第十六章 形は手段
さらに3か月後。M-cell完成から4年が経っていた。
M-cell群は小さな金属体の集合体なので、群そのものに決まった形はなかった。
離れた場所をつなぐ時には、橋のように細長くなる。
広い面を覆う時には、膜のように薄く広がる。
熱を逃がす時には、木のように枝分かれする。
衝撃に耐える時には、石のような塊になる。
人間向け設備での作業を効率化するため、研究員の一人が、人型試験モデルを提案した。
以前にも手や腕に似た構造は作っていたが、今回は形を固定することが目的だった。
晶は設計図を見た。
「必要なら作ればいい。でも、人型を完成形にはしないで」
「設備との互換性を優先する試験用ですね」
「そう。人型が目的じゃない」
《記録しました》
MIRAが答えた。
扉を開ける時には腕ができる
階段では脚ができる
細い配管の中では紐のようになる
河川の観測では葉のように薄く広がる
地中では根のような網になる
固定する必要がある時には岩のような塊になる
どれも模倣すること自体が目的ではない。
その環境で必要な機能を満たした結果、似た形になるだけだった。
「人間も動物も植物も無機物も、形としては候補なんだ」
《機能上有利であれば採用します》
「でも本物になるわけじゃない」
《はい。構成物質も成立過程も異なります》
ここは研究チームで何度も確認された。
M-cellが葉に似た構造を作っても、植物になったわけではない。
魚のような輪郭で泳いでも、魚になったわけではない。
石のように動かなくても、石になったわけではない。
形を作ることは、仕事を効率化するための手段の一つだった。
人工金属生物は、一つの姿に自分を固定しなかった。
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