第17話 勇者の旅の終わり
「山賊ごときに勝てなかったあんたたちがどうやってこの先やっていくのよ。
この先の旅は私とカザンに任せなさい。
あんたたちはこの村の残務処理が終わったら各自家に帰ればいいわ。
親御さんも心配しているでしょ。」
「そんなことはできない。たとえ戦力になれなくても苦しむ人々を放っておけない。」
エルンストが反論した。
「戦力ならないって自分でわかってんじゃん。そんなの何人いても意味ないわ。」
「私たちは6年間訓練してきたの。軽薄な決意とは違うわ。」
クロエが割って入る。
他のメンバーも頷いている。
「何年やろうが結果がでないなら同じよ。ここは学校じゃない。結果がすべてなの。
山賊に負けたあんたたちの結果がそれってことよ。」
エルンストたちはこぶしを握り締めて悔しそうな表情だ。
「カルナ、言い方がひどいよ。そんな言い方は周りを傷つけるだけだ。」
「あなたはどっちの味方よ。私はこいつらのことを思って言っているのよ。」
「言い方だよ。僕たちも出会って日が浅いけどさ。それだと友達出来ないよ。」
彼女はそっぽを向いてしまった。
カザンは席を立ち部屋の隅に置いていたリュックの中から手紙を取り出した。
「これはみなさんの親から預かった手紙です。
僕は皆さんをそれぞれの実家に戻るように説得するために来ました。
エルンスト、君のお父さんはとても心配していた。戻って顔を見せないといけないよ。」
手紙をそれぞれに渡す。
封を開けて手紙を読み始める。
最初に泣いたのはクロエだった。
その場で座り込み子供のように泣き出した。
エルンスト、アインザック、ザッハは静かに涙を流していた。
その後彼らは各自部屋に戻って続きの話は翌朝にすることになった。
カザンも部屋を後にしようとすると
「何出て行こうとしているのよ。」
「え?僕の部屋は別に用意されているみたいだし。」
「ここで寝なさい。」
そう言ってベッドにあった掛布団を床に置いた。
「私は魔法をたくさん使ったから疲れているの。
深く眠ってしまうからあなたが守るのよ。
村人の中に夜中に襲ってくる輩もいるかもしれないわ。いいわね。」
「僕も結構疲れているんだけど。それならエルンストたちも呼んだ方がよくない?」
「あなただけで十分よ。今日の戦いでもカザンが山賊を倒したんだから一番強いカザンが私を守るべきだわ。」
そう言ってカルナはベッドに横になってしまった。
彼は床に布団を敷いて眠りについた。
翌朝、眠りから目が覚める。
床に寝たとはいえ上等な布団を敷いていたおかげで体は痛くない。
村の広場に行くと昨日の宴会の後がまだ片づけられずに残っていた。
井戸のところに行き水を汲む。
地下水の為まだ冷たいがそれで水浴びをした。
エルンストたちも広場に集まる。
みな鎧を脱いでおり普段着を着ている。一目見て一介の村人とは違う気品のある出で立ちだ。
「おはよう」とみんなと挨拶する。
「昨日は取り乱してすまなかった。どうしても諦められなくて。」
「仕方ないと思う。それでも僕としても一度は家族の下に帰った方がいいと思う。
それにエルンストたちにはエルンストの立場でないとできない事ってあると思うんだ。」
「適材適所ってやつだな。」
アインザックが答えた。
彼がカザンの肩に腕をまわす。
「話がわかるじゃないか。
俺たちには俺たちの方法で貢献する方法があるはずなんだ。
剣を奮うだけが魔王に対抗するやり方じゃない。そうだろ?」
エルンストに問いかける。
「昨日一晩考えてそういう道もあるんじゃないかとは思うようになってきた。
この村のこともきちんと終わらせないといけないしね。
相手は魔王だけじゃないんだと気づかされた。」
アインザックが飯にしようぜと威勢のいい声をあげた。
カルナが起きてきたのは昼前になってからだった。
やはり昨日の疲れのせいだろうか。
ベッドで起き上がるカルナに朝食を差し出す。
「朝ご飯の残りだけど食べる?さきに顔を洗いに行く?」
カルナは寝起きのままベッドから出て何やら呪文を唱える。
カルナの体のてっぺんからに輪が現れそれが下に移動していく通過する瞬間に時折火の粉が爆ぜるものが見えた。一度目が終わってすぐに同じ輪が現れてもう一度カルナの足元まで通過した。
「何したの?」
「体を洗ったの。昨日は疲れていてそのまま寝ちゃったからね。」
「水浴びとかしないんだ。」
「風邪ひいたらやだもん。
ところであなた結構匂うわね。」
そう言われて自分の服の匂いを嗅いでみるがわからない。
「朝に井戸水で水浴びしたからきれいだと思うけど。」
「それはきれいって言えるのかしら・・・」
カルナがさっき唱えた呪文を再度唱える。
すると彼の頭の先端から光の輪が出現しカルナ同様にそれが上から下に移動していく。
彼女の時と違うのは輪が通過する瞬間に爆ぜる火の粉が多かったことだ。
2回輪がカザンの体全体を通って消えた。
「どう?すっきりしたでしょ?これで服も体もきれいさっぱりよ。」
「火の粉みたいなのがバチバチ言っていたけど・・・あれは何?」
「あれが汚れよ。浄化してきれいになったわ。」
改めて自分の体の匂いを嗅いでみるカザンだが違いがわからず首を傾げるのだった。
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