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野良勇者と獣人魔法使い娘の魔王討伐  作者: オツタロ


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第34話 巫女と青年

2人ともこちらを睨んでいる。

背格好は僕たちとよく似ている。


「大鷲様から離れなさい。」

女の子の方が再度警告する。


男の方はよくある村人の格好である。

弓の構えも様になっているので狩人だろうか。

女の子の方は村人というには色の派手な服をまとっている。

裾が長く走ったり、日常の炊事をするのは不便だろう。

頭にも赤と白の縞の紋様の布を巻いている。

きっとこの巨木前にある祭壇の関係者だろう。


「巫女ね。この大鷲を神様かなんかだと思っているんだわ。」

彼女が小声で話す。

「これは私たちの(しもべ)になったわ。」

彼女が彼らに大声で話し掛ける。

「大鷲様を(しもべ)呼ばわりとは不敬である。」

男が怒りの感情が混じった声音で言った。


カルナはふっと鼻で笑う。

2羽の大鷲は僕らと彼らの間を塞ぐように立ち、翼を広げ鳴き声を上げる。

その姿を見て2人は驚き、男は弓の構えを解いた。


「僕たちは敵ではありません。

この大鷲に盗られた杖を取り戻しただけです。」


「その隣の女は何だ。

見た目といい、魔法を使っているように見えたが。」


その言われ方にムッとするカルナ。

大鷲を1羽だけ引き連れて彼らの方に歩いていく。

もう1羽は巣に戻って行く。

そういえば彼らは卵を温めている最中だった。

あまり長時間巣を空けるのはよくない。


「そこで止まれ!」

男が再び弓を構える。

女の子の方は下がり、男の後ろに隠れている。


「当てて見ろ、大鷲様に当たったらどうするんだ?」

「僕たちは敵ではありません。魔法を倒すための旅をしています。」

大鷲の後ろからそれぞれが話す。


大鷲は彼らの前で止まる。

今嘴か足の爪で攻撃されれば避けれないだろう。


「これでわかったか。

私たちはこの鳥を制御できている。」


「まぁカルナ落ち着いて。

僕はタカラヒの街から来ました。

ノキマを通ってこの森に来たところです。」


「ノキマから来たのか!ノキマは無事か?」

女の子の方は隠れていて顔が見えないが、男の方は驚いている。

「先月あたりにノキマから避難してきた人が我々の村にやってきた。

ノキマは魔物に襲われたと。

我々も偵察にいったが街は破壊され、数体の魔物を確認していた。」

「そうです。私と彼女とで倒しました。

今ノキマの街は復興に向けてみんな頑張っています。」

「にわかには信じられない。

家よりも大きな魔物が街中をうろついていた。」

ここが無事なのは大鷲様が魔物どもを倒してくれるからだ。

人間にあれは倒せないだろう。」

そう言って視線がカルナに移る。

「・・・いや、倒せたかもしれんな。」


「自己紹介が遅れました。

僕はタカラヒの街のカザンと言います。

彼女はカルナと言います。」

「カザンとカルナというのか。

2人ともタカラヒというところから来たのか。」

何と答えよう。正直に言っていいのだろうか。

彼女は異世界から来た獣人種で魔法が使えてめっちゃ強いんです。

信じてくれるだろうか。


「・・・」

言葉が出てこない。これ以上沈黙が続くと怪しまれてしまう。

せっかく話ができるようになったのに・・・。


「そうよ。私はカザンの幼馴染なの。

2人ともタカラヒの出よ。」

彼女が平然と嘘をついた。

この場合は仕方がない。正直に言っても信じてもらえないだろう。


「そうか幼馴染であったがこれは失礼なことを言ってしまいすまない。

その・・・彼女の見た目なんだが・・・」

「これ?私の一族は長年流浪の民だったの、北の地方を中心に人里離れた場所に住んでいたの。

彼とは山で出会ったわ。彼の家は薪を作って売ることを生業としていてその山に私たちが隠れ住んでいたってわけ。」

その話に興味が湧いたのか。

男の後ろに隠れていた女の子が顔を覗かせる。


「彼が1人魔王を倒しに旅に出るというので私も付いて行くことにしたの。

