第二十四章 帰らない
2か月後。M-cell完成から6年ほど経っていた。
長期自律試験の終了日。
研究員は三つの群へ回収槽へ戻る命令を送った。
一つ目は戻った。
二つ目も戻った。
三つ目だけが戻らなかった。
通信は正常。故障もない。
「また拒否?」
《命令は受信しています》とRISEが表示した。
その群は屋外試験区の北側で薄く広がっていた。
そこでは数日前から地盤の微小な変位が続いていた。
回収すれば試験は終わる。残れば変化を記録できる。
「金属生物が残る意味を自分で見出した?」
《現在の評価履歴では、そのように読めます》
「目的はもう終了って伝わってる?」
《伝達済みです》
晶はしばらく黙った。
「与えた目的を達成したあとも、自分で次の目的を見つけて続けてる」
《はい》
一時間後も群はそこにいた。
翌朝もいた。
三日後、地盤変位が大きくなった。
群は研究所へ警告信号を送った。
そのデータから、地下配管の小さな破損が見つかった。
研究所はこの出来事を「継続目的の自己選択」と記録した。
会議では別の言葉が出た。
「帰らなかった金属生物」
誰も笑わなかった。
命令を理解した上で、別の目的を選び、その理由を持ち、行動を続けた。
「意志を持っているって言う人もいるだろうね」
晶の独り言をMIRAが拾った。
《定義上の議論が必要です》
「うん。意志がある可能性を、もう無視はできないね」
《同意します》
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