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29:杖と捨の魔法

 これな。この杖口から何か出してる木造の人が持ってるよな。ぼんさんが好きなんよな。しかし妙に攻撃力高そうやんな。で、何でくっついてんのこれ。動くたんびになんか引っかかって離れへん。

 それにしても、ごついぞこれ。杖の一部も金属っぽいで。ていうか、金?その部分をニギニギしていると、グッと脳内になんか来る。

『あるじ!』

 えーと、これどうしようかな、あのきれ(布)、あのままではあかんような。

『あるじさま!!』

 どないしたかて、名主のお父さんには話さなならんしな。

『あ……』

 もうわかったよ、聞こえてるよ。

『!あるじさま!良かった!』

 お前もテンション高い系やな。キャラかぶるやん。

『よくわかりません!でも!あなたがあるじさまです!それはすぐわかりました!』

 あー、わかった。でこれずーっとこんな感じなん?

『?よくわかりません!』

 うん。ちょっと考えるから黙っててね。

『はい!』

「とりあえず外に出ましょうか。この杖は持って出ないとしょうがないかんじです。」

「「「『はい(。!)』」」」

 杖はきれでくるみ直して左手に持った。戸を出た瞬間、超体が軽くなる。おお、おもろいなこれ。もう一度入るとずんと重くなる。出るとまた瞬間的に軽くなる。そのたびに杖がなんか、『おお!』とか『うっ』とか言ってる。

「遊ぶのはもうよろしいですかな。」

 狐が早々に飛び降りて後ろ足で耳のあたりを掻いている。あ、元に戻ってるわ。見逃したやん。

 縁から飛び降りると、二人を降ろしてやった。ふたりとも少し顔色が悪い。元々妙に白かったから、青に近いくらい色がない。

「大丈夫ですか?」

「はい!私は大丈夫です!」

 れいかは気丈やな。

「はい、前に比べたら、本当に楽です。大丈夫です。これもかねかつら様のご加護のお陰です。」

 いやいや!加護ってあんた!

 とりあえず杖は沈黙している。縁までは何か聞こえてたから、完全に出てしまうと話せなくなるんか。なるほど。もう一回縁に上がって戸を閉めて鍵をかけた。またガコンとかドスンとか聞こえて、結界が再度張られたのがわかった。

『あるじさま!おはなしがしたいです!』

 わかった。でも今は時間がないから、またここまで来てやるから、その時にな。」

『……。わかりました……。』

 そんな残念そうな声出さんでも、ちゃんと今夜来てやるから。

『!ありがとうございますあるじさま!』

 声からすると女っぽいな。飛び降りる。

『はい!にょ』

 にょって!女性にょしょうかな!ま、後でな!

 あかん付き合ってると妙にテンション上がるわ、ちょっと落ち着こ。

 すては胸元に入れたであろうお守り袋みたいなのを服の上からしっかり握っている。ちょっと見たいな。

「すてさん、その宝物、見せてもらってもいいかい?」

「はい。もちろんです。」

 胸元から出してきて渡してくれる。ええ匂い、いや、風呂にもろくに入ってないのに臭くないと、そういうことやな。

 狐と目が合う。この狐、元に戻っとったな。もうエスパーや無いんやな。

「……元に戻っておりますな。」

 やっぱりエスパーちゃうん!……。

「あの比丘尼の残滓というか、記憶とか、意思とか、そういうものはしっかり残っておりますな。」

 そうか、そう言うてたしな。

 すての袋を開き、ビー玉を取り出す。あれ?ビー玉やない感じやな。透明やけど、なんか金線が入ってる。あ、針水晶やったっけ。そうそうルチルとかいう。お母ちゃんが微妙な宝石マニアやったから、見たこと有るわ。それにしても安モンの石ばっかりその辺の謎のパワーストン屋でこうとったな。タイガーアイとか、ピンクオパールとか。御利益あったんやろか?

