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野良勇者と獣人魔法使い娘の魔王討伐  作者: オツタロ


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第37話 カルナのミス

カルナが頭を搔いている。

そして大きなため息を吐いた。


「帰るぞ。」

やや感情の籠った声で言い部屋を後にしようとする。

「ちょっと待て。」

呼び止めたのはヨークだった。

「どういうことか説明してもらいたい。

何がわかったのだ。」


それについては僕も同意見だ。

カルナの2年前に魔王がこの世界に逃げたということと30年前にこの世界に魔王がやってきたということ。

どちらも事実だとするならば辻褄が合わない。

ヨークたちにしてみたらそもそも”魔王が逃げてきた”という話も意味不明だっただろう。


「ここから先に話すことはお前たちの常識を超えた話だ。

それでも聞く覚悟はあるか。

聞いた後で後悔しても遅いぞ。」


カルナはカザンの方を向き

「お前はもうこちら側だ。聞かない選択肢はない。」

微笑む彼女がいる。

僕に逃げ道はないようだ。


彼女は再び3人の方を向いた。

3人とも頷く。

「それならば話そう。」

カルナが元の座っていた位置に戻る。


「私はこの世界とは別の世界から来た。

お前たちに話した幼馴染だとか、北の地方の流浪の民とかいうのはでまかせだ。」

カルナの説明にヨークとヨハンナは特に驚いた様子はない。

「2年前、私は魔王を逮捕した。

やつは私の世界でも都市一つを壊滅させ多くの住民の命を奪った大悪党だ。

捕まえたのはよかったがその後すぐに仲間が奴を逃がしてしまうミスをした。

そして私は再度、魔王を逮捕するべくやつと戦った。

戦いの最後、私が勝っていたが隙をつかれて奴は転移装置を使ってどこかに逃げてしまった。」

カルナが眉間に皺を寄せて悔しそうな表情をしている。

当時のことを思い出しているのだろう。

「その後転移装置は自動で爆破され装置は使用できない状態になった。

私たちは2年の歳月をかけてその装置を直し奴が転移した先の世界を見つけることに成功した。

ここまでは順調と言ってよかった。

・・・私はその装置を単なる転移するだけのものと思っていた。

本来ならば試運転をして動作を検証するべきところを独りその装置を動かしこの世界にやってきた。

魔王の能力は自らの瘴気から魔物を生み出す。生み出された魔物もまた新たな魔物を生み出す。

そうやって無限に下僕を増やすことができる。

2年も経っていると考えたとき早く奴を倒さねばと思ったがそれがミスだった。」

カルナがコップに入った薬草茶を一気に飲み干す。

熱さなど気にならないと言った様子だ。

「だがこの世界では30年前に奴が現れたという。

カザンからも自分が生まれる前にはもう魔物がいたと聞いたとき嫌な予感がしていた。」

「待ってくれ、転移とか別の世界から来たとか訳がわからん。

魔王を捕まえたってなんだ?」

ヨークが困惑の表情で尋ねる。

「だから覚悟がないなら聞くなと言っただろうが。

私だって自分のミスを打ち明けているんだ。質問は最後にしてもらおう。」

カルナがヨークを睨みつけている。彼はカルナの獣の瞳に怯んでしまったようだ。

広くない部屋に5人が居て互いの距離は2,3歩程度、狩人のヨークからしたら目の前に狼がいるような気分だろう。

「奴は転移だけをしたんじゃない。過去の異世界に転移をしたんだ。」

「そんなことが可能なの?」

今後はカザンが問いかけた。

「異世界への転移だけでも公には誰も成し遂げていない。

さらに過去の世界に行くなど私の世界の技術であってもあり得ないレベルだ。

だがしかしそうとしか考えられん。」

「なんでわざわざ30年前の異世界にきたの?

それならカルナの世界で30年前に戻ればよかったんじゃ。」

「時間の論理はまだ未解明だ。

反社会的勢力のやつらにそんな技術があることも信じられん。

しかし私たちが復元した転移装置は奴らの物を模倣している。

この時点で技術力は奴らの方が上だ。

狂った科学者でも身内にいたんだろうな。

転移装置には確かに転移装置としての機能があったことは間違いない。

損傷は激しかったが転移の魔法が組み込まれていることは私も確認している。

だからこそか、転移の機能が使えるようになった時点で完成したと思っていた。

まんまとただの転移装置と勘違いした私は30年間力を蓄えていた魔王に来訪して数分でやられたというわけだ。」

ヨハンナはカルナの話が始まったあたりから彼女の顔をずっと見つめていた。

額に汗をかいてこの中で一番熱心に聞いているようだった。

「質問していいぞ。」

最初に口を開いたのはやはりヨークだった。

「異世界とはなんだ。」

「こことは異なる世界だ。とは言ってもわからんわな。

星は知っているな。空にある星だ。」

「星が何だというのだ。」

「この大地もその星の一つだ。空に浮かぶ星々にもこの大地と同じようなものを持つものがあると言ったら信じるか。」

「ま、待ってくれ、何を言っているんだ。我々が星の上にいるだと?」

「理解できんのも無理はない。お前たちの世界とはせいぜいがこの村と周辺の土地だけだろう。

魔王城だってどこにあるのかすらわかっていないやつらに星の上に生活していると言っても理解できんだろう。」

「待って、カルナ。僕も今まで異世界って聞いてなんとなくのイメージしか持っていなかったけど・・・」

「ワープの魔法は覚えているな。ワープの魔法自体には制約が多いし近距離の移動しかできん。

それを大がかりにして途方もなく遠い場所に転移できるようにしようというのが転移装置だ。

私はそれを使って遠くの星からこの星にワープしてきたのだ。

これが異世界の正体だ。」

空に瞬く星のどれかにカルナが住んでいた星がある。

僕らもまた星の上で生活をしている。

なんという途方もない話だ。

地下施設で見た地図だっていまだに信じられないのに空の星にも世界は広がっているという。

「長距離の転移については私の世界でも活気のある魔法研究の一つだった。

これが実現され誰でも使用できるようになれば移動という概念が覆るからな。

復元された転移装置を見て触れたときに思っていた通りのものができたと思っていた。

それに時間移動の仕組みがあるのだと想像すらしていなかった。」

次に質問をしたのはヨハンナだった。

「なぜ魔王は30年前の過去のこの星に来たのでしょうか。」

「考えられる可能性は私への対抗だろう。

2年前に奴を追い詰めることができたのは私だけだった。

魔王の脅威は私なんだ。

だから追ってくるのも私だと想定していただろう。

ただ戦っても奴に勝ち目はない。

だからこそ時間を稼いで強くなる必要があった。

その為に過去の世界に逃げた・・・と思う。」

最後は推測で締めくくった。

「ではなぜ魔王はカルナさんを倒しに来ないのでしょうか。」

「確定したことはわからん、あくまで推測だがまだ奴は私よりは強くなっていない。

奴が私の力を凌駕しているならばすぐにでも倒しにくるはず。

それが来ないということはまず奴は当時の私ほど強くはないと見ていい・・・と思う。」

魔王はカルナの魔法がレベルリセットされていることを知らないということだろうか。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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