84.迎えの意味
クロにべろべろと舐められながらも、なんとか顔を拭いたカイは、魔法袋から取り出した布で顔を拭いながら言った。
「それにしても、よく俺たちが戻ってきたのが分かったね、カーク」
だがその問いに、カークはなぜかきっぱりと首を横に振った。
「いいえ!まったく分かってませんでした!」
「……え?」
みんなの動きが一瞬止まる。
「じゃあ、なんで迎えにきたの?」とミーア。
カークは深くうなだれ、そして言った。
「実は……ある“被害”が出まして……それで“犯人”を捕まえてこいと命令されまして……」
「被害?」とオリビアが首をかしげる。
「はい。ヒルダ様の小屋に隣接する畑が……その……焼け焦げていたんです」
「焼け焦げ……?」
嫌な予感がカイの背筋を走る。
「まさか、あの魔法……」
カークは顔を上げて叫んだ。
「そうです!あの真っすぐ一直線に走った、バカでかい雷光!あれがヒルダ様の畑を――というより、ゴーレムンが命をかけて育てていたナス畑を直撃したんです!!」
その場が一瞬凍りつく。
「ナ、ナス畑……」とミーア。
「ナスだったのね……」とルカ。
カイが恐る恐る訊ねる。
「ヒルダは……怒ってるぅ?」
「怒ってます!!でも、もっと怒ってるのはゴーレムンです!!」
「ゴーレムン……」
ルカとマリはまだ会ったことがなかったが、その名前からなんとなく恐ろしい予感だけは共有できた。
「それで、ヒルダ様が言ったんです。“これをやったバカを、連れてこい”って……」
「ちょ、ちょっと待って!」とオリビアが慌てて手を挙げる。
「まさか、その“バカ”って……私じゃないわよね!?」
カークとクロが同時に、重い頷きを返した。
「ヒルダ様は、“こんなことをするのは、あのバカ娘しかいない”と……」
「うっ……!」
オリビアが一歩後ずさる。
そのとき、クロがオリビアを見上げて「ウォン」と低く一声鳴いた。
それはまるで、「お前だろ」と言っているかのようだった。
「ごめんなさい……畑の存在、すっかり忘れていたのね……」
カイが肩をすくめて言った。
「まぁ……ナスに罪はないし、謝りに行くしかないな」
「うぅ……でも絶対叱られる……ゴーレムンに無言で見つめられるのが一番つらいのね……」
「歩こう、歩けるうちに」とミーアがボソリと呟き、皆がうなずいた。
こうして、5人と1匹と1人は、震える脚で、森の小屋へと向かっていくことになった。




