19:料理をするのは人間だけといいますね。魔物は普通しないようですが、悪魔とか妖怪にはいそうですね。
さて楽しい給食の時間やね。
女衆が料理を運んでくる。なんか何人も居る?
「これはあかんやろ。」
思わず呟いてしまった。すでに眼前には3つの膳が並んでいる。その上には幾つもの鉢と大盛の銀シャリ。なんか川魚を焼いたと思しき切り身。椎茸にさやいんげんを添えて。豆腐には赤味噌が乗って串に挿しているー田楽。汁物はすまし汁。山芋を刻んだものに梅を和えている。えんどう豆を煮いたん。ふろふき大根に白味噌を添えて。干し柿を巻いたようなの。青菜の漬物。栗。田螺を煮たもの。さつまいも。あれ、さつまいもが有る?南京。冬瓜?カニ汁も出てきた。
すげーよ、こんなに食えねーよ!どうすんだよ申し訳無さすぎるよ!
しかもなんかまだ来るっぽい。銀シャリなんて超てんこ盛りやん!
「れいか殿、すまぬ。」
振り向いてゴブ嬢を呼ぶ。
「はい、たんとお召し上がりください。」
「いや。いやいやこんなに食べられない。」
「余ったものは狐様に。それでも余りましたら私とすてが頂きます。」
「……それにしても多すぎると思うのだが……」
「今までは氏神様や竜神様の眷属の方ばかりで、かねかつら様にご馳走叶いませんでしたから、女衆が腕によりをかけたのです。どうぞお召し上がりください。」
うーむ、あれか、神様認定されたからか。寺住みの神様ってのも日本的でおもろいけど、いや神様ちゃうって、否定したよな俺。それとも、男だからか?そんなら、あの母屋でも多少は差をつけるよな。そこまで儒教的な感じではなかったし、何をはっちゃけてんだ?そんな余裕あるのか?
「ささ、どうぞ。本日は目出度いので、私達もご相伴に預からせていただきますので、ご遠慮なさらずお召し上がりください。」
れいか嬢がまくし立てる。狐さんはなんとなくニヤニヤしているように思えた。目を細めて膳を見ている。
まあ、しゃあないか。文字通り据え膳てやつやな。一緒には……食べるはずもないか。
「では、頂きます。」
うまいな。銀シャリ甘え。野菜とかも妙にうまい。出汁文化に至ってるの、こんな普通の村で?魚香ばしくて山椒かかっててほんと美味い。こんな美食が可能なのか?今朝までの飯だって決してまずくはなかったけど、醤油とか高級品だと思っていたのに、塩辛すぎない程度にじゃんじゃん使ってる。
ある程度、1/3も食べないうちに腹が膨れてきたので、白湯をもらって干し柿と栗で締める。甘いわ。柴栗も、近所のおばさんが時々くれたやつより濃いわ。今年もう採れたのかな。
「ご馳走様でした。」
「あら、もうよろしいのですか?」
「白飯は全部いただきましたよ。それでもう腹いっぱいだわ。」
「では狐様どれがいいですか?」
れいか嬢が狐さんにいちいち欲しいものを聞きながら別皿に移していく。まめだね。そもそも食べる必要があるのか?有機人形だとかバイオロイドだとか言っていたが。
「余り食べる必要はなのですが、味覚と臭覚は備わっているので、少し味見をさせていただこうかと。」
そうか。やっぱ謎のエネルギー源が有るんやな。魔法的な何かかいな。
あー、でも腹いっぱい食べすぎてほんま苦しいわ、どうしょうかな。とりあえず嬢たちが食べにくいやろからちょっと席外そか。
よいしょっとばかりに立ち上がる。れいか嬢は狐さんの相手をしているので控えているすてに話しかける。
「すまんが紙とか筆とか墨とかあるかな?」
「はい、本堂の方に御座います。取ってまいりましょうか?」
「いや、歩くわ。」
「では文机も用意いたします。」
すすっとすてが先導する。やっぱりよく躾けされてるわ、立ち居振る舞いもシュッとしてるわ。いや昨日まではそんなことなかったというかまあ小さかったし……いやいや、なんか大きくなって、あれか、進化したんか?知性とか肉体制御的なもんとか……ま、まあその件はまた改めて考えるか。
ゆっくり歩いて本堂に入るとすでに文机が用意してある。机には硯と墨と水差し、その横に白っぽい和紙。あー、さっき紙とは言ったけどやっぱり紙もあるんやな。寺子屋がある以上、有るわな。高級品では有るんやろうけど、木簡や竹簡では手習いしにくいし。
満腹で眠たくなってきたが、気力で目を開き、チェックリストについて思い出しながら書いていく。
いつの間にか狐さんが寄り添うように丸くなっている。
「自分も寝るんか?」
「まあ、それなりですわな。」
わかったようなわからんような返事やな。なんかこう変に人間臭いというか。まさかこいつも変身したりせんやろな。
それより魔法やな。練習と言うかどういったもんかちゃんと聞かんとやっぱり恐いというか危ないしな。最初に間違って火とか書かんでよかったわ、一歩間違ったら大惨事やでほんま。




