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7.ミーアの訓練

 鳥のさえずりが、静かに森の朝を告げる。


「カイ……朝だよ。起きて」


 小さく優しい声が耳元に届き、カイは寝返りを打った。


「ん〜……あと10分だけ……」


 それでも布団にしがみついて離れないカイを見て、ミーアは困ったように笑う。


「先生が怒るよ?」


「うわっ、それはヤバいやつだ!」


 カイは目を見開き、慌てて飛び起きる。


 目をこすりながらベッドから抜け出すと、ミーアがくすりと笑っていた。


 短く切られた青い髪が朝日に照らされ、耳の長いシルエットが揺れている。


 数日前まで怯えて言葉も少なかったミーアが、今では笑顔で起こしに来てくれる。


 その変化が、なにより嬉しかった。


「おはよう、ミーア。起こしてくれてありがとな」


 そう言って、そっとミーアの頭を撫でた。


「えへへ……おはよう、カイ」


 



 


 朝食のテーブルには、それぞれの朝が並べられていた。


 ヒルダとミーアの皿には、焼きたてのパンとチーズスープ、それに果物が数種。


 一方カイの皿の上には、茶色くこんもり盛られた――


「今日も……キノコごはんか……」


 ホカホカと湯気の立つ山盛りのキノコごはん。森で採れる野生キノコが、炊き込み風にされている。


「文句あるのか?」とヒルダが目線だけで威圧する。


「いえ、今日もありがたくいただきます……」


 


 ヒルダがパンをかじりながら口を開いた。


「今日から訓練内容を変える。午前は模擬戦だ」


 キノコを吹き出しかけたカイが、むせながら顔を上げる。


「も、模擬戦!? 相手って……まさか!」


「そうだ、私自慢のゴーレムだ!しかも特製ゴーレムンが相手だ」




 訓練場。森の中に設置された平らな土の広場に、金属の響きが鳴り響く。


「ゴーレムン、起動」


 ヒルダの合図とともに、魔法陣が展開し、魔力の光を放つ装甲が姿を現す。


 全高2メートル、厚い魔力装甲で覆われたその姿は、まさに鉄の巨人。


「やあああああっ!」


 カイは叫びながら剣を振るい、一直線に飛び込んだ。


 ゴーレムンの反応は速かった。拳を構えたまま、一瞬のうちに正確なカウンターを打ち込んでくる。


 カイはそれをなんとか回避し、地面を滑るように移動して背後を取った――が、


 ガガンッ!!


「ぐあっ!」


 肘鉄が腹部に直撃し、カイの体が空中を回転して地面に叩きつけられた。


 それでもすぐに立ち上がる。


「まだだ……まだ終わってねぇ!」


 カイの動きは日々鋭くなっている。だが、ゴーレムンの動きはそれ以上に洗練されていた。


 体重移動を見切り、攻撃のクセを読み取り、わずかなスキを突いて叩き潰す。


 しかも、ヒルダによって新たな魔法指令が追加されていた。


「火炎カウンター起動」


 ゴーレムンの拳が赤熱化し、攻撃を受け流すと同時に、熱波を発する。


「うおっ! あっっつつつ!?」


 焦げた匂いが漂う。


 カイは倒れながらも、必死に立ち上がろうとする――


 が、ヒルダが手を上げて止めた。


「そこまで。今日の模擬戦はここで終わりだ」


「……くそ……全然歯が立たねぇ……」


 土まみれになりながら膝をついたカイを、クロがクンクンと鼻先で突っついていた。


 




 


 午後。森の静かな岩場。


「ここからは、体内魔素の制御訓練だ。ミーアと一緒にやれ」


 ヒルダの声にうなずく二人。


 岩の上に座り、姿勢を正して目を閉じる。静かに呼吸を整え、魔素の流れを感じ取ろうとする。


「……流れを感じるって、どういうことなんだ……」


 カイは眉をひそめながらも、なんとか集中しようとする。


 が――


 ミーアの座っていた岩が、ふわりと浮かび上がる。


 わずかに数センチ。しかし、岩は確かに浮遊し、微動だにせず空中にとどまっていた。


 カイが音に気づいて目を開くと、驚きで目を丸くする。


「えっ、おい……ミーア、浮いてる……!?」


 ミーアは目を閉じたまま、静かに呼吸を続けていた。彼女の中に流れる魔素が、穏やかに空気を震わせていた。


 やがて目を開いたミーアが、にこっとカイの方を見て微笑む。


 ヒルダが腕を組んで頷いた。


「見事だ、ミーア。お前には確かな魔素適正がある」


「ありがとう、ヒルダ」


 カイはしばらく黙っていたが、やがて深くうなだれた。


「……俺だって……ちゃんと頑張ってるのに……」


 その後ろで、ヒルダとミーアがそっと笑みを交わす。


 クロがいつの間にかカイの背中に乗り、ポスっと頭に前足を置いた。


「おい、クロ……それ慰めてるのか……?」


 夕暮れの森に、ほんのりと笑い声がこだまする。


 カイの不貞腐れた顔を残して、この日の訓練は静かに幕を閉じた。


 


 


 午後。森の静かな岩場。


「ここからは、体内魔素の制御訓練だ。ミーアと一緒にやれ」


 ヒルダの声にうなずく二人。


 岩の上に座り、姿勢を正して目を閉じる。静かに呼吸を整え、魔素の流れを感じ取ろうとする。


「……流れを感じるって、どういうことなんだ……」


 カイは眉をひそめながらも、なんとか集中しようとする。


 が――


 ミーアの座っていた岩が、ふわりと浮かび上がる。


 わずかに数センチ。しかし、岩は確かに浮遊し、微動だにせず空中にとどまっていた。


 カイが音に気づいて目を開くと、驚きで目を丸くする。


「えっ、おい……ミーア、浮いてる……!?」


 ミーアは目を閉じたまま、静かに呼吸を続けていた。彼女の中に流れる魔素が、穏やかに空気を震わせていた。


 やがて目を開いたミーアが、にこっとカイの方を見て微笑む。


 ヒルダが腕を組んで頷いた。


「見事だ、ミーア。お前には確かな魔素適正がある」


「ありがとう、ヒルダ」


 カイはしばらく黙っていたが、やがて深くうなだれた。


「……俺だって……ちゃんと頑張ってるのに……」


 その後ろで、ヒルダとミーアがそっと笑みを交わす。


 クロがいつの間にかカイの背中に乗り、ポスっと頭に前足を置いた。


「おい、クロ……それ慰めてるのか……?」


 夕暮れの森に、ほんのりと笑い声がこだまする。


 カイの不貞腐れた顔を残して、この日の訓練は静かに幕を閉じた。




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