第二十五章 金属生命体
6か月後。
名称検討会が開かれた。
生命なのか
生物なのか
人工生命なのか
自律機械なのか
金属生物なのか
法務担当者は最初に線を引いた。
「法令上の分類名を決める会議ではありません。研究上の呼称整理です」
「それでいいです」
晶が答えた。
生物学の研究者が言った。
「自己複製がないので、既存の生命定義には当てはめにくいです。ただ、自己維持、刺激応答、適応、情報保持、独立した行動はあります」
安全管理の担当者が続けた。
「人間やAIの指示がなくても活動を継続できます」
若い頃に「人工金属の生物」と口にした研究員も、今は主任になっていた。
「最初は冗談に近い俗称でした。でも、今は『金属生物』だけでも足りない気がします」
「候補は?」
「金属生命体」
会議室が静かになった。
《その呼称は、生命であるとの科学的確定を含みますか》
「含みません。分類名ではなく、独立した存在として扱うための呼び方です」
晶は少し考えた。
「だったら、『研究チーム内での通称』としましょう」
法務担当者がうなずいた。
「正式名称でないのであれば、問題ありません」
正式な物質名はM-731。
微小単位はM-cell。
多数のM-cellが集まった状態を示す「M-cell群」や「集合体」という技術用語も残る。
そして、自律して活動し、自ら目的を選ぶ段階に達したM-cellの集合体を、研究チームは通称として「金属生命体」と呼ぶことにした。
名前が存在を変えたわけではない。
存在が変わったため、呼ぶ言葉が追いついた。
※毎日更新します。




