28:木倉の中で
何か携帯小説みたいな擬音を立てて開いた扉の中は暗いのだが、よく考えればそんなに広いわけでもない。うちの建売の一階部分くらいしか無い。で扉が開いているのだから、それなりに光は入り込んでいる。
棚が壁沿いに並んでいて、中程に幾つか島のように箱というか台と言うか低い箪笥のようなものが有る。
締め切ってあったのに、暑くない。チリひとつ無い。更に不思議なのが、匂いが無い。もっとこう、こういうところって黴臭かったり木の匂いが強かったり紙や匂い袋のような変な臭がしたり、色々有るやろ?これだけでも、ここが変な場所であるとわかるわ。だいたい何もしてないのに微妙に石が光ってるやん。飛○石か!
向かって右奥の方に、なにかある。南向きの入り口やったから、鬼門の方か。うーん、そこはかとなくいやーんな気持ち。それに、あれ、狐が光ってる。
「あなた様、ちょっと良くないかもしれません。」
「えっと、どうなん?出る?すぐ出る?」
「もう、遅そうですな。」
「え!?」
狐が光る。強い。なんかあれば光ったらええねん的な投げやりさを感じつつ。狐が大きくなっている。尻尾が増えてる。まだ光ってる。
「大丈夫、か?」
幸い禍々しさは感じない。大体変な感じの倉内やったが、めっちゃニュートラルで、清らかでも無く嫌な感じもしないという、不思議な感じやったからな。なんやろ。そやな、海の水に浸かっているような。ああ、スキューバした時に近いな息もしにくい。
「はい、あなた様以外のものが入り込んできて、蹂躙されましたわ。ちょっと混ざってしまいましたわ。」
黒い部分がほぼなくなって、かなり白い。尻尾は3つ。これは、最終的には九尾を経て天狐とかそういうフラグ?
「いえ、多分ここからでたら元に戻りますわ。」
うわっ、エスパーになっとるやん。
「そうですわね。あなた様のことはわかりますわ。二人はまだ無理ですわね……いえ、こちらのすてさんなら少しわかりますわ。……そうそう、うふふ。」
うわ、なんか他人の心を読んで会話しているんか、そんなシーンて周りで見てるとちょっと引くわ。
「あら、そうおっしゃらず。すてさん、こちらにいらっしゃいな。探しものが有りますわよ。」
「!」
棚に並ぶ行李の陰にすてを導き、尻尾で器用に指し示す。すてがいきなりガバッと寝転んで隙間に手を突っ込んだ。すての手が光っている。ビー玉?
「よかったですわね。」
「それ、すての宝物!どうしたの、なくしてたの?」
「はい、やっと、見つかりました……。良かった……。」
「良かった!良かったねすて!」
二人は抱き合うようにして泣いている。
何かあかんておっちゃんこんなのに弱いって。もうほんま不惑になってからすぐ目から汗が出るようになってもうてん!
「ああ、よかったね。」
無理やり狐に目を向ける。体は少し大きくなっただけで、でもわりかしボリューム感が有るな。フレンチブルが普通のブルに
「あなた様そこは豆柴が柴犬とか柴犬が秋田犬とかミニチュアダッいえ、足は短くないですからね、猫が虎」
「いやそれはないから!」
そこまでの変化ではないやん、でもなんか色っぽいな、混じったのはだれ?
「尼さん、のようなそうでもないような。でも魔力はすごくて、あなた様ほどではないですけれど、ちょっと頭のおかしいレベルですわね。残留思念でこんなことになるんですから。」
「ねえ、すて、この玉こんなに光ってたっけ?中の模様は同じに見えるけど。」
「いえ、光ってはなかったですが、はい、この玉は私の大事なものです。今日はそれほどでもありませんが、前に掃除をしたときに、すごく気分が悪くなって。あまり良く覚えていないんですが、多分気を失ったんです。そのときに落としたんだと思います。次の日も殆ど寝ていましたし、気がついたのはもっと後のことなので、ここで失っていたことに気が付きませんでした。」
「本当に良かったですね。」
「はい。」
すては大事そうに真名を書いた端布が入っていた小さな巾着をだすと、端布で包んで中にしまった。
でも、こんなに丁寧に入っていたなら、そう簡単には落ちんのちゃうか?
「そうですわね、後ほどここにいた人のお話をいたしましょう。」
そうやね。そうしましょう。もう一つ気になるものが有るねん。
「あれですわね。」
狐が目線を向ける。近寄ろうとはしない。
箪笥のような仏壇のようなものが端の方に置いてある。そこからなんかすごく出てる。でもそのすぐ横に布で巻いた何か槍か棒のようなものがあって、ソッチのほうがすごいわ、見てるとクラクラしてくるわ。
と、はらりと布が解けた。誰も触ってないし風もないのに、パサンと落ちる。それは、何?鹿の角がついた杖?待てよなんか知ってる、鹿杖っていったっけ。これ、平安か鎌倉か知らんけどごっつ昔の、呪具かなんかちゃうかったっけ?
「呪具であることには間違いないですわね。結構強いですわね。私はそちらの方の影響で変化しましたけど、これは質が違うので私には入ってこれないですわ。これはあなた様に近いですわ。」
「うん、これは放っておこう。うん。そのほうがいいよ。じゃあでようか。宝物も見つかったことだし、ね?」
ガタン、と音を立てて杖が倒れた。杖の頭がこちらを向いている。
いやいやそんな怪しいもん俺は持たないよ?別にいらないと思うよ?
「あなた様を気に入っているみたいですわねえ。私にも縁起はわからないですが、ご縁が有ったのでしょうかしらねえ。」
いや頼むわちょっと怖いわ引くわ。
ふいに目眩がする。立ち眩み?貧血か?よろめいて転けかけ、手をつくと、杖だ。きゃー。待って。ちょっと待って。もう、強引な……いやいや。どんだけ俺んとこ来たいねん!これはあれか、適当な呪文で開いたのも、こいつのせいか!
あれ?手に持つとなんか入ってきた。すーっと。ヒンヤリする。
ノド飴か!やっぱり怖いやん!




