はいな。よろしく。」
おいおい今の気づかれたん?なんかやばくね?
『内容までは分からぬでしょうが、大したものですな。もしかしたら、ハワイの王族とか、こちらの華族とか、あるいは神の系譜かもしれませぬな。』
うっひょー、すげえな。
「私は旅のもので、こちらで食客として、過ごさせていただいております。」
「ああ、そうですか。しかし凄いマナですね。ああ、マナというのはハワイイ語で、魔力みたいなものです。」
「お恥ずかしい。制御に慣れませぬ。」
「いえいえご謙遜を。これだけの魔力、そうそう出会うことがありません。ぜひお見知り置きください。」
「いえいえそんな、伏見様こそ、結構な魔力を持たれておりますよね。」
「いやいや私など、金桂様に比べるまでもありませんよ。」
何この営業トーク的な馴れ合い。久しぶりすぎていや三日くらいやけど、懐かしくて涙がちょちょぎれるわ。
「いえ、本日はね、未就学児童の件でこちらのコミューンをお伺いに来たんですがね。」
コミューン!やっぱりここ、自然回帰とかヒッピー的な、いやヒッピーではない、日本的なナチュラリスト的な新興宗教的な生活共同体的ななにかやったん?
「そうですか。」
「ええ、地方教育局の連中ではけんもほろろで会ってすらくれないという事で、私が出張ってまいりました。いや、こちらの人選と言うか、人格的なところに問題が有ったからなんで、その点は本当に申し訳ないのですけどね。」
「ああ、はい。」
まあ、要するにれいかとかすてとかの話やな。そらそうやな、学校に行く素振りが全くないし、寺子屋言うてたけどこれって、学校の長期休暇に合わせて講師を招いているということやんなあ。
「今から村長さんにお会いしようと思っているんですが、まあ、お察しの通りアポイントは取れてないんですよね。よかったら金桂様も同席いただけませんか?あなたなら、教育の大事さがお分かりになるでしょう。是非お願いしたいです。」
えぇぇぇ。そうかもしれんけど……。俺も村長には話があるんやけど……。俺押しに弱いねん……。




