第4話 深夜の襲撃
誰かの声がして目が覚めた。
目を覚まして起き上がり窓から顔を除くと闇夜で誰かが何かと戦っているようだ。
「襲撃だー!」
大きな声が響いた。
何かからの襲撃があったらしい。それを聞いて眠気が吹っ飛んだ。
村の中央にある鐘を叩く音も聞こえる。
甲高い音が村中に響き渡る。
夜盗か魔物か。
窓を開けて外の様子を見る。村全体は真っ暗であった、街灯などという気の利いたものはない。
夜に燃料を燃やすなど金持ちでない限りそうそうやることではない。
村の森方面の方から音がする。
そちらを見てみると松明が1本燃やされそこだけ明るくなっている。
その側でガーディアンが剣を振って戦っている。
明りに照らされてはいるがはっきりは見えない。松明程度では明るさに限界がある。
小型の動物と戦っているのだろうか。
自分は剣を持っている。ただの村人ではない、その気持ちがカザンを突き動かした。
剣を腰につけ、靴を履いた。
すぐさま宿屋を出てガーディアンの下に馳せ参じた。
ガーディアンは国から各都市に派遣される兵士のことだ。
村の防衛の他、人々に剣術を教えて守り人を育成したりする。
この村ならば1人しか派遣されていないだろう。
ガーディアンの側に行き状況を尋ねる。
彼は振り返り腰に剣を帯びている姿を見て応援が来たと安堵の表情になった。
「応援感謝する。しかし君は村人ではないようだが?」
「今日この村についたばかりです。私も加勢します。」
「助かる、ゴブリン相手だが1人では厳しいと思っていたところだ。
まさかこの村にまでやつらが来るとは思ってもみなかった。
どうやら森に潜んでいるらしく数匹ずつだが何度も来やがる。」
カザンは周りを見るがそのゴブリンの死体が見当たらない。戦っていたはずだがどうしてだ。
そんなことを疑問に思いつつカザンは剣を抜き構えた。
森の方から走ってくる音が聞こえてきた。
松明の明かりが届く距離になったときそのゴブリンが姿を現した。
人で言うところの子供くらいの大きさだが子供にはない邪悪さが全身からにじみ出ている。
それが5匹こちらに走ってくる。手には体に不釣り合いな棍棒を持っている。
「魔物を斬ったことはあるか?」
「いえ、初めてです。」
「わかった。俺の動きを見ておいてくれ、こいつらは俺がやる、その次は君がやってくれ。
ゴブリンは小型であるが俊敏だ。知能は低く戦闘力は高くない、今回は5匹だが油断してはならん。
あと魔法は使ってこない。」
魔法、その言葉も父から今日教えられた単語だ。
超常の力。火を自在に操り、空中に水を出現させる。人を凍らせることもできるらしい。
常識では理解できないことを平然とやってのける。
魔物だけが使える力。
人間がここまで追い込まれた理由。
一瞬の思考の後目の前の現実を見つめる。
今まさにゴブリンとの戦いが始まろうとしていた。
ガーディアンは向かってくるゴブリンの1体を頭から真っ二つに切り倒した。
カザンが呆気に取られていると2体目がすぐさま襲い掛かってくる。
それも慣れた動きで胴を横から二つに別つ。
3体目、4体目も同様に切り倒していく。
倒された魔物の死体は灰のようになり空気中に霧散していった。
「魔物は死体が残らない。瘴気という魔物が発する毒からあいつらは生まれる。瘴気の発生源を倒さない限り勝つことはできない。」
簡単に斬り伏せているように見えたが彼は肩で息をしていた。
1人で何度もこれを繰り返していたのだろう。
今度は自分の番だと決意し一歩前に踏み出した。
また森からゴブリンが5体走ってきた。
”生きるために剣を奮え”
父の言葉がよみがえる。
自分が守らなければ村が滅びる。そうなればエルンストの下に行くところではなくなる。
勇者でなくても戦わねばならない。
剣を頭上に構える。
迫ってくる3体のゴブリンを一気に斬り伏せた。
最初の1体は頭から、2体目は右に剣を向けて胴を薙ぎ払う。
3体目は足を一歩前に出して剣を正面から突き出して串刺しにした。
初めて鶏を絞めたことを思い出す。
毎日ひよこの時から育ててエサも欠かさず上げていた。
小さかった時は自分の寝床に連れて行き一緒に寝たこともある。
そんな鶏を父から絞めるように言われた。
最初に父が見本を見してくれた。
鶏小屋に行き一匹を捕まえると小屋を出る、そしてその鶏の首をポキリと折った。
腕の中で暴れていたそれはほんの少し足を動かした後ぴたりと動かなくなった。
そして自分でもやれと言われた。
通常潰すのは1羽だけだがこの日はカザンの初めてのことだということで父とカザンで1羽ずつ絞めた。
泣きながら鶏の首を折り必死にもがく体を自分の腕と胴で抑えた。
自分が今まで食べていた肉が自分たちが育てていたものであることは知っていた。
それでも自分でその行為をするまではどこか別世界のできごとだと感じていた。
その日カザンは食卓に並んだ鶏を食べることはできなかった。
他の兄弟や父や母いつも通り、なんなら2匹分もの鶏料理が並んでいることに喜んでいる。
前までは自分はそちら側だったがもう以前のような気持にはなれない。
それが成長だと父は言ってくれた。
それからカザンは感情が乱れることなく鶏を絞めることができるようになった。
あの時の状況に比べれば今この戦闘に何の感情も揺さぶられない。
ただ斬って捨てる。死体は霧散して消える。
ゴブリンの返り血も蒸発している。
彼と2人でこのゴブリンの奇妙な波状攻撃を迎え撃った。
2人で対応しているためか余裕が出てきた。
ゴブリンが出てくる根本である森を凝視すると人の背丈を優に超える高さに2つの目があるのがわかった。
「あれが親玉ですね。」
そうつぶやくと隣にいたガーディアンも気が付いていたようで頷いた。
村人の多くが手に桑などを構えて2人の下に集まってきていた。
カザンは村の方を見てこの状態ならば防備は大丈夫だろうと思った。
「私があいつを仕留めます。ここはお願いできますか。」
「いや待て君はまだ駆け出しの冒険者ではないのか。これ以上ゴブリンが来ても十分に対応できる。
夜の森は危険だ他の魔物がいるかもしれない。
今日はもう休んでおこう。」
「この波状攻撃の理由がわかりません。なぜ一気に来ないで数体ずつだったのでしょうか。
せめて親玉の姿だけでもはっきりと見ないといけない気がします。」
そう言ってガーディアンが止めるのも聞かずに森に向かって走りだした。
村を見ていた2つの目は彼が近づいてくると姿を消した。
ドシンドシンと大きな歩く音がすぐに聞こえてくる。
逃げたのか誘っているのか、罠かもしれないと思いつつカザンは森に入っていった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ブックマークしていただける執筆の励みになります。
他にも投稿していますので読んでいただけましたら幸いです。




