25:魔法の練習1
10メートル以上離れてからふと気づいて質問する。
「ここから火までの距離はどのくらいかな。」
「えーと、5間くらい、でしょうか。」
「れいかさんは今身長はどのくらいかな。」
「5尺はないですね。でもよくわかりません、まだ測っていないので…すみません。」
「いやいやいんです。」
薪を取りに行き、あらためて魔法のやり方をゆっくり説明する。何本かの薪を組んで三角に立てる。その真中に細い木を刺して、一番上が1メートルそこそこになるようにする。
やっぱ尺貫法だよなそうだよな。じゃあ俺はいわゆる5尺8寸ていう感じか。……大男系か!なんかびっくりやな。
「じゃあ、この辺を狙って。薪が熱くなって燃えてくる想像をしながら。魔法の筆に念じてみて。」
「はい。」
すごく集中しているなあ。脇くすぐったらおもろそうやな。せえへんけどな。
狐の視線を感じるが無視無視。あれ絶対エスパーやん。
1分ほど見ていると、徐々に石が光ってきているように見える。
「はい、『火』と書いてみて。」
軽く頷くとれいかが筆を動かす。
ぱちぱちと音がして、細い煙が上がった。やったやん!成功やん!
「った!火が!」
小さいけれど、確かに火が起きた。
ああ。良かったね、ほんま。
感動で言葉が出ないらしいれいかを頷きながら腕を組んで眺める。やっぱり狐と目が合う。
ああ、向こうの火はいつまでついてるんや。どうしたらいいんや。水かけてもあかんやろし。無ではないけど自動的に分子集めて自動的に分解して自動的に燃焼再化合してるだけやから、ほとんどエネルギーを使こうとらん。じっさい何で集まってるのかよくわからん。電磁場的なものか?分解再化合も?不自然だよなあ、カロリーは明らかに増えとんのにその、電弱力と言うかそういう力で変化してる分でそれが賄えてんのか?どうせ理解はでけへんやろけど、まあ、これが魔法なんよなあ。としておこう。
「これってエントロピー的にはどうなん?」
狐に言ってみる。
「私は言ってみればオブザーバー兼アドバイザーですわな。細かい現象に対する知識は実際にはかねかつら様と同等のレベルしか無いと考えてもらったほうが良いでしょう。」
あ、こいつ逃げやがった!なんか釈然とせーへん、なんかそう言いながら偉そうやし、実際えらい魔法使いよったし。
「なあ、あっちの火はいつ消えるかわからん?」
「あなた様の『魔力量』次第ですわなあ。」
あ、また逃げやがったくそん。
風がほとんど無いし、10メートル四方は何もないからとりあえずは大丈夫やろうけど、どうしよ。
「かねかつら様、名主様をお連れしました。」
すてが声をかける。そうそう、報告会やな。大丈夫やろな、怒られへんよな。
「か、かねかつら様!れれれいかは!あ!れいか!……。」
「お父さん!わたし、変わりました!かねかつら様のお陰です!神様!魔法も使えるようになったんです!アーメン!……はっ」
「っれいか!」
……感動のご対面かな?てかれいかさん今何言うた?アーメンとかなんとか言わへんかった?それってやっぱりアレなん?隠れ的なアレ?もしかしてこれはこれでめんどくさい状況なん?
「れいかさんを魔法で解呪しました。よかったんですよね?」
「……はい!それはもう!ありがたいことです。厄介が増えることではありますが、本当にありがたいことです。」
「そうですか。それは良かった。ホッとしました。」
厄介っていうたよね?それは卑近的な意味?公的なほうで?まあその追求もエイメンもちょっと後にしとこう、やることが多すぎるわ今は。
「本堂でお話いたしましょうか。」
「はい、そうですね。お茶道具を持ってまいりました。風炉は無いですが簡単な席を設けさせてもらってもよろしいでしょうか。」
茶道か……。これが全く無知なんだよなあ……。
「わかりました。ただ私不調法者で作法など知らぬ野蛮なものです故、その辺り目こぼしいただけたらと思います。」
「いえいえそんな。私や妻とてそんなしっかりた作法を知っているわけではございません。田舎茶席にてこちらこそお恥ずかしい限りですが、お持て成しさせていただきとうございます。」
「はい、こちらこそ宜しくお願い致します。」
男は度胸やね!まあ茶室でもないし武家茶道のイメージかな。ああ、も少し教養積んどいたら良かったか。いや、ゴブリン村で恥をかけてまだましだったか。……ゴブリンていうのも気が引けてきたなあ。だって、変身したら普通に人間ぽくなるんやもんなあ。
あの眷属の連中もそうなんやろか。どうした方がいいやろか。
何れにせよお父さんと相談やね。
数人の女衆がやってくるのが見える。そういえばこの村の人口はどんなもんやろ。耕作可能面積とか収穫量とか税とか聞いといたほうがええんやろな。おいおいでもええんかな。いやチェックリスト全然進まんでどないしょかな。




