第十五章 選んだ道
さらに3か月後。
M-cellの群に二つの経路を与えた。
左は距離が短いが高温域がある。
右は距離が長いが温度変化が少なく安定している。
どちらを通っても、最後は同じ電極へ接続できる。
《優先順位を指定しますか》
「しない。目的地だけ指示する」
RISEが試験を開始した。
一回目。M-cellの群は、安全な右を選んだ。
二回目。高温域の温度を少し下げる。最短距離の左を選んだ。
三回目。左の経路の一部を狭く設定した。M-cellの群は再び右へ行った。
四回目。右側の通信環境を悪くした。左へ戻った。
「固定ルールじゃない」
《複数の条件を総合して評価しています》
「同じ目的でも、その時の状態で変わる」
《はい》
その後、過去の履歴を参照できるようにした。
一度高温域で損傷したM-cell群は、次の試験では同じ温度でも慎重になった。
別々のM-cell群も、互いに接続すれば履歴を共有することができる。
ただし、この試験では経験差を見るため、別のM-cell群には損傷履歴を共有しなかった。
履歴を持たない別の群は、同じ経路を通った。
経路の選択基準に、条件だけでなく、過去の経験も判断に加わるようになった。
「経験で答えが変わる」
《履歴による重み付けの変化です》
「研究記録なら、その言い方でいい」
晶はそう言いながら、銀色の群を見ていた。
人工金属生物という俗称が、以前ほど大げさには聞こえなくなっていた。
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