12:人物紹介1
母屋の囲炉裏端には相変わらず人外連中がいる。見た目が恐ろしいので、ビクビクしてしまうが、ポーカーフェイスポーカーフェイス。現場工事のときのめちゃめちゃ怖いおっさんとかき○がいみたいな営業とかに比べれば、まだましや。そうか?
俺が入るとほぼ同時にゴブ娘やゴブおばちゃんが膳を運んでくる。
そういや家のひいおばあちゃんに昔使っていたという箱膳を見せてもらったことがある。昭和初期までは特に大阪の商家なんかでは普通に使われていたという箱膳。みかん箱の半分くらいで、引き出しがついておりその中にお茶碗・汁椀・小鉢とか入れていたらしい。で、大阪の人がお茶漬けをするのは、そのお茶で茶碗を洗って布巾で拭いてしまうからだそうで、合理的だったとか言われた。……。まあ衛生観念なんてそんなものなんやろ、井戸から水汲んで運ぶのは実際大変やし井戸水がきれいとも限らんらしいしなあ。
運ばれた膳はよく時代劇や大河ドラマで見るような立派なものではなく、生木で高さも低く、ただ使い込まれているのか深い色になっている。
大きめの木椀に茶色っぽい粥状のもの、芋?がたっぷり入り、小皿に緑の漬物が入っていた。
「大したおもてなしは出来ませぬが、お召し上がりください。」
「お、今日は芋が入っているな。あるじよ、奮発したのう。」
鳥っぽいのが喋ってる。よく見ると顔立ちそのものは、まあ人間的で整っていないわけでもない。鼻が妙に高い。ただ、目がすごく血走っているし口がでかい。唇がない。歯が尖っている。ほんま怖いって。
で、羽だ。単純に腕に羽が生えている。そのへんも天狗っぽくないというかハーピーっぽいというか中間。器用に箸を使っているが、羽がわさわさしているので横に座っている猫娘は迷惑そうに睨んだり唸ったりしている。反対側のトカゲぽいのは何食わぬ顔で食べている。いや、あんな鱗まみれの顔で表情がわかりにくいだけか?牛鬼みたいなアラクネみたいなのは普通に手があって、普通に食べているが自分が一膳食べる間に2回もおかわりをしていた。遠慮ねえ。
Kappaは……水音のするあたりにいるんだろう。これも顔立ちは割と普通の人間ぽい。顔の色は肌色だ。でもそれは面を貼り付けたようにグラデュエーションで薄い緑というかカーキ色というか、変化して、で甲羅だ。甲羅と言ってもすっぽんのような硬すぎない感じで、背中から脇腹まで覆っている。前はどうも肌色のようだが、金太郎さんのするような前掛けを手足にくくってパレオ風に腰布を巻いている。
バシャバシャ言うのでそちらを向くと、串に挿して炙った魚を食べている。ああ、俺もそっちも食べたいなあ。
鵺?皿に入った粥と魚のあらを食べている。猿やしなあ……。しかも蛇も魚の頭を咥えてゆっくりと飲み込もうとしている……。慣れへんとあかんねやろなあ……。
「で、ぬしは手伝ってくださるのか?」
「ああ。できることがあればやらせていただこうと考えている。」
「それは重畳。ありがたいのう。」
鳥っぽい口端を釣り上げ、恐ろしい顔をさらに怖くして、多分笑った。そのまま粥椀をぐっと持ち上げ、長い舌で残さないように舐めあげる。その間も目はじっとこちらを見ている。いや、ほんまのほんまに怖いんよ!
