とある狐耳の少女の日常
一話かくのに30分か一時間かかるけど小説書いている皆さん凄いと改めて感じました、、
朝の光が、木の窓からやわらかく差し込んでいた。
小さな家の台所では、鍋のふたがコトコトと揺れ、温かい湯気がふわりと立ちのぼっている。
「よし、できたわ」
そう言って、狐耳の女性が木の弁当箱のふたを閉じた。
彼女の名前は ミレナ。
柔らかな栗色の髪と、同じ色のふさふさした狐耳。優しい雰囲気の、二十代後半ほどの女性だった。
後ろから小さな声が聞こえる。
「まだー?」
振り向くと、そこには小さな狐耳の少女が立っていた。
リリィだ。
まだ五歳ほどの小さな体。
ふわふわの金色の髪に、ぴこぴことよく動く小さな狐耳。
ミレナは思わず笑った。
「もうできたわよ。そんなに急がなくても、お父さんは逃げないわ」
弁当箱を布で包みながら、リリィに手渡す。
「はい、お父さんのお弁当」
リリィは両手でしっかり受け取った。
「わあ! いいにおい!」
鼻をくんくんさせる。
「今日はなに?」
「卵焼きと、野菜の炒め物。それとお肉も入れてあるわ」
「やったー!」
リリィはぴょんぴょん跳ねた。
ミレナはその様子を見て、少しだけ目を細める。
「ちゃんと届けられる?」
「うん!」
リリィは元気よくうなずく。
この家では、リリィが父に弁当を届けるのは毎日の日課だった。
父はギルドで働くハンターだ。
そして、家からギルドまでは歩いて十分ほど。
商店街を抜ければすぐだった。
ミレナはリリィの肩に手を置き、少し真剣な顔になる。
「リリィ」
「なあに?」
ミレナは、少し声を落とした。
「最近ね……中間層でも、化け物化する人が増えてきてるそうなのよ」
リリィは首をかしげる。
「ばけもの?」
「ええ。だからね」
ミレナはリリィの目を見て言った。
「もし危ない人がいたら、すぐにその場から離れるのよ?」
「うん!」
「知らない人についていかないこと」
「うん!」
「走って逃げること」
「うん!!」
ミレナはふっと微笑み、リリィの頬に軽くキスをした。
「気を付けて行ってらっしゃい」
リリィは元気よく答える。
「うん! いってきます!」
弁当を大事そうに抱え、家の扉を開けた。
朝の街の空気は、少し冷たくて気持ちがいい。
「いってきまーす!」
リリィは元気よく通りへ飛び出した。
商店街は、すでに賑わっていた。
露店がずらりと並び、野菜の山や焼き串の煙が立ち上っている。
「おや、リリィちゃん!」
野菜を並べていたおばちゃんが声をかけた。
「今日もお父さんにお弁当かい?」
リリィは元気よく答える。
「うん!! おいしいおべんとう、とどけにいくの!!」
「えらいねぇ」
おばちゃんは笑った。
「ちゃんと落とさないようにするんだよ?」
「うん!」
すると隣の焼き串屋のおじさんが笑いながら言った。
「おーい、リリィ」
「なあに?」
「今日は特別だ」
おじさんは小さな串を一本差し出す。
「焼き野菜の串だ。熱いから気を付けろよ」
「わーい!」
リリィは嬉しそうに受け取る。
「ありがとう!」
「父ちゃんによろしくな」
「うん!!」
リリィは串を一口かじる。
「おいしい!」
おじさんは笑った。
「だろ?」
リリィは手を振りながら歩き出す。
商店街の人たちは、みんなリリィのことを知っていた。
毎日同じ時間に通るからだ。
しばらく歩くと、商店街の終わりが見えてきた。
その先には、大きな建物がある。
ハンターギルドだ。
周囲には銃を持ち鎧を着たハンターたちがちらほら見える。
その近くで、数人の男が話していた。
「最近さ……」
一人のハンターがぼやく。
「中間層でも化け物になるやつが出てるらしいぞ」
「まじかよ」
別の男が顔をしかめる。
「昨日もさ、上級ハンターの連中が貧民街のほうに行ってた」
「なにしにだ?」
「噂だと、変異治療薬を保管してた倉庫が襲われたらしい」
「は?」
「もし倉庫で化け物化なんて起きたら、街終わるぞ」
「それだと治療薬足りなくなるじゃねえか」
「この街もそろそろやばいかもな」
別の男が肩をすくめる。
「まあ、やばくなったら俺は仲間と一緒にクロノ町行くわ」
「それがいいかもな」
ハンターたちは苦笑した。
リリィはその横を、弁当を抱えててくてく歩く。
難しい話はよく分からない。
ただ、もうすぐギルドだ。
「おとうさん、よろこぶかなー」
そのときだった。
キンッ
小さな金属音が足元から聞こえた。
リリィの狐耳がぴくっと動く。
「ん?」
下を見る。
そこには、小さな指輪が落ちていた。
渦巻き状の金属で作られた、不思議な形。
中心には二つの穴が空いている。
リリィは首をかしげた。
「なにこれ?」
拾い上げて、光にかざす。
「きれー」
しばらく見つめてから、なんとなく右手の指にはめてみた。
その瞬間。
頭の中で声が響いた。
『登録完了』
リリィは目をぱちぱちさせた。
「え?」
次の瞬間。
『第175世界へ転送します』
指輪から、強烈な光があふれた。
「え?」
視界がぐにゃりと歪む。
空間が、曲がったように見えた。
体が引きずり込まれるような感覚。
「なに……これ……?」
足元の地面が遠ざかる。
世界が渦を巻く。
「おかあさ……」
光が、すべてを包み込んだ。
そして。
リリィの姿は、その場から消えた。
リリぃ「なにこれ?変なのー、」
指輪ポイっ٩( 'ω' )و




