第14話 勝負
「なんだてめぇらは」
怒り顔の山賊のリーダーのゴモラがこちらに歩いてくる。
「高見見物している間にお仲間倒しちゃったわ。」
カルナが意気揚々と話す。
「誰だおめえは。面を見せろ!」
「断るわ。あんた程度に顔を見せるほど落ちぶれていないのよ。」
「いい度胸じゃねーか。命は要らないってことだな。」
「こっちは命の保証してあげるから感謝なさい。」
「てめえら。やっちまえ」
ゴモラの怒号が響き渡る。
周りに控えていた者たちが武器を持ってこちらに向かってくる。
「あんたたちって魔法が怖いんだってね。
それならこれはどうかしら?」
カルナは杖を高く掲げて言い放った。
「篝火」
すると広場一帯に火の玉が浮かび上がった。
山賊たちはそれを見て慌てふためき武器を捨てて逃げていく。
ゴモラの顔も怒りの顔つきから青ざめた恐怖におびえる表情になった。
「そこの女は魔物なのか・・・」
カルナは無言のまま何も答えない。
次第にゴモラが興奮してきていた。
「あの時の借りを返してやる。」
目がキマッている。カルナめがけて突進する。
その手前でカザンが間に入り剣で受け止めた。
強化しているカザンが圧されている。
このまま力負けしそうになった瞬間、ゴモラが力を抜いた。
突然のことに体が付いて行かず前のめりになって重心がずれた。
ゴモラはさらに後ろに2歩下がる。その一瞬の間に腰にぶら下げていた小袋に手を入れて中身をカザンの顔にかけた。
振りかけたものは砂であった。
カザンは思わず目をつぶってしまう。
その隙を逃がさず彼は剣を繰り出した。
目が見えなくなったカザンはそれを防ぐことができない。
剣を構えるがゴモラの剣とはかち合わない。
「あっ」
カザンが叫ぶと同時に体が後ろに吹っ飛んだ。
両足で何とか踏ん張り転倒せずに済んだ。
横にカルナがいる。
カルナが魔法で引っ張ってくれたようだ。
「あいつ強いわね。」
いつも素っ気なく何事にも興味なさそうな彼女の目が獣が獲物を定めるような目つきになる。
ゴモラがこちらに向かってくる。
カルナが前に出る。
杖を水平に構えて詠唱する。
「風よ刃となりて切り裂け、ウィンドブレード」
とたんに風がゴモラに向かって吹く。
ゴモラは見えないはずの風の刃を撃ち落としていく、それでも彼の速度に緩みはない。
「地面よ沼となれ」
ウィンドブレードと同時にゴモラの足元が瞬時にぬかるみになった。
しかしそれすれもゴモラは跳躍で回避する。
「動きが読まれている・・・!」
彼女の顔が焦りに変わる。
「壁よ我を守り給え!」
杖がまたしても光カルナの前に土の壁が突如として出現する。
これなら防げるはずと思った。
ゴモラはその壁に着地すると再度跳躍する。
「俺の必殺技だ、食らえ、千本突き」
空中で壁の前で彼はその右手から無数の突きを繰り出した。
壁が崩れていく。
亀裂が1本、2本と入って数秒と持たない内に壁は瓦解した。
その衝撃でカルナのフードがめくれ上がり獣の耳が露になる。
ゴモラがカルナの目の前に降り立った。
強い。これが勇者の実力なのか。
エルンストは首席で卒業したと言った、その彼が負けた相手。
カルナは学校と実戦は違うと言っていた。学校の試合はどこまでいっても試合でしかないと。
「失せな魔物」
言うと同時に剣をカルナの胸めがけて突き刺した。
その剣が弾き飛ばされる。
カルナの左手が剣を弾いた。
現れるは野獣のごとく毛でおおわれた腕。爪が魔法で強化され長く伸びている。
「この距離だと避けれないわよね。」
そう呟いたカルナは5本の指から伸びる爪でゴモラを切り裂いた。
剣で受けるが吹き飛ばされるゴモラ、体勢が崩れて空中に投げ飛ばされている。
その隙を逃すまいとカルナの斬撃が2度3度と振り払われる。
体勢が崩れた彼はそれを防ぐことができず地面に着くまでの間風の刃で切り裂かれる。
最初ゴモラが立っていた位置まで吹き飛ばされ地面に倒れこむ。
何とか立ち上がっているが体中から血が噴き出していた。
「やっぱり魔物じゃねーか。魔法もその見た目も、どれをとっても魔物じゃねーかよ。」
傷だらけのゴモラが笑っている。
まだ負けていないと言わんばかりだ。
「あいつらを連れてこい!」
部下たちが奥のエリアから何かを連れてくる。
それは女性たちであった。この山道を通ろうとして攫われた女性たち。
数は10人。
逃げられないように手や足に鎖が付けられている。
2人で1組になるようになっている。
これでは運よく隙をついて逃げようにも2人の息が合っていないと走ることもできないだろう。
みんな暴行を受けた跡があり体中に傷やあざがある。
それがゴモラの足元に並べられた。
「お前が人間なら同じ人間は殺せねーよな。
おい、魔物の横にいる男、その魔物の首を刎ねろ。
首くらい刎ねておかないと本当に死んだかわからねーからな。
早くしないとこの女たちを1人ずつ殺す。」
カルナの目が怒りに染まっていた。
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