気づかれた
女のときだけ人生がうまくいく件 〜拾った指輪でTSした俺の二重生活〜
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私は、ゴミ置き場の前で立ち尽くしていた。
(……そういえば毎回、会ってる)
なのに、昨日までは気づかなかった。いや、気づけなかった。
(……これが彼女の能力か?)
背筋が冷える。視線を落とすと、ゴミ袋を持つ手がわずかに震えていた。
(……気づかせないようにしてる?)
思考が、ゆっくりと形を成す。
(存在そのものに違和感を持たせない)
(記憶に引っかからないようにする)
(だから――何度会っても、“初対面になる”)
喉が渇く。うまく言葉にできない。
でも、本能が理解していた。
(……普通じゃない)
ただ周囲に溶け込んでいる、というレベルじゃない。もっと奥のほうに、触れてくる。認識。記憶。触れちゃいけない部分に。
(……ヤバいな)
思わず心の中で呟く。
あの女は、ただこの世界に適応しているわけじゃない。
周囲の“感じ方”そのものを、歪めている。
だから――誰も、疑わない。
誰も、覚えない。誰も、“気づかない”。
(……でも)
そこで、ふと気づく。
(……なんで、俺は気づいた?)
その瞬間、ぞくりと背後に気配を感じる。
「――あの」
声。振り向くと、そこにはいつものようにベビーカーを押した、あの母親が立っていた。
「朝早いですね」
初めて会ったかのような、柔らかい笑顔。
だが、今の私にはわかる。
(……こいつ、本当に初対面のつもりなのか?)
(それとも――)
心臓が、強く鳴る。
(……気づいてて、“こうしてる”?)
一瞬、迷う。逃げるか、それとも――
「……毎週、会ってますよね」
口が、勝手に動いていた。
言った瞬間、しまったと思う。空気がわずかに止まる。本当に、一瞬だけ。
エレナの動きが止まった。まばたきが消える。笑顔も消える――無表情。
いや、違う。“空白”。何もない。感情が抜け落ちたような顔。ぞくりと背筋が凍る。
次の瞬間。
「……え?」
首をかしげ、いつもの柔らかい表情に戻る。
「初めてお会いしましたよ?」
何もなかったかのように微笑む。
だが、今、確かに見た。
(……今の、なんだ)
あれは演技じゃない。取り繕った顔でもない。もっと――内側、本来の“何か”。
「すみません、人違いでした」
とっさにそう返す。それが正解だと本能が告げていた。
これ以上、踏み込むな。関わるな。――危険だ、と。
「そうなんですね」
エレナは、くすりと笑う。何も知らない母親の顔。ベビーカーをゆっくり押していく。
その背中を、目で追う。
(……今の一瞬、気づいたのは、あっちも同じか?)
喉がひどく乾いていた。――関わってはいけない。
そう理解しているのに、視線が離れない。
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