43.引っ越し
俺は、無事に入学金を収めることができて、ようやく一安心した。
主席入学者は授業料が免除され、さらに寮も与えられるという好待遇。お金の心配をせずに勉学に励む環境が、着々と整いつつあった。
ただし、問題はすぐに起こった。
学校の事務室で手続きを終えると、無愛想な職員が無表情で尋ねてきた。
「あなた、平民出身のようですが……入寮できるのは三週間後です。それまでの滞在先は?」
「え、三週間も?」
俺は思わず眉をしかめた。想定外だった。とはいえ、森に帰るわけにもいかない。カークがヒルダのもとで修行を始めているだろうし、俺が戻ったら気が散るかもしれない。
「……宿屋住まいしかないか」
報奨金の残りを思い出しながら、俺は深くため息をついた。
「とはいえ、ギルドで稼げばいい話だ」
魔物討伐も訓練の一環。そう考えれば一石二鳥だ。
俺は再びギルドへと足を運んだ。
ギルドの中は昼前にも関わらず賑わっていた。冒険者たちの怒号や笑い声が飛び交う中、いつもの受付カウンターには無表情のカタリーナが立っていた。
「どうも!、何かいいクエストないか?」
俺が声をかけると、カタリーナはいつものように無感情で淡々と答える。
「カイ様は、昨日のゴブリンエンペラー討伐がギルドに高く評価され、ランクがCへと昇級されました。これで討伐系のクエストも広く受けられます」
「おお!ランクアップしてたのか!」
思わず拳を握る。予想以上のスピード出世だ。
「では、どんなクエストがある?」
カタリーナは手元から数枚の紙を取り出し、カウンターに並べた。クエストの内容が書かれたリストだ。
俺はそれをじっと見つめ——次の瞬間、すべてを掴み取った。
「これ、全部やります」
「…………」
カタリーナは一瞬だけ目を見開いた。珍しく、感情の波が顔に出た。
「クエストには期日が定められたものもありますので、効率よく順番を組み立てることをおすすめします。それと、説明もさせていただかないと……」
「だいじょーぶだって!細かいことは現地で確認するさ!」
「い、いえ、せめて概要だけでも……!」
俺は聞く耳を持たず、紙束を片手にギルドを飛び出した。
街の通りを歩きながら、リストをパラパラと確認する。
「……ん? ほとんどがゴブリン討伐?」
読み進めていくうちに理由が分かった。
先日のゴブリンエンペラーの出現により、周囲の森で通常のゴブリンが大量発生していることが確認されたらしい。そのせいで討伐依頼が爆発的に増えていた。
「これはまさにゴブリンスレイヤー……」
クエストの中には、「ゴブリンキング討伐」や「ゴブリンクィーン討伐」など、いかにもボス戦っぽい依頼も混ざっていた。
「燃えてきた……!」
討伐は明日から本格的に開始するとして、まずは拠点の確保だ。
俺は近所の宿屋をいくつか回り、三週間の長期滞在を前提に値段交渉を行った。
「というわけで、三週間分の宿代をまとめて払いたいんだけど……少し安くならない?」
「それなら一泊分おまけしてあげるわ、にいちゃん」
粘り強い交渉の末、無事に仮住まいとなる宿屋を確保することに成功した。
「よし、あとは稼ぐだけだな」
明日から始まる討伐ラッシュに備えて、俺はその日は早めに眠りについた。




