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野良勇者と獣人魔法使い娘の魔王討伐  作者: オツタロ


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第21話 魔法の素養

魔物の討伐が終わりカルナと休憩していたところ聖堂の地下から人々が出てきた。

聖堂の変わり果てた姿に呆然としている。

カルナが透視したとおり50人ほどしかいない。

村の牢屋にいた人数を足しても100人にも到底届かない。

どれほどの人が亡くなり、またどれほどの人が奴隷として売られていったのか。


「復興に関しては村にいる勇者を連れてきた方がいいわ。

彼らに任せつつ私たちは次の土地に行きましょう。」

カザンは彼女の提案に頷いた。


代表者と思われる初老の男性が近づいてきた。

「あなた方があの化け物を退治してくれたのか。」

「はい。グリフォンは倒しました。」

「ぐりふぉん、そういう名前のやつだったのか。突然空から現れて町中を火の海にした。

そしてゴブリンを生み出し人々を襲った。

私たちはこの聖堂の地下に隠れたがそれも地獄だった。」


破壊された街並みを見る。

人影一つなく瓦礫となった家、半壊してかろうじて形を保っている家など凄惨な光景が広がっていた。


「山を越えて逃れた人も何人かいます。その方々を呼びに行ってきます。」

奴隷になって人身売買されてしまった人のことは言わないでおいた。

これ以上悲しい話は聞かせるべきではないと思う。

今はただ前を向いて進んでほしい。

「それは助かる。この人数では復興もままならん。」

「合わせて王都にも連絡を入れれば復興の支援をしてくれると思います。」

「何から何まで済まない。私たちはさっき目が覚めたところでね。

正直どれくらい意識が昏倒していたのかわからないんだ。

魔物の放つ瘴気を吸ったせいでほとんど動けなくなっていた。

もう終わりだと思ったとき天から声がしたんだ。

すると身体が軽くなって地下から出ることができた。」

きっとカルナの浄化魔法のおかげだろう。

彼女がやったことだと堂々と言いたかったが魔法を使えるとなると新たなトラブルが発生するだろう。

きっと名乗り出ることも彼女はしないだろう。

今も後ろの方で1人の町娘としてあたりを歩き回っている。

「お名前を教えていただきませんか。」

「・・・カザンと言います。」

「勇者様ですよね。」

「・・・すみません。正式な勇者ではなくて、その・・・野良勇者というものです。」

「野良・・・勇者。」

やはりまずかったか。野良勇者、勇者と言っているが正式に認定された存在ではない。

夜盗と似たようなものと思われても仕方ない。

「さすらいの騎士様ですね。」

初老の男性が微笑んだ。

なんて気品のある言葉だ。これからはそういう風に名乗ろうかと思う。


村に帰るためカルナと2人で街を後にした。

もうすぐ夕方になろうとしている。

朝早くに出発して街についてそれからグリフォンを退治した。

一日で成し遂げたとは到底思えないほど濃い一日になった。


荷馬車を隠したあたりに着いた頃にはすっかり夜になっていた。

明りはカルナの魔法で空いっぱいに篝火が灯っていたので幻想的で光景で且つ明るかった。

荷馬車を覆っていた土をどける。

朝に隠したばかりなので何一つ変わっていない。

荷馬車から食料を下ろして食事の準備をする。

「そうだ馬はどうしようか。魔法で場所がわかるんだっけ。」

「カザンでも呼べるようにしておいたわ。呼んでみて。

馬のことを考えて強く念じるの。ここに来いってね。」

言われたままにやってみる。

瞼を閉じて馬のことを考える。

靄のようなものが見える。馬の外観を思い出す。

(たてがみ)が風になびく様、悠々と草原を走る姿。

馬の背に乗った感触を思い出す。

一体となったような感覚。

“来い”と念じた。


カルナが彼を獣の目で凝視していた。

彼女は食事の用意をする振りをして横目で彼の様子を見ていた。

彼が瞼を閉じて集中し始めてからは食事の準備を止め彼だけを見ている。


”この世界には魔法はない。”

彼もあの勇者一行もそう言っていた。

”今”と”過去”魔法が存在しないのは事実なのだろう。

勇者学校に通い、裕福な家庭で育った彼らが知らないのであれば過去にもなかったと考えるのは妥当だ。

しかしそれはこの世界に魔法が存在しない理由にはならない。

この世界の文明は遅れている。

電気を工業利用できていない。

それどころか大規模な工業というものが存在していない。

ガソリンを使用した内燃機関もなければ蒸気を利用した蒸気機関もない。

彼らが電気を雷以外に知らず魔物がそれを魔法として使ったのなら電気も魔法と言うだろう。

まだ彼らは人が操ることができる超常の力、魔法を知らないのだ。

ゆえに彼らに魔法の素養がないわけではないのだとそれを確認したかった。

彼には馬に着けた発信魔法を検知する魔法を感じ取れるようにした。

しかしそれは通常の人ならばできることではない。

素養がなければ呼ぶことなどできない。

どうなのか。彼はどこまで強くなれるのか。

私は彼に期待してしまっていることを自覚する。

一介の貧しい商人の倅だと本人は言っているがそれですべてが決まってしまうものではない。

人には本人すら気づいていない才能がある。

時には限界を超えることすらできる。

すでに彼は強化魔法なしにボスゴブリンを屠ることができるようになっている。

たった数日で驚異の成長と遂げている。


カザンがゆっくりと瞼を開けた。

天を見るようにして顔を上げ、右の方を向いた。

カルナもつられて同じ方向を見る。

その方向から走る音が聞こえる。

馬のひづめの音だ。

カザンは笑顔になり、カルナは目を見開いた驚いた。

朝に別れた馬は主人の姿を見つけると側により鼻づらをカザンの顔にこすりつける。


彼には魔法の素養がある。

焦ってはいけないゆっくりと着実にその才能を育てなければならない。

魔王を倒すだけというどこかつまらないと思っていたこの旅にもう一つの楽しみを見つけた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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他にも投稿していますので読んでいただけましたら幸いです。

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