「失礼。わし等はこの村の氏神様の眷属でな。氏子を守るために使わされたのじゃよ。わしは天狗の白雷が娘じゃ。くろめと呼んでくだされ。」
食べ終わり膳を後ろに回すと、姿勢を正してハーピーが言う。やっぱり天狗か。というか、烏天狗か。顔や肌は抜けるように白いが、羽は艶つやした黒だ。烏の濡れ羽色と言うが、正しくそのままだ。ていうか眷属って何よ、とすると神様はこちらはこちらで実在するの?あの軽いのとはまた違う感じなんやろうけど……。
「あらためて。拙はかねかつらと申す旅のものだ。西から来たのだが、途中何かの病で臥せってしまい、覚えが曖昧になっておるようだ。体は大丈夫だが、色々なことを思い出すのに苦労している。魔法は使えるようだが、今はあまり使えていない。その日まで鍛錬して思い出すつもりなので、足手まといにならぬよう努力いたす所存だ。一飯の恩義は返したいと思う。こちらこそよろしく頼む。」
そう言って頭を下げる。
「そうか。正直に言って、ぬしのような者に手伝ってもらえるのは本当に助かるのじゃよ。主に『必ず七人を集めろ』とお告げをされておったから、どうしようかと思っていたのじゃが、さすが主はよく予見ているわ。最悪、むじなのやつでも引き込まねばならんかと頭を抱えておったのじゃからな。」
「くろめ、むじなだけはやめておけと何度も言ってるにゃ。」
にゃ、きたよこれ。ケモミミだけど、目がつり上がっていて虹彩は縦だ。で、重要なところだが、鼻がほとんど無くて直接細めの穴が2つ開いている……という感じの鼻、口と鼻はつながっていて、食事のグルーミングをしているのかペロペロ手を舐め、その手で口元を擦ってる、、衛生的にどうよという感じはするが、現代人の感覚なのかなあ。慣れないとあかんなあ……。
また、ベロが本当にザラザラだ。ちらりと見える歯も容赦なく尖っている。やっぱり怖い。
着物は、くすんだ赤い着物に茶色の帯、それも兵児帯様のものを付けている。
顔は地黒系の肌色で毛は生えていない。頭に髪と同じ色の黒髪で、パッツンの前髪、後ろで一つに括っている。
「この娘は少し離れた集落の眷属なんじゃが、今はワシが預かっておる。猫又がみけなりの娘、やにあという。」
「やにあで御座います。宜しゅうお頼もうします。」
「うむ、よろしく頼む。」
落ち着いて話してみると、普通だ。至極まともだ。ただ、盗賊が居るというのに落ち着き払っているのが腑に落ちない感がある。大体神様の眷属とかむちゃくちゃ強いんじゃね?くろめとか空飛んでたし。お告げのせい?
「こちらはわしと同じく氏神の眷属でな。」
「守宮が、おきまつの、娘、はくや」
ひっかかるようなかすれた声でリザード娘がしゃべった。やっぱ話せるんか。
いもりって言っとったけどこれってヤモリやわな。顔貌は人間ぽいけど顔の真ん中を除いて鱗が覆っている。梅○先生すみません、もう蛇女にしか見えなくなりました。だがそれ以上に全身鱗なのだ。
で白っぽい。アルビノ?白いヤモリとか白い蛇とか演技とか金運とか良いって言うよね?これも目が赤っぽい。俺も含めて赤目大杉!白○先生!関係ないか。
着物というか胴を着けているせいか袴を履いているせいか、まんま剣道着だ。でもかなりリアルなトカゲ……いやヤモリか。うーん。目が違いすぎて一番人間ぽい体型なのに一番人間離れして見えるのはなぜ?
「わっしは絡新婦が一族やつかの娘、とつかと申す。生まれたときから形が大きゅうて、そう呼ばれとる。すぐ隣の集落から助太刀に参った。明日は我が身じゃからな。力だけはあるので、力仕事は任せてくだされ。」
愛想が良いなあ。やつか=八束で大きいだっけ?とつか=十束でもっと大きいと……。
顔はまあ、人だ。おでこに幾つか小さい目(単眼?)みたいなものが有り、時々瞬きしているのが気にはなるが、作りは普通に人だ。南米の巨大な顔だけの丸い石像によく似ている気がするが。ちょっと体格が良すぎる感じだが、手も上半身も人だ。箸を使って上手に食べていたし……。巨乳だし……。
彼女も着物を着ている。それで隠しきれないってどんだけ豊満。柿色で、小模様が入っている。それが、腰から下の途中までを、腹の三分の一ほどまでを上手く覆っている。うまく足が出ている。脚が出ている。6本。何か毛が生えている。大丈夫なのか?触れても問題ないのか?毒はないのか?……関節を詳しく見てみたい……。
「そうか。拙者はどちらかと言うと非力だから、よろしく頼む。」
そう言うと、皆がキョトンとした顔になり、くろめが吹き出した。続けて何人かのクスクスという笑い声が聞こえてきた。水音も聞こえた。鵺は寝ていた。
「冗談が巧いで御座るな。オーガ殿が非力など、有る訳がなかろう。」
「そーにゃよおっちゃん、よく言うよ!」
猫娘が腹を抱えている。
これはあれか、これもフラグか?しょうがない、実際どれくらい力があるのかは試してみんことにはわからんな。




