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18:きつね色の狐はあまり好きではなかったのですが、飼育実験された狐は本当に可愛いのですな。

 通されたのは本堂向かって右手に庫裏くり?とでもいうべき建屋が有って、くりやとくっついている。厨は土間で、竈が2つ、一つの前は狭い。とうか木縁が椅子のようになっている。東北で見たような気がするが、この構造は合理的か。一抱えほどの水瓶。漬物樽?らしきものは若干匂う。薪は外。てか、これ炭団たどんか。泥団子みたいなのがいくつも積んである。炭団てそんな昔からあったっけ?七輪みたいなものも有る。囲炉裏無いしな。

藁を編んだ丸い筵のようなものが有って、多分座布団扱いか、そこに誘導された。

「では後ほど昼餉をお持ちします。」

 そう言ってゴブ父さんと烏天狗は去っていった。つまり俺とすてとれいかと狐が残った。

「では狐さん。」

「はいな。」

 胡座をかいた膝の上にこちらを向いたまま乗ってくる。どういう声帯か。

 すては厨、れいかは押入れ辺りで何かゴソゴソしている。

「まず何から話してくれますか?」

「世界の成り立ちではどうでしょうな?」

「はい結構です。その前に、神様と狐さんについての多少の知識は得たいが。」

「わかりましたな。あなたが言う神様とは、あなたの経験したプラズマの強い電磁場における高次元の思考体とでも言うべきもので、現世利益的な神様ではないことはご理解いただいていると思います。」

「うーん。えらく人間臭いのは俺に合わせてくれたからかな?」

「理解をさせるのは出来たのですが、その場合、あなたの振る舞いの予測が量子論的に不可能になるという推測が有りました。ですので対話からあなたのペースもしくは次元での思考、そしてあなたなりの理解、納得、それに続く行動を望み、そのために私が生み出されたのですな。私は単純にはそれなりの容量と外部通信が可能なNAS兼多少の自由思考と自律行動が可能なルーチンをもったバイオロイドとお考えくださいな。」

「うわー、なんかやっぱり俺好みのサイバーパンク的な雰囲気やね。スチームパンクに行かないのが俺っぽいね。なんかバイオロイドとか恥ずいわ。」

「そこは有機人形でもサイバーペットでも。内骨格はチタンが使われたりしていますしな。」

「いやもっと恥ずいって。エネルギーはどうなってるの?」

「その辺りはおいおいと説明いたします。魔法の在り方についての説明にかぶりますのでな。」

「わかった。えーと、外観はやっぱり俺の知識による飼いならされた狐から?」

「多少の影響はあるかもしれませんが、どのような姿が良いかは高次の判断で決定されましたな。まずこの世界で違和感がないこと、余計な影響を他種族に与えないこと、親近感を得られないまでも嫌われないこと。勿論あなた様に好まれる外観であることも含まれますな。例えば犬ではないのはこの世界にあなたの世界で言うコボルトに近い容姿の一群が存在する故。猫もそうですな。狐も獣人に近い存在として雪の多い地方に存在しますが、そこは大分離れた異言語の地であり、この国では神もしくは神に準ずる存在として認識されています。はい、お稲荷様、ですな。ほぼそのままの印象です。」

「なるほど。とりあえず狐さんの立ち位置は理解したかな。」

 すてがこちらを覗いている。どこかの家政婦みたいだが、まるわかりやねん。

「何?」

「お話のところ申し訳ありません、手が空かれましたら、お水をいただけないでしょうか。」

 そうやね、大瓶はあったけど確認してなかった。

「とりあえず用意しよう。」

 狐を下ろして厨に行く。自分用に下駄が置いてある。手回しいいっすね。

 瓶を覗くとカラカラで、多分すてが掃除しようとしてしきれなかったという感じの擦り痕が付いている。

 懐から魔法の筆を出してちょっとだけ魔力を集めて水を出す。2リットル位か。瓶を持ってグルグル洗い流し、土間に有る排水路に水を捨てる。これは外に流れるようになっている様子だ。それから適度な魔力で水を出す。20リットル位?それを3回続けて瓶の8分目くらいまで水を入れた。と横にれいか嬢がいてニコニコしながら木桶を出す。そこも水で埋める。断ってそのまま水を飲み、口を漱ぎ、手と顔をさっと洗う。すてが手拭いをすかさず渡してくる。やるやん。

 後は任せて、そのまま寺の板塀の内を回ってみる。狐は足に纏わり付くように着いてくる。

「まだ本当に何もわからないんだが、俺がここにいる意味とか目的は有るんだよな?」

「はいな。偶然ではありません。」

「それはよかった。」

 寺の板塀はかなり変形してもろくなったところと修繕されたところが混在している。本堂もそんな感じでツートンカラーになっている。本堂の後ろは疎林と言うほどでもないが割と太い木が植わっており、庫裏と反対側には校倉ではないけど手の込んだ古い木の蔵がある。ぐるっと廻ると、庭が有る。幾つかの木と竹、石灯籠ではない石塔、もしかしたら仏舎利塔?がある。墓はここにはない。

「寺院台帳的なもので戸籍管理しているわけではないの?」

「かなり以前に国の法で名主が管理するようになりましたな。」

「まあ、坊さんおらんしな。ここ。」

 日が高い。日差しが強い。青空を見ていると天高く馬肥ゆる……とか思い出す。

「今は秋?」

「はいな。この世界とかねかつら様の世界は宇宙の構成を含めて銀河太陽系も公転軌道から公転時間から全く同じです。」

「ああ。そうやね。そんな感じはしたけど。」

 そうやねん、何か異様に懐かしいねんな、日本人のノスタルジーを凝縮したようや。それも理想的にや。

 門から誰か入ってくる。ゴブおばちゃんか。ああ、飯か。

「一度戻ろうか。」

「はいな。」

 


 

 

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