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野良勇者と獣人魔法使い娘の魔王討伐  作者: オツタロ


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第3話 村

街を出たカザンはタカラヒから一番近くの村に寄ることにした。

夜の移動は危険な為(とばり)が下りる前に村の宿屋を目指す。


村に着くころにはギリギリ夕方と言う状況になっていた。

村程度になると壁はなく木の柵で村の境界を分けているだけで、動物程度であれば魔物や夜盗の侵入は防げないだろうと思うと恐怖すら感じる。

自分が知らなかっただけで魔物はすぐ近くにいるのだと教えられた。

タカラヒの街は壁に囲まれていて門には国から派遣されているガーディアンの他エルンスト父の私兵が守ってくれている。

今までそういう恐怖とは無縁にいたのだと初めての宿屋の宿泊を前に緊張してしまっていた。


宿屋に着き受付台にいる主人に話しかける。

最初はこちらを見ておらず雑な対応だったがエルンスト父が用意してくれた服装と立派な馬を見た途端に丁寧な言葉で出迎えてくれた。

これが彼らの世界の日常なのかと知りたくもない現実を教えられた気分だ。


宿屋の部屋につき荷物を下ろした。

父より部屋に着いたら剣の練習をせよと言われている。

腰に下げた剣が歩くたびに金属音がなるのが気になっていたし重かった。

しかし街を出ると言うことは常に危険と隣り合わせであるということなのだと父よりきつく言われた。

カザンは5人兄弟の長男で2歳下に弟も一緒に商いを手伝ってくれている。

カザンがどうなろうとも家の跡取りとしては問題ないのだがエルンストは違う。

カザンにエルンストの元に辿り着く前に負傷でもしたらきっと我が家は街にはいられなくなるだろう。


カザンが部屋で剣を抜く。

剣は飾り気がなく実用向きのものだった。

両刃でずっしりと重かった。

いつも握っている斧より少し重たいくらいだろうか。

斧の場合は長い柄の先端に金属がついており、重さに偏りがある。

その偏りを利用して体を回転するときに発生する遠心力を使って木を切り倒す。

対して剣は全体が重い。

柄も両手で持つと思ったよりも余裕がない感じだ。

街で剣をぶら下げている王国軍から派遣されているガーディアンは日ごろよく見るが、見るのと実際に持つのとでは印象がまったく違っていた。

その剣を一振り二振りと振る。

手からすっぽりと抜けてしまわないように気を付けながら練習を始めた。


練習中父とエルンスト父から受けた説明を思い出す。

「この世界はもうほとんど魔王の手中にあると言ってよい。人々は残り少ない土地にひしめき合って生活しているのだ。」

「それを打ち破るのが勇者なのですよね。」

エルンスト父は首を横に振った。

「いつからか王が勇者育成のための学校を作ると宣言した。

突然のことで重臣たちもさぞかし驚いていた。

名目は勇者育成であるが本意は異なる。

それまで魔王討伐には王や貴族配下の軍がそれを担っていた。

数多くの戦争が行われていたが負け続けて今や王と数名の貴族だけを残すだけになった。

兵士も残りわずかで大規模な戦争は起こせないという。

そんな時に学校が作られたのだ。

噂では王と魔王との間で密約が交わされたと言われている。

”滅ぼすまでの猶予を与えよう。小規模のパーティで魔王軍に挑んでみよ”と。

あれはある意味生贄なのだ。

それでも学校に通えば貴族や有力者の血縁者と知己(ちき)を深めることができる、

勇者になり生贄同然で行かされるか将来の大出世の道を切り開くか。

その天秤だったのだがなぜ勇者を選んでしまうのか。」

エルンスト父は頭を抱えてため息を漏らしていた。

話の続きは父が引き継いだようで父が口を開いた。

「魔物は瘴気より生まれる。

魔物がいるとその場所は瘴気に汚染され空気は淀み、作物は枯れてしまう。

その環境こそが魔物にとって生きやすいのだ。

魔物の強さによって瘴気のレベルは違う、強ければ強いほどより強力な瘴気をまき散らすことができる。

瘴気に長い間触れていると体調を崩すので瘴気の土地には長居は禁物だ。

瘴気を出しているその土地で一番強いものを倒すしかない。

 この辺りは比較的安全だ。夜盗もいない。

しかしここより離れるほど危険は多い。

敵は魔物だけではない、人も襲ってくる。

お前には人を斬るということを知らねばならん。

自分が生きるために剣を奮う。そのことだけを考えるのだ。」


剣の練習を終え剣を鞘に戻す。

体中に汗をかいていた。

”勇者になりたい”、昔エルンストと交わした約束を思い出す。

エルンストはその意思の通り学校に行き本当に勇者になってしまった。

勇者の現実は想像していたのとはまったく違ったがそれでも自分も勇者になれたのだとそれだけは嬉しく感じた。

明日は夜明けとともに村を出る予定だ。

カザンは荷物を整理して体をぬれた布で拭いてからベッドに入った。

宿屋のベッドはふかふかして弾力があった。

これが本物のベッドなのだと感心しながら眠りに就いた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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