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強制異世界転移!! ~世界を繋ぐ指輪~  作者: 生家事


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アイルはつよい

ギルドの空気が一瞬で張り詰めた。


黒いコートの男は、振り返ることもなくそのまま出口へ向かって歩いていく。


その背中に向かって、冒険者の一人が怒鳴った。


「おい、待て!」


男は止まらない。


足取りはゆっくりだが、明らかに逃げようとしている。


「待てって言ってんだろ!」


剣を抜いた冒険者が一歩踏み出す。


しかし私はその様子を見ながら、小さく息を吐いた。


(……面倒なことになってきたな)


私は別に正義の味方でもなければ、ギルドの治安担当でもない。

そして何より――無駄な戦闘はしたくない。


「……まあ、誰かが捕まえるでしょ」


そのときだった。


カウンターの横で――


ばさっ


アイルが突然、翼を広げた。


私は思わず振り向く。


「え?」


アイルは胸を張り、ドヤ顔で言った。


「私に任せなさい!!!」


ギルドの中に、その高い声が響く。

冒険者たちが一斉に振り向いた。


「……は?」

「アイル?」


黒いコートの男も一瞬足を止め、振り返る。


アイルはカウンターの上にぴょんと飛び乗った。

小さな体だが、妙に堂々としている。


そして翼を前に突き出した。


「《バインド》!」


その瞬間――


男の足元の石床が、ぼこっと盛り上がった。


次の瞬間。


土が蛇のようにうねり、男の足首に巻きつく。


「なっ!?」


男が驚く。


だが土は止まらない。


ぐぐぐっと盛り上がり、両足をがっちり包み込む。


「くそっ!!」

「はなせよ!!」


男が暴れるが、土はまるで岩のように固く、びくともしない。


さらに膝のあたりまで覆い、完全に固定してしまった。


男はその場で身動きが取れなくなる。


「くそ!!」


腕を振り回しながら暴れる。


やせ細った体、こけた頬、血走った目。

落ち着きのない様子が、逆に目立っていた。


「離せって言ってんだろ!!」


冒険者たちはぽかんとしていた。


「……え?」

「今の、アイルか?」

「久々に見たけど、やっぱすげえな……」


アイルはカウンターの上で胸を張る。


「ふっ。私を誰だと思ってるの?」


そして誇らしげに一言。


「このギルドの受付よ!!」


私は思わずつぶやいた。


「受付ってそんな戦闘職でしたっけ……」


リリィは目をきらきらさせている。


「わああ!! アイルすごい!!!」


狐耳をぴこぴこ動かしながら拍手する。


アイルは少し照れたように翼をぱたぱたさせた。


「ま、まあね。これくらい普通よ普通」


そのとき――


「くそが!! 離せよ!!」


男がなおも叫ぶ。


「俺は何もしてねえ!」


冒険者の一人が近づく。


「じゃあなんで逃げた?」


男は歯を食いしばる。


「……知らねえよ」


別の冒険者が口を挟む。


「倉庫から出てくるの見てたんだぞ?」


男は黙り込んだ。


ギルドの空気が、少し重くなる。


その横で――


リリィが私の袖を引っ張った。


「ねえ」


「ん?」


「やっぱり……このひと」


黒いコートの男を指さす。


「わるいひと」


私は小さく苦笑した。


「……そうかもしれませんね」


その後、男は冒険者たちによってギルドの奥へ連れていかれた。

アイルの魔法で足を固められたまま、二人がかりで引きずられていく。


「離せって言ってんだろ!」

「うるせえ、暴れるな」


男の声は、そのまま奥の扉の向こうへ消えていった。


残った冒険者たちは、やれやれといった様子で散っていく。


「最近多いな、こういうの」

「景気が悪いからなぁ」

「盗みまでやるとはな……」


私はその様子を横目に、カウンターの前に立っていた。


しばらくして――


奥の扉が開き、アイルが戻ってきた。


翼をぱたぱたさせながら、カウンターの上に飛び乗る。


「はぁ……」


少し疲れたように息を吐く。


「どうでした?」


私が尋ねると、アイルは肩をすくめた。


「大した話じゃなかったわ。結局、ただの盗み」


リリィが首をかしげる。


「ぬすみ?」


アイルはやさしく説明する。


「賭博にのめり込んで借金まみれ。

それでお金になるものを探して、ギルドの倉庫に忍び込んだってわけ」


私は小さく息を吐いた。


「回復薬ですか」


「ええ。納品されたばかりのを一箱ね。外で売ればそこそこになるから」


リリィは難しい顔になる。


「……だめなの?」


アイルはきっぱりと言った。


「もちろんダメ。ギルドの物を盗むなんて、かなり重い罰よ」


私は腕を組む。


「追い詰められてたんでしょうね」


アイルは少しだけ真顔になった。


「まあ……そういう人は珍しくないけどね」


そして、ふっとリリィを見る。


「それにしても――よく分かったわね、あの人が怪しいって」


リリィはきょとんとする。


「?」


「なんか……いやだった」


狐耳をぴくぴく動かす。


「へんなかんじ」


私は思わず笑う。


「勘がいいんだね」


アイルも感心したようにうなずいた。


「ほんとね」


そして、にやっと笑う。


「将来、有名な冒険者になるかもよ?」


リリィの顔がぱっと明るくなる。


「ぼうけんしゃ!」


そして私を見上げる。


「ユウといっしょ?」


私は一瞬言葉に詰まった。


その隙を逃さず、アイルがにやにやと口を挟む。


「ほら、もう懐かれてるじゃない」


私は苦笑するしかなかった。

リリィ「もう一度かじっていい?」

アイル「バインド!!!」

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