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48.キース・イグナシオン

俺たちは自警団に臨時入団した。期間はカークが帰ってくるまでの限定だ。


とはいえ、俺たちが入団したのはエステンの自警団であり、本来なら王都とは無関係だった。しかし現在、エステンの人員不足と治安強化のため、王都へと一時的に派遣されているというわけだ。


「カークはいつになったら帰ってくるんだろう……」


そんなことを思いながらも、魔法学校の入学まで残り2週間。俺はヒルダから譲り受けた魔導書を読みあさり、朝と夜は魔法の勉強に励み、昼はギルドでクエストをこなす合間に、自警団にも顔を出していた。マリとルカも同様だ。


自警団の業務といえば、この王都では警察官であり、裁判官のような立場でもある。ただし、現実の業務はパブで暴れる酔っ払いの取り押さえや、街角のコソ泥を捕まえるといった小さな事件が中心で、命を懸けるような出来事はほとんどなかった。


任務が終わると、宿に戻り、再び魔導書を開いて夜の勉強タイムに入る。これが今の俺の日課だ。



そんなある夜のこと。入学まで残り1週間となった夜、自警団詰め所近くのパブで大きな乱闘騒ぎが起きた。


「出動だ!」


詰め所に飛び込んできた仲間の声に俺たちはすぐさま現場へ駆けつけた。騒ぎの中心となったパブの外では、乱闘の気配がすでに収まっていた。


地面には剣を握ったまま倒れている賊が20人ほど。全員が意識を失っている様子だった。その中心に、ただひとり立ち尽くす男がいた。


マントを羽織り、顔は影に隠れてよく見えない。その立ち姿からただ者でない雰囲気が漂っていた。


「えーと、話を聞かせてもらってもいいかな?」


俺が近づいて声をかける。倒れている賊を見てみると、剣傷はなく、すべて素手でやられたようだ。


「これ、全部あんたがやったんですか? ……やりますね~」


すると、男はニヤリと笑って口を開いた。


「お、少しは見どころがある奴が来たか」


「俺、臨時でエステン自警団から派遣されているカイって言います」


「私はキース・イグナシオン」


「それじゃ、キースさん。少し事情を説明してもらっていいですか?」


だが、男から返ってきたのは驚きの要求だった。


「俺に話をさせたいなら、酒を持ってこい」


「……言うことを聞かないなら、自警団詰め所まで同行してもらいますよ。力づくでも」


「ほほう。俺を力づくで……? やってみな」


挑発的な笑みに俺はすぐに飛びかかった。キースの腕をつかみ、関節技を決めにかかる。


「珍しい技を使うな……だが、それで俺を捕まえられると?」


その瞬間、俺の視界がぐるりと回った。身体が宙を舞い、背中から地面に叩きつけられる。


「いってて……何すんだよ……」


「それで立ち上がるか? ほう、やるな」


なぜか俺の顔に笑みが浮かんでいた。


「おっさん、やるっスね。次は油断しないっスよ」


「怯えず向かってくるとは……いい根性してる」


一気に距離を詰めて再び関節を極めにかかる。俺の両足で挟みこみ、腕ひしぎ十字固めを決めたまま地面に倒れる。


「動くな。大人しくしないと、腕、折りますよ」


「おもしろい技だ……だが!」


そのままの体勢で、キースは俺を地面に何度も叩きつけてきた。ドゴォ!ドガァ!地面が抉れる。


最初の一撃で意識が飛びかけたが、叩きつけられる度に目が覚めていく。まるで脳が覚醒していくような感覚。


「坊主、その実力でなぜ自警団を? 冒険者の方が向いてるぞ!」


「残念ながら、俺は学生なんで!」


腕から離れ、構えを変える。打撃戦だ。


キースが立ち上がろうとしたとき、両腕の関節が外れていることに気付く。


「……いつの間に……参ったよ」


「それなら、大人しく詰め所まで同行してもらうっスよ!」


「……ああ、そうだな」


その瞬間、キースの足元に魔法陣が浮かび上がる。


「俺の名前はキース。……また会おうな、坊主」


「って、転移魔法っスか!? 汚ねー!!」

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