54.夜の学校
合宿二日目も、またギルドの仕事だった。
次は、山の麓にある、元学校に住む魔物退治だった。オリビア先生が冒険者ランクAなので、どんなクエストでも受けられる状態だったが、次の魔物はどんな者なのか、事前情報が全然無かった。
昨日はイカだって言ってたのに、タコだったし。
今回の魔物の被害ってのも、人が襲われたりはないみたいだ。特に大きな被害はないらしい。それでクエストランクAってのも不思議だ。
一体どんな魔物なのか・・・。
「古い学校に住む魔物って、どんな魔物かしら」
昨日は船酔いで出番がなかったマリが先頭を立って歩いていた。
そうだなぁ、学校に住む魔物って言ったら・・・・え?ひょっとして・・・。
学校まではそんなに遠くは無かった。到着したが、討伐は夜じゃないとダメらしい。
夜って・・やっぱり・・・そうなんじゃないの?
俺たちは、学校のグラウンドで夜になるのを待った。
そして頭上で月明かりが怪しく光る時間になった・・・
夜の学校ってのは、相変わらず不気味だ。異世界の学校でも一緒で不気味だ。
校舎に入る俺たち。外の気温と違うのか、少し肌寒く、湿気が高い。
「あ、あ、あ、あ、あの~、みなさん、お先にどうぞ・・・」
俺はこの手の話が苦手中の苦手。一人でおしっこに行けなくなるタイプだ。
「な、な、な、な、なに、なにを言っているカイ!!」
いつも元気印のマリも足が震えていた。
「・・・二人とも情けない・・・まかせて」
いつも何を考えているのか分からないルカが輝いて見えた!
そして、いつも引きこもりがちのミーアも
「・・・僕に着いてきて・・・・」
おお!なんとも心強い妹だ!お兄ちゃんはうれしいぞ。
まさかこの二人がこんなところでタッグを組むとは。
「そ、そ、そ、そいえば、お、お、お、オリビア先生は?」
「せ、せ、せ、せ、せ、先生は外を調べるってててて」
ポンコツ二人は手を繋いで、ガタガタと震えあった。
「こっちに何か感じるよ、お兄ちゃん」
ミーアの声は静かで、でも確信に満ちていた。エルフ族ってのは、妖精とかと話が出来るっていうぐらいだから、この手の話も得意なのか?
真っ暗な廊下をまっすぐ進むと、曲がり角で前から誰かが来る。
「あ!あ!出た!!出た!出た!!!」
「カイ、うるさい・・・」
ルカが冷静に指摘してきたが、俺はすでにパニック気味だった。
しばらく進むと気配がすっと消えた。
「・・・二階に行ったみたい・・・・」
俺たちはルカとミーアに引っ張られながら二階へと向かった。
「・・・ここで気配が強くなっている・・・・」
そこはどう見ても、トイレだった。しかも女性トイレ。
「や、や、や、や、やっぱりりりり、は、は、は、はな、はな・・・」
「な、な、な、何を言っているのののの」
二人ポンコツチームのポンコツ具合に拍車が掛かった。
やはり、これは日本で有名なあの方では!?
「僕が魔法でやってみる・・・」
ミーアが天に手をかざすと杖が現れ、詠唱を始めた。
「天に司る光の神よ、光の聖霊よ、我に力を・・・・」
詠唱の途中で、女性トイレの個室から声が聞こえた。
「何して遊ぶ?・・・」
「や、や、や!やっぱり出た!!!」
「な、な、な、何がででで出たのよ!」
ポンコツチームのポンコツ具合は加速して全速力だった。
それでも詠唱を辞めないミーア。
「何して遊ぶ・・・・」
まだ詠唱を行っているミーア。
「・・・・何して遊ぶ?・・・」
もう少しで詠唱を終えるミーア。
「ちょっと、聞いてください!」
ドアの向こうから聞こえる声を無視して、詠唱を終えたミーアが叫ぶ。
「あの~!ちょっと聞いてくださいよ!」
「すべてを浄化しろ!イルミナイトブライト!!」
校舎の窓からは、眩い光が放たれて、校庭は昼間のように明るくなった。
「ぎゃあああああぁぁぁぁ!!!!!」
何かが断末魔のような叫びを上げ、光の中で消えていった。
「終わったよ・・・お兄ちゃん」
ミーアが振り返って微笑んだ。
「あの、ミーアちゃん、何かが叫んでたよ」
「気のせいだよ、お兄ちゃん」
「ま、マジで、気のせいってことにしておこう…」
ルカがトイレに入り、しばらくして出てきた手にはあるアイテムが握られていた。
「・・・これが討伐部位・・・?」
「うん、トイレの中にあった。たぶん、アレのもの」
マリはまだガタガタ震えながら、俺の背中にしがみついていた。
「お、お、終わった、の?」
「終わったよ。ミーアとルカが全部やってくれたからね…俺たちは…うん、見学組だったな」
こうして、学校での討伐作業は終わり、ギルドへと向かった。
どこかに行っていたオリビアも合流した。
「討伐部位は持ってきたのね??」
「はい、先生」
ミーアが手渡したのは、ひらひらとした赤いリボンだった。




