第6話 カルナの実力
得意満面の笑みでケモ耳少女ことカルナは解説を始める。
「あの魔物はあなたたちの動き方を見ていたのよ。誰が強いのか、何人で守っているのか。
そうやって相手の実力を測る手段ね。」
「それならこの後俺たちが村の守りを固めたら意味がないじゃないか。」
「むしろそれが狙いよ。どれくらい守りを固めることができるのか。
もしかしたら何度もああいう攻撃を行ってあなたたちを油断させておいてある日ドカンと大攻勢をかけてくることも考えられるわ。
あなたたちが倒したゴブリンなんていくらでもうじゃうじゃ湧いてくるんだから今日倒した分なんて何の損害にもなっていない。どう?ここまで考えることがあなたにできる?」
「あれにそんな意味があったなんて。君って頭いいね。」
へへん!と腰に手を当てて自慢げにしている。
「こんなに頭のいい私が魔物なわけないじゃない。
とりあえず雑談はここまで。魔王城まで案内して。今度はさくっと魔王を倒すわ。」
「いや、僕は魔王城の場所なんて知らないよ。」
「地図は?」
「今は持っていない。宿屋の部屋に置いてある。
それでも地図には魔王城のことは書いてなかった。」
「ん-。世界は広いからな。そういうこともあるか。」
「魔王城のことならエルンストが知っているかもしれない。
彼は勇者として今日出立したばかりなんだ。
僕はエルンストの父親に依頼されて彼を連れ戻すところなんだ。
彼ならきっと魔王城の場所を知っていると思う。」
「その男は今どこにいるの?」
「勇者として魔王を倒すために出立したからノキマっていう山を越えたところにある街を目指していると思う。」
「早速向かいましょう。」
彼女は村の方に歩き出した。魔物が逃げた方は反対側だ。
「ちょっと待って、エルンストのところに行く前に森の奥に逃げた魔物を倒さないと。」
「なんで?」
「あの魔物は村を襲おうとしたんだよ。威力偵察だっけ?それなら次も襲撃をするってことだよね。
それならここで倒しておかないと。安心して村の人たちは生活できないじゃないか。」
「魔王を倒さない限りあんな雑魚は次から次に生まれてくるわ。
ここで倒したところで意味ない。
それともあなたはあの村にずっといるわけ?
違うわよね。そのエルンストとかいうやつのところに行くのが目的なら村のことは村人に任せてあなたはあなたの用事を済ませるべきよ。
他人に気を使えるほど強くないじゃない。」
「今倒しておかないとあの魔物が多くの魔物を引き連れてくるかもしれないんだろ?
なら今倒すことにも意味はあると思うんだ。」
それを聞いて彼女は思案する。
そして目の前にいるこの青年を値踏みするように見る。
2人の間にしばしの沈黙があった後
「んー、正直気乗りしないけどあたしの実力を見せるいい機会ね。
雑魚なやつだったしさくっと倒すか。」
「さくっと倒せるの?」
「私の魔法なら一撃よ。心配ないわ。異世界までわざわざ来たんだからね。」
そう言って彼女は魔物が逃げた方向にすたすたと歩き始めた。
「荷物は?魔物の場所はわかるの?イセカイって何?」
「荷物は魔法で収納しているから手ぶらでOKなの。魔物の場所は足跡に残っている瘴気を辿れば問題ないわ。異世界はこことは違う世界のことよ。魔王も元は私の世界のやつよ。それを追ってきたの。」
彼女は迷いなく歩いていく。その後ろを遅れないようにカザンはついていった。
少し歩いたところで森が途切れて広場のような空間になっている場所に出た。
円形状の広場の中央にボスゴブリンがいた。その周りには村を襲った小さなゴブリンが大量にいる。
村を襲ったゴブリンを合計した人数よりも多い。
「あいつはボスゴブリンって言うの。ゴブリンの親玉的な存在ね。ゴブリンが成長するとああいうやつになるわ。そいつの瘴気からゴブリンが生まれる。瘴気は濃ければ濃いほど強い魔物が生まれるわ。
ここでじっとして瘴気をたまるのを待っていたのかもしれないわね。」
数は100体を超えている。この数があの村に一度に襲ってきたら村はひとたまりもない。
「はーい、こっちにちゅうもーく。」
カルナは杖を掲げて大声で言った。
ゴブリンたちが一斉にこちらを向き即座に襲い掛かってくる。
カザンは突然のカルナの行動に意表を突かれ遅れて剣を抜く。
「疾風の風よ。刃となりて切り裂け!ウィンドブレード。」
カルナが魔法の詠唱をすると風がゴブリンめがけて吹き付けた。
集団の先頭を走っていた数体のゴブリンが切り裂かれ絶命し霧散していった。
残りのゴブリンにはダメージを与えなかったようだ。そのままカザンたちに突っ込んでくる。
「あれ?おっかしーな。」
カルナは杖の先端をくるくると回し再度詠唱する。
「草原を燃えよ。ファイアー」
すると杖から炎が噴き出し目の前の草原を焼いた。
集団の先頭にいたゴブリンは焼け、そのほかのゴブリンも火に驚いて足を止めている。
カルナはまたしても首を傾げる。
「なんか調子悪いみたい。あなたも加勢して。」
カザンはゴブリンの集団に突っ込み右往左往しているゴブリンたちを次々に斬り伏せていく。
エルンストの父が用意した剣は並みのものではない。
剣の扱いが初心者のカザンでもわかるほどに業物である。
カザンがゴブリンたちと戦闘している間カルナは腑に落ちない表情だった。
「なんか魔法が弱くなっているな。どうして?」
カルナは元の世界ではエリートの一員として魔法全般を最高レベルで習得していた。
普段使っている魔法に比べるとそれはとてもひ弱なものになり果てていた。
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