8.初めてのレベル測定
ミーアが来て数か月たったある日。
小屋ではいつものように、カイはキノコごはんを、ヒルダとミーアは通常の朝食を囲んでいた。
訓練は相変わらず毎日続いていたが、そんな朝、ヒルダがふいに紙切れを2枚取り出して言った。
「今日はレベルがどこまで上がったのか、見てやる。」
「おお!レベル!異世界チック!RPGのド定番!待ってました!」
「静かにしろ、カイ」
しゅんとなるカイ。
「この紙に魔力を流し込んで見ろ。レベルが表示される。」
「はい、先生!レベルってのは強さを数値化したものですか?」
「そうだ。レベルは強さや攻撃力・魔力などの総合的な力に応じて上がっていく」
「ところで、先生のレベルはいくつなんですか?」
ヒルダが紙に魔力を流し込むと、「268」と表示された。
(ん?3桁?)
そうかそうか、先生は268か!まぁ3桁は気になるが、まぁ俺が何気なくそれを抜いて先生を驚かせ、俺TUEEEE!となるのがお約束パターンですな!へへへ、異世界サイコー!!!
にやりと笑いながらカイが紙に魔力を流すと、そこには「45」の数字。
ミーアの紙には「25」と表示された。
ガックリと肩を落とすカイ。
「俺もぉ、おうち帰る!!!!!」
思いっきり拗ねて、地面に寝転がるカイ。
「始めたばっかりのミーアですら25!!!なっとくできねー!!!!」
小さく笑みを浮かべて、ちょっとだけ喜んでいるミーアがいた。
「おい、カイ。洗礼も受けていない人間が45ってのは凄いことなんだぞ」
「慰めはいりません・・・・」
(想像以上に凹んでいるな……)
「ミーアはもともとレベルが高い部族なんだ。ただ、レベルが上がりにくいのが難点なんだ」
人間と違い、エルフ族は長生きする分、成長が緩やかで、レベルを上げるのに時間がかかるらしい。
「あと、レベルが高いからって、必ずしも強いってわけでもない」
「それはどういうこと?」(半べそ)
「例えば力で言えば、レベルに反映されない“底力”みたいなのがある。
それは訓練や経験でしか得られない」
「やはり訓練なんですね!!!!」(目が光る)
「最後まで聞け……」
「では訓練してきます!!!」
最後まで話を聞かず、ゴーレムンのもとに走り出すカイであった。
季節が4つほど変わったある日。
再びレベル測定の日がやってきた。
「カイがレベル55、ミーアが30。まぁまぁの出来だな」
やはり三桁までは全然遠い。ガッカリするカイ。
「普通の人間が55ってのは大変凄いことだぞ」
「慰めはいらないです……俺はまだまだ弱いです。ゴーレムンも一度は勝ったけど、それはたまたまで、それからはまたボコボコにされる日々ですから……」
「おい!ゴーレムン!!特訓だ!」
再びゴーレムンのもとに走り出すカイ。
それを見て、やれやれと肩をすくめるヒルダとミーア。
(カイと戦うことにより、私のゴーレムンもレベルが上がるんだけど……
あのゴーレムンを一度でも倒したんだから、大したもんだよ)
ある日、ヒルダがこれを使ってみろと、ある武器を手渡した。
それは――
「メリケンサック?」
「いや、カイザーナックルっていう」
「やっぱり先生は、ヤンキーだったんですね!」
次の瞬間、目の前に星が舞った。
「ヤンキーってのは何か知らんが、とりあえず一発打っとく」
「殴る前に言ってくださいよ!」
「このカイザーナックルは魔力を纏わせれば強くなる」
「片手分だけなんですね」
「これは剣などと併せて使うと便利だ」
金色に輝くカイザーナックル。
拳の部分には十字が刻まれていた。
「では、試してみますか」
ゴーレムンと改めて対峙するカイ。
「今まで木剣か素手だったけど、これを試したくて……たのむよ、ゴーレムン!」
ゴーレムンの目が緑色に光り、重たい足取りで突進してくる。
カイは拳に魔力を集中させ、真正面から突撃した――
拳がゴーレムンの胸部分の鋼鉄で出来たシールドごと打ち抜いた瞬間、爆発のような衝撃音と共に、ゴーレムンの身体が砕け散った。
岩の破片が四方八方に飛び散り、地面に激しく叩きつけられる。
「スゲー威力!!!!」
だが、その直後――
「……ゴ、ゴーレムン……?」
カイはその場に立ち尽くした。
砕けたゴーレムンの残骸を見つめ、顔色が変わっていく。
「……うそ、だろ……?」
その手は震えていた。
「俺……やっちまったのか……?
いっしょにずっと訓練してきたゴーレムンを……俺が……!」
胸にこみあげる後悔と混乱。
拳を握りしめ、目が潤んだ。
「なんでだよ……俺、こんなつもりじゃ……」
「落ち着け、カイ」
背後から声を掛けるヒルダ。
「ゴーレムンは死んじゃいない。あれは魔石コアが無事なら、いくらでも復活する」
そう言って指差した先、岩の破片の中央で、緑色の魔石がほのかに輝いていた。
その光に反応するように、砕けた岩の破片が音を立てて動き出す。
集まり、組み上がり――再びゴーレムンの姿が蘇った。
「……ゴーレムン……!」
涙が一粒こぼれた。
カイは思わず飛びつき――
その瞬間、ゴーレムンの拳が素早くカウンターで振り抜かれた。
ドゴォッ!!!!
「ぐはっ!」
カイの首が一回転して意識が遠のく。
ぱたりと地に倒れるカイ。
「……おかえり、ゴーレムン……」
その顔には、満足そうな笑みが浮かんでいた。




