指輪アップデート
リリィはベッドから身を乗り出した。
狐耳がぴんと立つ。
光はさっきより強い。
そして。
リリィの指にはめられた指輪の内側に――
新しい文字が浮かび上がった。
「……あ」
リリィが小さく声を出す。
「ユウ」
「これ、なんかでてる」
私はリリィの手をそっと取る。
指輪を見ると、そこにははっきりとした文字が浮かんでいた。
『近くに別の転送リング反応があります』
私は一瞬、周囲を見た。
だが――すぐに気づいた。
「……ああ」
「ユウ?」
リリィが首をかしげる。
狐耳がぴこっと動く。
私は自分の指を見せた。
「これだ」
「リリィの指輪が反応してるのは」
「たぶん、俺の指輪だ」
リリィは目を丸くする。
狐耳もぴんと立つ。
「ユウの?」
「そう」
私は軽く指輪を持ち上げる。
「この指輪、旧型かもな」
その時だった。
私の指にはめている古い指輪が――
かすかに震えた。
どうやら。
リリィの指輪の反応に引きずられているらしい。
次の瞬間。
部屋の中に静かな声が響いた。
『案内を開始します』
リリィの狐耳がびくっと跳ねる。
「しゃべった……」
私は少し笑った。
「どうやら」
「リリィの指輪の機能みたいだな」
声は続いた。
『旧型リングを検知しました』
私は自分の指を見る。
やはり。
私の指輪のことだ。
続けて声が言う。
『リング同士を重ね合わせることで』
『旧型リングの部分アップデートが可能です』
私は思わず小さく笑った。
「へえ」
「そういう仕組みか」
リリィが私を見上げる。
狐耳が左右に揺れる。
「ユウ?」
「なに?」
「つまり」
私はリリィの指輪と自分の指輪を見比べた。
私は指輪を軽く見せる。
「お互いの指輪を重ねれば」
「私の指輪を新しくできるらしい」
リリィは少し考える顔をした。
狐耳がくるくる動く。
「……くっつけるの?」
「そういうことだな」
リリィは自分の指輪を見る。
それから私の指輪を見る。
狐耳がぴこぴこ動く。
「じゃあ」
「やってみる?」
私は少しだけ考えてからうなずいた。
「まあ」
「試してみるか」
リリィはうれしそうに笑った。
狐耳もぴょこんと立つ。
「うん!」
リリィはそっと手を伸ばす。
小さな指につけた指輪が、朝の光を反射してきらりと光った。
そして――
二つの指輪が、ゆっくりと近づいた。




