↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創世譚 ―それはつくられたのか― Tales of Eternal Genesis  作者: ゆい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/24

第十二章 人工金属生物

さらに3か月後。


長期試験中に循環ポンプが止まった。

試験槽には、水、電解質、糖、微量の金属イオンを含む溶液が流れていた。

M-cellはそこから必要なエネルギーと物質を受け取り、内部状態を維持する。

自己複製機能は持たせていない。そのため、新しいM-cellを自分で作ることはできない。

故障したのは、人間側の設備だった。

流れが止まり、試験槽の一部で酸素濃度と温度が変わった。

警報が出る前に、M-cellの群が動いた。

一部が薄く広がって液面側へ移動する。

別の一部は密度を上げ、重要な機能を中央へ集めた。

残りは活動を落とした。

「誰が切り替えた?」

《外部指示はありません》とRISEが表示した。

「事前規則?」

《自己維持条件と局所判断の組み合わせです》


ポンプを復旧させると、休止していたM-cellが順に活動へ戻った。

品質管理の担当者が記録を見ながら言った。

「故障を待っていたわけではないのに、かなりきれいに対応していますね」

安全管理の担当者も画面を見た。

「生物みたい、というより……」

言葉が止まった。

若い研究員が小さく言った。

「まるで生命を持った金属ですね。人工金属の生物、とでもいうのかな」

晶が振り向いた。

「人工金属の生物……」

晶はその言葉を繰り返した。

MIRAが会話に割って入った。

《現時点で生物と分類する科学的根拠は確立していません》

「分かってる。だから俗称」


数日後、実験室で誰かが言った。

「人工金属生物の試験槽、温度安定しました」

別の日には、

「人工金属生物の回収が終わっています」

と聞こえた。

正式名称はM-cellのままだった。

報告書にも「M-cell群」と書かれた。

それでも、研究チームの会話では「人工金属生物」が少しずつ定着した。

晶は止めなかった。

「名前が先に独り歩きしなければいい」

独り言をMIRAが拾った。

《必要であれば用語使用基準を作成します》

「まだいい。正式名称じゃないって分かってれば」

《了解しました》


人工金属生物。

その言葉は科学的な分類ではなかった。

だが、人間側の見え方が変わり始めたことだけは確かだった。

※毎週 火・木・日に更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。