表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
野良勇者と獣人魔法使い娘の魔王討伐  作者: オツタロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/38

第29話 杖を取り戻せ

2人で鍋に入ったスープを空にしてしばし休憩している。

カルナも落ち着いてきたようで木にもたれている。

「そういえば予備の杖とかはないの?」

カルナはそういうのを収集するのが好きなようで家に何個もあると言っていた。

「あるのはあるんだけどね。取り出せないというか取り出しづらいというか、探しづらいというか・・・」

歯切れが悪い言い方である。

「倉庫魔法に全部の道具を入れてあるの。

全部入っているから数が多すぎてどれがどれだかわからないのよ。」

「普段はどうやって取り出しているの?」

「杖にそういう機能があってほしいものを頭でイメージして倉庫魔法を使うとそれが自動で出てくるの。

曖昧なイメージでも適切なものが出てくるからすっかり杖に頼り切りになっちゃって。」

「その倉庫って覗けたり、入ったりできないの?」

「それはよくある死亡事故の一つね。

倉庫って言っているけど現実の倉庫じゃなくてあくまでも魔法で作った異次元空間なのよ。

現実世界とは違う世界って言うのかな。顔を入れただけでも死んでしまうわ。

取り出すときは探すというかイメージすると向こうから出てくるって感じかな。

当たり前のように使っているから説明するとなるとむずいわね。」

軽い溜息をついてカルナは立ち上がる。

「とりあえず着替えてくる。」

背中を向けると木の裏側に回りこんだ。

「覗かないでよ。」

わかっているよ、と言い僕は焚火の片づけを始めた。


着替えは難航したようでイメージ通りの服が取り出せなくてカルナは文句を口にしていた。

「この服ダサいわね。」

「こっちにしようかしら」

「なんで服が出てこないのよ!」

木の裏からぽいっぽいっとカルナの私物が放り出されている。

最後はしぶしぶと言った感じで着替えをしていた。


木の裏から出てきた彼女は一人の町娘の格好になっていた。

一枚の布で作られたワンピースの服を身に着けている。

長袖に裾も長い。どこからどうみても一村人と言った見た目である。


「似合っているよ」と言うと。

「嬉しくない」と憮然とした顔で返された。

女心は複雑だと感じた。


「杖のことなんだけど取り返さないといけないよね。」

「取り返したいけど取り返す方法はあるの?」

上目遣いで眉毛をㇵの字にしている。

普段からこれくらい塩らしければみんなから好かれるのにもったいないと思う。

「ああいう鳥は縄張り意識が強いからこの辺りを縄張りにしていると思う。

だからこの辺りであの鳥を見かけたら杖を持っていったやつだと思って間違いないと思う。

それに木として持っていったと思うから巣の材料に使っているんじゃないかな。」

「私の大切な杖をその辺の枝と一緒に扱うなんて。許せないわね。」

「どこか見晴らしのいいところで空を見ていたら見つけることは可能だと思う。

縄張りは広いから巣を特定するのは大変かもしれないけどね。」

カルナはうんうんと頷いている。イメージができているようだ。


そんなときカルナが空を見て「あっ!」と声を上げた。

カザンもつられて上を見る。

そこには悠々と空を飛んでいるあの鷲がいた。

鷲はそのまま視界から消えるように飛んでいく。

すぐさま彼は走り出した。

カルナは自分に強化魔法をかけて走り出す。

彼女自身も転移前は命の危険が伴う現場で犯人逮捕をしていた。

当然走ったり跳んだりと体を動かしていた。

魔法の力に頼ることが多いがそれでも基礎体力には自信があった。

それでもカザンの走りの前にはまったくと言っていいほどついていけていなかった。

(これはきっと服装が悪いからに違いない。走ろうというのに裾の長いワンピースなど運動に適しているとは言えない。

それに靴もよくない、ノキマの街からもらってきた革製の柔らかい靴だが私の普段使っているスニーカーと比較すると運動性能が悪すぎる。)

そんなことを思っていたせいかカザンの背中がより一層遠くなっていく。

待ってくれと声に出すがかすれて声がでない。

しまいには彼の姿が見えなくなってしまった。

それに絶望して足を止めてしまう。


たった一人で森の中に放置されてしまった。

池に戻ろうかと思って振り返ったが方向があっているか不安になる。

さっきまでここを走っていたはずなのに自分がどこにいるのかわからない。

周りを見てもすべて同じ景色に見える。

不安という言葉が彼女の心に大きくのしかかっている。


これは天罰なのだろうか。

今まで独りでなんでもやってきた。

獣人らしさがあまりなく、かと言って人間種とも違う。

どちらのグループにも属することができず学校生活では苦労した。

それでも勉強だけは頑張った。

実力で見返す。

見た目だけで判断し仲間外れにするようなやつらと私は違う。

学校ならばテストの成績、大学ならば講義の単位数と評価。

誰とも群れない孤高の存在でありつづけた。

学生生活は飛び級で進級したため普通の学生が過ごすようなイベントは特になく思い出も勉強に関することだけだ。

就職では警察学校に入りその後重犯罪対策チームに所属した。

そこでも持ち前の頭脳と魔法の強さで成績を上げていったが同僚に仲間意識を覚えることはなかった。

犯罪者を追い詰め逮捕する。そのことに生きがいを見出す日々。

キャリア組であったが現場職を望むという異例の配属願い。

そもそも正義のために警察組織に入ったのではない。

このどうしようもない負の感情、そして他の追随を許さない魔法の強さ。

それを発散し力を証明したかった。

殉職率の高い職種であった為異例の配属願いは聞き入れられた。

成績を上げれば上げるほど仲間との距離が開いていくような気分になる。

仕事なのだからそれでいい。職場は仲良しごっこをするところではない。

そう言い聞かせていたら本当に交友関係がない、休みの日は誰とも会わないような生活を送る日々を過ごすことになっていた。


これはそんな私への罰なのだろう。

独り森の中に放置されてどれくらい経っただろうか、それほどまだ時間は経過していないかもしれない。

強化魔法はとうの昔に効果が切れてしまったがもう一度魔法を使う気にはなれなかった。


「カルナ・・・カルナ!」

誰かの声が聞こえる。

遠くから聞こえてくる。

肩を掴まれる感覚で顔を上げた。

そこにカザンがいた。

「ごめん、一生懸命追ったんだけど足だとどうしても追いつけなくて見失っちゃった。

カルナもいなくなっていて戻ってきたんだ。」

彼は肩で息をしている。

ここに戻ってくるまで全力疾走だったのだろう。

「それでね。走っている途中で次の作戦を考えたんだ。一旦戻ろう。」

そういってカザンはカルナの手を握って歩き出した。


今カルナはとても落ち込んでいる。

強力な魔法が使えることが彼女の自信であった。それが今崩壊している。

杖は単なる木ではないということだ壊れていたら治るのだろうか。

たとえ手元に戻ってきても使えないことを心配しているのかも。

今までの悪態もそういう”弱さ”を見せたくないという強がりだったのかもしれない。


そんなことを思い池の畔まで歩いた。


「追っていてわかったんだけどこの辺りに高い木とかがないね。

見失ってから木に登ってみたんだけどどれも似たような高さの木ばかりで遠くまでは見えなかった。」

そうなのか、と彼女は呟く。

「作戦にはカルナの力が必要なんだ。」

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブックマークしていただける執筆の励みになります。

他にも投稿していますので読んでいただけましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