第13話 代表美少女役美少女
※プロローグにイメージ絵(AI生成)を入れました
貴族の娘アイ・オコンネルの仕事は貴族の娘。結婚。子作り。
子作りが仕事。男とセックスが仕事!
うわっ私の仕事無理すぎ?
はー転職したい。
職業選択の自由はないのかこの未来中世世界は!憲法違反だ!
500年前も職業選択の自由があったのかと言えば微妙だけど。本当に500年前に職業選択の自由あったなら私は職業美少女やってるわ。
あれ?今じゃん。今美少女じゃん。
職業美少女。名刺にどう書こう。
代表美少女役美少女。
職業ってRPGならクラスだよね?クラスで一番の美少女。
つまり最強ってことじゃん?文明崩壊インパクト最強クラスランキング第1位美少女。
属性はなにがいいだろう。小悪魔?ケモミミ?やっぱり王道のツンデレ?オタクにやさしいギャル?
あ、私の属性って妹じゃん妹だった。
あ、でも姉になるんだった。お姉ちゃんちょっとやばいわ本気でお姉ちゃんになりそうになったし儀式しなきゃ。
◇
「ドクター。ドクターってどうしてドクターなの?」
今日は日曜日じゃないのにイーメン先生が休みだった。珍しい。
家族サービスでもしてるのか?おい。家族で温泉か?いや絶対子供まだ小さいから遊園地か?
ごめんずっと独身だから家族サービスのイメージ想像できない。
イケメン滅す。
「今日は検査の必要ないんだが」
「ドクターは検査がなければ私がここにいたらダメっていうの?ひどい!ドクターがそんな人だなんて知らなかった!」
「そうだ。帰ってくれ」
「ひどい!」
「私も仕事がある。暇じゃないんだ」
「仕事!仕事仕事仕事!ドクターの仕事!貴族の仕事!貴族の娘の仕事!そんなに仕事が大事ですか!?ドクターは仕事と私とどっちが大事なの!?」
「仕事に決まってる」
「知ってた。知ってました。この仕事人間!仕事人間キャ〇ャーンめ。燃える怒りをぶちかますぞ!私思うんですけど表現の自由を言う人なんで著作権に黙ってるんですかねドクター」
「思ったんだが、たしかに君は取締役の娘だな」
「やめて」
私そんなに存在がうるさいの?
いやうん自分が見ても私の存在うっせーわ。あなたが思うより暇なんです。
「私転生して、あ転生って記憶転送されたことですよ。目覚めて美少女になっててしかも貴族の娘でラッキーって思ったんです。正直。前世、じゃなかった500年前は無職中年独身一般男性英語に翻訳するとゴブリンあいあむえーとジャパニーズゴブリンだったし。これよりオコンネル国際美少女サミットを開催いたします」
「やっぱり今日も検査しようか?」
「大丈夫です異常ありませんネタが古いのは私がおじさんだからです美少女だけど!そう、美少女貴族でラッキーって思ったんですよ。な!の!に!どうしてですか。どうして安いサンダル履いてるんですか!違う!どうして結婚!どうして男と!どうしてセックス!結ばれぬ悲しいデスティニーですか!?」
「そうだな運命だな。それが貴族の娘の仕事だ」
「仕事!仕事仕事仕事!仕事しなきゃいけないんですか!無職じゃダメなんですか無職じゃ!」
「当たり前だろう。貴族には貴族の仕事。科学者は科学者の仕事。自分の役割をしっかりと果たすのが人間だ」
「でもドクターだって貴族の仕事から逃げて貴族になったじゃないですか」
「科学者だ。まあそうだね。貴族の仕事をやめたら逃げるしかなかった。仕事を放棄すれば居場所がないからな。そう言うのが正確だな」
「仕事をやめたら居場所がない。逃げるしかない、ですか」
500年前も500年後も世界は無職に厳しい。
世知辛い。
美少女が仕事じゃダメなの?ドラ〇エなら遊〇人も職業なのに!美少女無職はいニート。
無職差別だ。
無職の権利を要求する!
