ギルドにて
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私はリリィの頭を軽く撫でながら、街で出会った経緯を簡単に説明した。
露店通りで泣いていたこと。
周囲を見ても親らしい人が見当たらなかったこと。
とりあえず落ち着かせて、ギルドに相談しようと思ったこと。
アイルは腕を組み、「ふむ」と小さくうなずく。
「なるほどね……迷子、ってことね」
そう言ってカウンターから身を乗り出し、リリィをじっと見つめた。
「リリィ、で合ってる?」
リリィは元気よくうなずく。
「うん! りりぃ!」
アイルの表情が、ほんの少しやわらいだ。
「じゃあリリィ。どこから来たの?」
その問いに、リリィはきょとんとした顔になる。
しばらく考え込むように首をかしげ――
「んー……」
小さな指を口元に当てて、うーんとうなる。
「……おうち!」
私は思わず苦笑した。
アイルは額に手を当てる。
「いや、それはそうなんだけどね……」
リリィは楽しそうに続ける。
「おうちにね、お母さんいるの!」
「うん、それも分かったわ」
アイルは小さくため息をついた。
「街の名前とか、覚えてない?」
「しらなーい!」
元気よく即答だった。
その様子を見て、私は肩をすくめる。
「まあ……この歳じゃ難しいですよね」
アイルは少しだけ考え込み、やがて顔を上げた。
「……とりあえず、迷子の届けを出しておくわ」
カウンターの引き出しから書類を取り出し、手早く広げる。
「この街で騒ぎになっていれば、すぐに情報は回るはずよ」
「ありがとうございます」
私はほっと息をついた。
――そのとき。
リリィが、くいっと私の袖を引っ張る。
「ねえねえ」
「ん?」
リリィはギルドの奥を指さした。
「なんか……へんなの、いる」
私とアイルは顔を見合わせる。
奥の方では、冒険者たちがざわついていた。
小さな人だかりができている。
「……何かあったみたいね」
アイルが眉をひそめる。
私はその様子を見ながら、小さく息を吐いた。
どうやら今日の騒ぎは、まだ終わりそうにない。