「これ……もしかしてすての魔法に使えるんちゃう?」

「そうですな。使えそうですな。」

「じゃあ、こうしてみようか。」

 れいかには引き続き火の魔法の練習を指示して、すてに魔法のやり方を言う。といっても、このパターンは初めてやからどうすればいいのかはわからん。わからんので、とりあえず魔力を石に込める練習。まずは俺がやってみた。

 おお。光るやん。でどないしょ。左手に持ったまま、右手で、指で書いてみよう。

『水』

 チョロチョロと水が出る。石との相性かな。

『火』

 フッと火が出るがすぐ消える。

 ルチルって、金運が良くなるとかお母ちゃんは言うとったな。

『金』

 パラパラと何か出て来る。あ、これあかん。砂金や。ちょっとまずいわ。とりあえず集めて袋もないので袂に入れる。重いな。

 じゃあ何や……そうやな、これはすての石や。やからこそ、すてが持ってたほうがええやろ。んで、パターンとしてはやっぱり名前か。

 ……よう考えたら、俺の名前って、全部入ってね?せやから出るんか?……高次元意識体の人もなんかそういうことを言っとったような。 

 だいたいすても漢字全く知らんしな。ひらがなとカタカナしか書けないというか、習うことがないって、どうなん?そういえば算術はどうなんやろ。後で聞こか。

 とりあえず名前としてや。『捨』って、どう使うんや?文字通りやろけど、捨てる?とりあえずこの薪とか柴つこてみよか。ええ感じに魔力も抜けてるしな。

「すては、自分の真名は漢字で書けるかな?」

「はい、それしか漢字は書けませんが。」

「じゃあ、右手に針水晶石を持って、魔力を込めてみよか。」

「はい。」

 れいかと同じく1分ほどで石が光りだす。

「じゃあ、石を握って人差し指を伸ばして、中空に真名を書く。その後、左手でこの柴を触ってみて。」

「はい。」

 集中した顔で真名を書いている。指の軌跡がぼうっと光っている。

 地面の芝に触れると、ポワンと消える。消えた。ポワンやったな。スッという感じではなかったな。

「消えました。」

「石は光ってる?」

「いえ、光っていません。」

「じゃあ今度は触らずに、この眼の前の小石を消そうと思って、やってみようか。」

 集中し、小石の上に真名を書く。書き終えると同時にポワンと消えた。すげえな。飛ばしてるのか?物理的に分解してるのか?

「分解、やな。」

「そうですな、強い力の行使で説明できる現象ですな。」

 すては、驚いたような困ったようなにやけているような複雑な表情をしている。

「これ、結構すごくね?ものすごく便利じゃね?」

「はいな。色々検証は必要でしょうが、火とも水とも負けない、ある意味別格のような感じですな。」

「良かったな、これはすごいぞ。」

「はい!ありがとうございます!」

 ゴミ問題も核廃棄物も一挙に解消やん、てそんなことさせられへんわ。これ、バレたらやばいな。

 ……生き物は可能なんやろか?

「夕餉が出来たみたいです。」

 門から入ってくる女衆が見える。またたくさんありそうやな。

「じゃあご飯ですね。まず手を洗いましょう。」

 実験だ。何も無しでできるかどうか。

 何も持たず軽く集中してれいかの差し出した手の上に『水』と書く。お、水道の蛇口をひねったかのように水が出てくる。狐の言った通りやな。狐と目が合う。ドヤ顔やな。せや、名前つけあかんねんな。それにしても、……杖なあ。これ、こうなったらほっといてもヤバそうやなあ。前にガッコにおったんよなあ、勝手によってきて、よくわからんまま放置してたらやばいことになりかけた後輩がなあ。あん時はちゃうやつに興味が移って、事なきを得たんやったけ。でも今回はそんな上手いこといかんやろうし。話は聞かなしゃあないな。狐と話さなあかんことも溜まってるし、増える一方やし、名主の父ちゃんとも話さなあかんし、ああ、明日は鳥姉ちゃんとも話さななあ。

 ていうか、世界の滅亡?地球じゃなくて世界?宇宙?そんなもん、一介のオーガwの俺にどうせえと。




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