「ドクターまた逃げましょうよ。一度逃げたら2度逃げるのも同じです。科学者なんてやめましょう。あっ!科学者って魔法使いとも言うんでしょ?ドクターの歳で魔法使いってことはドクターって童貞?きゃーくすくす童貞が許されるのは無職までですよ!なんで科学者してるんですか!無職になって私と逃げましょう!私は無職あなたも無職義務から逃げてドロンドロン。あ、でもえっちはダメですよ禁止です」
「帰れ」
「ごめんなさい調子に乗りました。でも逃げませんか?私が付き合ってあげてもいいですから」
「逃げん。今はいつもよりも忙しいんだ。そうだ、君にも教えてやろう。取締役から依頼されていたケシの品種改良。やっと成功してね」
「おめでとうございます。なんでしたっけそれ。あ、麻薬王に俺はなるんでしたね」
「違う。それで私も取締役も本当に忙しいんだよ。ビジネスのことは私にはわからないが、まだまだ私のほうでもやることはあるからな」
「がんばってください。これは真剣に。私が逃げた後オコンネル家が倒産なんてことになったら私も心苦しくて夜しか眠れなくなります。立つ鳥跡を片づける余裕なんてないっていうのが私の座右の銘ですので」
「アイ君、まさか本気で逃げるのか?」
「え。そんなの無理に決まってるじゃないですか。私一人で逃げても3日でゲームオーバーです。4日でリセットです。土曜日は破産ですチクショー!」
「それはそうだな。アイ君、君も以前はもうちょっとマシだったと思うんだが、フアナ夫人とは正反対の方向に変わったな」
「ごめんなさい。でも無職希望ですからこんなもんでしょう。それより本当に大丈夫ですか?」
「オズ・バーボンのことか?大丈夫だろう。あれでも取締役はやり手だ」
「やっぱり隠さないでお母様と一緒にやるほうがいいんじゃないですか?お母様優秀ですし」
「夫人の鼻を明かさねば取締役の立場回復にならないからね」
「心配です」
そうか。ドクターも取締役もがんばってるんだな。
私も頑張らなくてはって何を?子作り?男と子作り頑張るの?
嫌です。
◇
日曜日。
「すっかりお元気になられましたね、お嬢様」
馬番が憎らしいほどの笑顔で私に声をかけてくる。
「ええ、ありがとう。まだ完全に回復したわけではないのだけど、馬も健康に良いですから」
私も必殺美少女スマイルで応えた。とてもお嬢様してる。
この時代の朝は早い。夜も早い。
照明の問題だ。オコンネル家には電気もあるが、500年前の現代のようにはとてもじゃないが使えない。用途は限定される。蝋燭などの明かりも意外とコストがかかるらしい。結果、生活は日の出から日の入りが基準になる。
また、オコンネル家では朝食は昼と兼ねていて、イーメン先生が家庭教師に来る時分までけっこうな時間がある。
それで、最近の私は早朝の乗馬が日課のようになっていた。
うーん、お嬢様。
オコンネル家の敷地の外に出ることは許されていないが、敷地内でも馬をとことこ走らせるには十分な広さがある。
馬上からは敷地の柵の向こうにカンザスの平原が見え・・・るといいのだけどあまり見えない。脳内イメージの中世の城みたいな城壁はないが、そこそこ立派な塀があった。
オコンネル家兵ヤードガードの姿も見えるが、敷地の広さに対してはあまり多くはない。
館からの脱出自体はそこまで難しくはないように思える。
問題はその後だ。
この未来中世世界を少女の身ひとつで生きていく自信は私にはない。
一人で逃げるのが無理なら頼りになる相手を見つけて一緒に逃げればいいのではと考えたのだが、でもドクター・ピーターもイーメン先生も意図をはっきりとは悟られないようさりげなく、実にギンギラにさりげなくさりげなく誘ってみたけどアゲッチュベイベー全然だめだった。
もちろんわかってはいた当然の結果だけど。ちくしょう。
そもそもドクターは頼りになるのか怪しいけど、イーメンイケメンはなんだかんだどこでもやってけそうなんでもできそう。ちくしょうイケメンめ復讐してやる。
あ、意外とやり手って噂のお父様を誘うのはどうだろう?
無理だな、あれで仕事好き、仕事に熱心みたいだもんな。
そもそも当主だし。
先物で失敗し妻に頭の上がらなくなった情けない貴族当主の出奔。事件としてちょっと面白そうだけど、その後反旗の兵を挙げるストーリーとかになりそう。
敷地内にある礼拝堂の近くに差し掛かった。
「このまま礼拝も済ませられたらいいのに」
日曜日は礼拝の日だ。しかし乗馬用の服装で礼拝堂に入ることはできないので、一度着替えに部屋まで戻らねばならない。めんどくさ。
「っ」
ん?
かすかに人が発したような不自然な音が耳に入って来た。
周囲を見回すと、後方それほど遠くない場所にヤードガードが直立していた。
というかよく見たら兄のアランだ。全然気づかなかった。気配を感じさせない人だな。
私はあらためて馬を進めようとしたが、ふと違和感を感じる。
なぜ兄がここにいるのだろう。
たしかに巡回でこの場所にいてもおかしくはないが、でも今まで一度も乗馬中に兄を見かけたことはない。
よし。
兄には近づかないように言われていた。しかし同じ館内で暮らしてるのだ。偶然接触することだってあるだろう。
私は馬を下り、礼拝堂の前の植え込みに直立したままの兄に近づく。
兄は視線を私に向けなかった。
「お兄様?」




