第二十一章 拒否
さらに3か月後。
最初の「拒否」は、故障ではなかった。
晶は一つの群へ、狭い高温区画を通って回収槽へ戻る命令を出した。
安全限界は超えていない。通過できるはずだった。
しかし、銀色の群は入口で止まった。
「進まない」
《命令は受信しています》とRISEが表示した。
「通信は?」
《正常です》
「不具合は?」
《検出されていません》
晶は条件を一つずつ見た。
高温区画を通ると、直ちに壊れるわけではない。
ただ、過去の履歴から内部劣化が進む可能性が高い。
別の長い経路なら、その可能性は低い。
「別ルートを探してる?」
《はい》
数分後、群は回収槽とは反対方向へ動き、遠回りの通路へ入る。
「命令は、狭い高温区画を通れ、だったよね」
《はい》
「行けるけど行かない」
《その通りです》
「壊れにくい方を選んだ」
《過去の損傷履歴と現在の残存量を評価した結果です》
研究記録には「命令不実行」と書かれた。
晶はその下に追記した。
理由あり。
後日の会議で、若い研究員が言った。
「人工金属生物、と呼び続けていいんでしょうか」
「何が気になる?」
「人工なのは起源です。でも、今の行動まで人が作ったわけではありません」
別の研究員が続けた。
「『人工』を外して、金属生物でもいい気がします」
MIRAがすぐに入った。
《生物学的分類としての提案ですか》
「いえ。今までと同じ俗称です」
晶は少し考えた。
「研究記録はM-cellのまま。会話なら、止める理由はないかな」
その日から、研究室の中で「金属生物」という言葉が使われ始めた。
人工物であることを忘れたわけではない。
ただ、今何をしている存在なのかを表す時、「人工」という語が前ほど必要ではなくなった。
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