指輪アップデート②
二つの指輪が触れた瞬間だった。
ぱっと、白い光が広がる。
思わず私は目を細めた。
次の瞬間――
頭の中に声が響いた。
『部分アップデートを開始します……』
リリィがびくっと肩を震わせる。
狐耳もぴんと立った。
だが、その声はすぐに続いた。
『……完了しました』
一瞬だった。
あまりにも早い。
私は思わず声を出す。
「え、はやっ」
リリィが私を見上げる。
「おわったの?」
「……みたいだな」
そう答えた瞬間、視界の端に文字が浮かんだ。
【プロフィール】
名前:ユウ
状態:正常
年齢:21
体力:E
筋力:E
敏捷:E
耐久:E
身体能力:低
特技:ブースト
機能:危険感知・黒石感知
世界番号:1032(登録済み)
世界番号:532(適応済 27%)
世界番号:175(適応中 18%)
私は表示を眺める。
「……ん?」
一つ、見慣れない項目が増えていた。
世界番号:1032(登録済み)
「1032……」
少し考えて、すぐに気づく。
「なるほど」
リリィが首をかしげた。
狐耳も一緒に傾く。
「ユウ?」
「この番号」
私は表示を指さす。
「たぶん、俺が元いた世界だ」
リリィはきょとんとした顔をする。
「もとのせかい?」
「そう」
私はうなずく。
「1032は――たぶん地球だな」
リリィは「ちきゅう」と小さくつぶやいた。
その時だった。
再び、頭の中に声が響く。
『システム通知』
私は表示に目を向ける。
『アップデートにより機能が追加されました』
続けて、淡々とした声が告げた。
『今後、転移する際――』
『転移先を選択することが可能になりました』
私は思わず眉を上げる。
「選択?」
声は続いた。
『ランダム転移』
『または』
『過去に転移したことのある世界』
『どちらかを選択可能です』
私は表示を見つめた。
1032。
532。
175。
つまり――
今の時点で、三つの世界に行けるということだ。
「……へえ」
思わず小さく笑う。
「それは便利だな」
リリィが袖を引いた。
狐耳がぴこぴこ動いている。
「ユウ」
「それって」
「わたしのせかいにいけるの?」
私はうなずいた。
「たぶんな」
リリィの狐耳がぴんと立つ。
「やった!」
私はもう一度、表示を見る。
三つの世界。
そして、この指輪。
思っていたより、ずっと便利な道具らしい。
とはいえ――
今日は色々ありすぎた。
世界移動。
指輪。
アップデート。
頭の中で整理するには、少し情報が多すぎる。
私は小さく息を吐いた。
「……まあ」
「今日はもう休もう」
リリィがベッドの上でこくんとうなずく。
狐耳もぴょこんと揺れた。
「うん」
私は窓の外を見る。
外はもう夜だった。
静かな町。
何もかもが、まだよく分からない。
だが一つだけ確かなことがある。
私は指輪を見つめた。
三つの世界。
そして――
これから増えるかもしれない世界。
「……続きは明日だな」
今日は、もう十分だった。