元々彼以外に親しい人もいなかったし。」


「そんな事情があったとは。

1人、いや2人での魔王討伐・・・無謀と言いたいがノキマの街を救ったという話、それに先ほどの大鷲様との戦いを見させてもらったが確かにただ物ではないという感じだ。

私はヨークという。彼女は村の巫女でヨハンナです。」

ヨハンナと紹介された彼女が頭をぺこりと下げる。


「ということはこの大鷲様を崇めているということ?」

「そうです。太古よりこの巨木に住み村とこの森を守ってくれています。

私たちは供物を捧げて村の安泰を祈祷しています。」


(大鷲からすると縄張りを守っているだけね。

この村人たちは定期的にえさをくれるから敵とはみなされていないということでしょうね。)

カルナが念話で語り掛けてくる。


「カルナさんが使っていた魔法のようなものはなんでしょうか。

何度も杖が光っているように見えましたが。」

当然そこも見ていたかと思う。

うーむとまたカザンは黙ってしまう。

「私の一族は光を使って相手に催眠をかけることができるの。

この大鷲様にも光を使って催眠をかけさせてもらったわ。

杖が盗られてしまってそれを取り返したら敵だとおもわれちゃったのよ。

不可抗力だったわ。」

彼女がやや顔を下に向けて少し申し訳なさそうな口調で言う。

言いなれていないのがすぐにわかってしまう。


「今卵を温めているようで気が立っているみたいなんだ。」

「そうであったか。巣まで見ているとはさすが。

我々の村では禁忌な行為であるが村の外から来たのなら仕方ない。

このことは村人には黙っておくことにします。」

助かりますと言い頭を下げた。


カルナとカザンは池に荷馬車を置いてあるので取りに行くといい、ヨークとヨハンナとは祭壇で祈りを捧げると言ってその場にとどまった。

再度祭壇前で落ち合う約束をして別れた。


池に向かう途中2人で馬に乗りながらカルナに話しかける。

「自分のこととか、魔法の説明とかって前から考えていたの?」

「ええそうよ。ずっと姿を隠して過ごすのも限界がくるでしょうし、この体のことも服で隠すだけではいずればれるでしょう。

魔法も人前でやたらと使うことはないでしょうけど全く使えないのも不便だしね。」

さすが先のことまで考えての発言だったのか感心した。

幼馴染と言われたときはドキッと胸の鼓動が大きくなったがその後のすらすらとした話にすっかり聞き入ってしまった。

「獣人の件が怪しまれないか心配だね。

行商人みたいに世界中を旅しているような人たちだとばれるかもしれない。」

「その心配は少ないんじゃない。

この世界は魔王によって地域が分断されて結構経っているみたい。

お互いがお互いを滅んだと思っているくらいに交流がない。

行商人と言ってもそれほど広い地域で商売をしていないでしょう。

怪しまれたら”世界のどこまで知っているんだ”って言ってやったらいいわ。」

彼女はセリフに合わせて人差し指をビシッと前に突き出す。


池の畔まで戻ってきてカルナは早々にカルナは荷馬車に乗り込んだ。

自分で幌を下げて中を見えないようにしてから魔法を発動させる。

荷馬車全体が淡く光った。

その間、馬に水を飲ませて荷馬車とつなぐ。

幌を開けた彼女はノキマで見たときのようないいところのお嬢さんの服になっていた。

「流浪の民で山に隠れ住んでいたっていう話だからその服装だと怪しまれちゃうよ。

どう見たって街で有数の商家の箱入り娘って感じがする。」

そう言われてむむむと眉間に皺を寄せ、どこか腑に落ちないという感じの表情だったが黙って幌を再びおろして魔法で着替え始めた。

次に現れた姿が平凡な村人という出で立ちになっていた。

これなら自分と並んでいても違和感がない、と彼は首を縦に振った。


元にいた道に戻りそのまま荷馬車を進ませる。

途中分かれ道になっているところを曲がると巨木が見えてきた。

そこには祭壇の前に跪いて祈りを捧げるヨハンナとその後ろに立って周りを警戒しているヨークの姿があった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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