能力の使い道
私は小さくつぶやいた。
「観察」
すると、また視界に文字が浮かび上がる。
【観察】
対象:ユウ
危険度:低
弱点:女性
「……」
私はしばらくその文字を見つめた。
「……なんだこれ」
リリィが横から顔をのぞき込んでくる。
「どうだった?」
私は慌てて視線をそらす。
「いや……なんでもない」
リリィが怪しそうに目を細めた。
「絶対なんか出てる」
私は軽く咳払いする。
「まあ……弱点は出た」
「え!」
リリィの目が輝く。
「なになに!?」
私は一瞬迷ったが、結局ごまかすことにした。
「……いや、たいしたことじゃない」
「ちょっとした体の癖みたいなものだ」
リリィは腕を組んで、じっとこちらを見る。
「怪しい」
「絶対言ってないことある」
私は視線をそらした。
「気のせいだ」
リリィはしばらく疑うように見ていたが、やがて肩をすくめた。
「まあいいけど」
私は内心で小さく息をつく。
(……危ない)
弱点が女性に弱いなんて、わざわざ言う必要はない。
私は空を見上げてため息をついた。
「……この能力、余計なことまで出すなよ」
だが同時に思う。
「まあ……役に立つのは間違いなさそうだ」
危険度や弱点がわかるなら、戦闘でも有利になる。
私は気持ちを切り替える。
「よし」
「とりあえず依頼行くか」
リリィも元気よくうなずいた。
「うん!」
私たちは中央商店街へ向かって歩き出した。
そのとき――
ふと視界に人影が入った。
私は何となく、その人物に観察を使ってみる。
「観察」
すると、また文字が浮かび上がった。
【観察】
対象:???
危険度:中
特徴:スリ常習犯
「……」
私は足を止めた。
リリィが振り向く。
「ユウ?」
私は小さくつぶやく。
「……なるほど」
「この能力、こういうのもわかるのか」
少し前を歩く男を見る。
男は人混みの中を歩きながら、さりげなく周囲を見回している。
私は小さく息を吐いた。
「……ちょうどいい」
リリィが首をかしげる。
「?」
私は男の方へ歩き出した。
リリィが慌ててついてくる。
「ユウ?どうしたの?」
私は男から目を離さず、小さく言った。
「ちょっとね」
「怪しいやつがいて」
リリィもその男を見る。
男は人混みの中を歩きながら、前を歩く商人らしき男の後ろについた。
そして――
さりげなく手を伸ばす。
商人の腰のポーチへ。
私はその瞬間、男の手首をつかんだ。
「おっと」
男の体がびくっと止まる。
「な、なんだてめぇ!」
私は落ち着いた声で言った。
「それ、返したほうがいいんじゃないか?」
男の手には、いつの間にか小さな財布が握られていた。
男の顔が歪む。
「し、知らねえよ!」
私はため息をつく。
「いや、今取っただろ」
男は手を振り払おうとする。
「さっさと離せ!」
だが私は手首を軽くひねった。
「いてててて!」
前を歩いていた商人が振り向く。
「ん?」
私は財布を取り上げ、商人に見せる。
「これ、あなたのですよね?」
商人はポーチを確認して、目を見開いた。
「おお!それだ!」
「さっきまで入ってた!」
周りの人たちもざわつき始める。
「なんだ?スリか?」
「捕まえたのか?」
男は焦り始めた。
「ち、違う!これは……!」
私は男の腕を離さない。
そのとき――
商店街の警備をしている兵士が近づいてきた。
「どうした?」
私は男を軽く押し出した。
「この人、スリです」
兵士が男をにらむ。
「……ほう」
男は完全に青ざめた。
「ま、待ってくれ!」
兵士は男の腕をがしっとつかんだ。
「話は詰所で聞こう」
男はそのまま連れていかれた。
周りから拍手が起きる。
「兄ちゃん、すごいじゃないか」
「よく気づいたな」
商人が頭を下げた。
「ありがとうございます。助かりました」
私は軽く手を振る。
「たまたま見えただけですよ」
そのとき。
リリィが私の服を引っ張った。
「ねえユウ」
「ん?」
リリィは、さっきの男が連れていかれた方を見ている。
「さっきのひと……なんか、へんなかんじした」
私は少し驚いた。
「へんな感じ?」
リリィはうーんと考えてから言う。
「うーん……なんかね」
「わるいことするひとのにおい、みたいなの」
私は思わず苦笑する。
(直感か……)
「まあ、そんな感じだな」
リリィは胸を張る。
「リリィ、わかってたよ!」
「でもユウのほうがはやかった!」
私は肩をすくめる。
「まあな」
「……ほら、依頼行くぞ」
「商店街の荷物運びだ」
リリィはすぐ元気になる。
「おにもつ!」
「リリィもてるよ!」
「ちっちゃいの!」
私は依頼票を見る。
「えーと……中央商店街の雑貨屋か」
前を見ると、商店街の奥に少し大きめの店が見えた。
店の前には、大量の木箱が積まれている。
私は思わず止まった。
「……」
「まさかこれ全部か?」
リリィは目をキラキラさせる。
「たからばこみたい!」
「いっぱい!」
私は空を見上げた。
「……これ全部やらなきゃいけない感じか??」
そう思いながら――
私は木箱の方へ歩いていった。
リリィ「ユウの弱点わかった!!!」
ユウ「ッ、な、なんだと思ったの?」
リリィ「リリィのしっぽ!!いつもチラチラみてくるもん!!」
ユウ「あぁ、そうだよかわいいからね(ばれなくてよかった、、、)」




