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ラスボス育成観察録  作者: 不破焙
第参號 天稟のエニアグラム
61/63

壱頁目 受験開始

 ~~■年前・生体実験室~~



 まず飛び込んで来たのは丸い光。

 大きな灰色の機材の中で、

 魔鉱石の放つ光が眩く爆ぜる。


 次いで『ソレ』は自身の状態を悟った。

 冷たい無機質なベッドの上、

 両手足には更に冷たい鋼の拘束。

 ソレは、自身が検体である事を悟った。



「……こいつ、目が動いたか?」


「まさか。麻痺の魔法が掛かっているはずだ」


「本当なんだろうな?

 施術中に暴れられたら耐えられないぞ?」


「無駄口を叩くな。始めるぞ」



 人々が入って来た。人々が左右に並んだ。

 手袋をはめた手の甲をソレに見せ、

 マスクの下に隠れた口を機械的に動かした。



「■■年、■月■■日。施術チーム着任」


「始める前にコイツの名前を決めておこうか」


「ではメンバーの頭文字を取って――」


「よしそれでいこう。人類史に名が残るな」



 ギラギラと輝く冷たい光の下で、

 彼らはソレに手を伸ばす。



「では――実験開始だ」



 ~~現在・とある迷宮(ダンジョン)~~



 白銀色の鞭が柱を砕く。

 歴史的彫刻を瓦礫に変えても尚止まらず、

 殺意に満ちた鞭が敵対者の女性を狙う。


 此処は砂漠の大国ナバール朝の地下迷宮。

 ボス部屋とも言うべき巨大な地下空間で

 暴れ回っていたのは巨悪な魔物。

 流動する液体金属の体で構成された、

 ゴーレムのような大型の魔物であった。


 そしてそんな魔物を取り囲むのは、

 緑色の鎧を纏う騎士の部隊。

 たった三人の騎士が魔物に盾を向けていた。


 否、騎士の数は三人ではない。

 先程狙われた女性が居た。


 ウルフカットの黒髪に赤縁メガネの女騎士。

 その輪郭が緑の閃光として溶けて消え、

 次の瞬間には魔物の背後の柱に立つ。

 速さは音を置き去りに、

 ショックウェーブが世界を揺らす。

 巨大地下迷宮の柱から柱へと

 閃光は飛び回り液体金属の殺意を超えた。



「エルザディア聖弓術ーー」



 魔物が彼女を見失った時、

 既にそれは頭上で大弓を構えていた。

 当然ガードが間に合うはずも無く、

 レーザービームに等しい光線が

 魔物の体躯を喰らいに走る。



「『咎焔(きゅうえん)のジャスティス・レイ』!」



 大穴の開けられた体躯から

 液体金属は爆ぜて散る。

 爆散と鳴動の後に残されたのは

 余裕綽々な聖騎士団長の姿だった。



「お疲れ様なのです! ラルダ団長!」



 金髪の騎士が語り掛けた。

 万博にも参加した歌花騎士アイリス。

 彼女は回復担当して同行したが、

 この程度の敵を相手に

 エルザディアの聖騎士は負傷しない。

 正直暇でした、と直球に愚痴を漏らした。



「まぁそうでしょうね

 魔物で強いのなんて知性持ちくらいよ」


「あれ? ラルダ団長って

 知性のある魔物との戦闘経験あったのですね?

 私ですら知性持ちは見た事はないのに」


「え、あ……」


「私が成人した時にはもう魔王軍は滅んだのです

 どこでそんな機会があったのです?」


「いやぁホラ! あのぉ……!

 きっと強かったんだろうなーって予想!

 そう! あくまで予想ね予想!」


「? そうなのですね」



 どうやら納得してくれたようだと、

 ラルダは心底安堵した。

 何故なら今の彼女は仲間にも共有していない

 重大な秘密を一人で抱えている身。

 聖騎士団長としてあるまじき、

 戒律違反を犯しているのだから。



「……さて、帰りましょうか」


「なのです! どの道で帰ります?」


「そ、そうね……じゃあ――」



 同時に、拭いされない感情に

 言い訳をつけて身を焦がす日々。



 ~~オラクロン大公国・執務室~~



 帝国万博の戦いからもうすぐ二年。

 公国は戦後の立場を確定させつつあった。


 まずチョーカ帝国方面。結論『友好』。

 戦闘中に避難所として博覧館を開けた事や

 あの状況で明確な敵意を見せなかった事、

 何より皇帝アルカイオスの個人的な感情で

 帝国と公国の繋がりは前よりもずっと

 健全な物となっていた。


 逆に『悪化』したのはナバール朝方面。

 誰しも後ろめたい秘め事があった故に

 直接的な対立こそまだ生まれてはいないが、

 あの夜ナバール王は明確に大公を殺しに来た。 

 万博のごたごたからも生還した彼の王は

 以降、大胆な行動は控えつつも

 国境沿いの監視強化や品物の流通量削減など、

 明らかに公国への嫌がらせを開始する。



(まぁこれはいい

 商人連中からの文句は凄まじいが想定内だ

 問題は――)


「陛下。聖騎士団長ラルダが

 聖騎士団員三名を引き連れ入国しました」


「――彼女の行動だけ、どうにも読めんな」



 この二年間、神政法国エルザディアから

 オラクロン大公国に対しての

 特別なアクションは何一つとして無かった。

 万博中にベリルの正体があろう事か

 聖騎士団長ラルダに発覚したのに、だ。

 まるでそんな事実など無かったかのように

 エルザディア聖騎士団は微動だにしない。

 唯一変わったのはラルダの行動。



「入国目的は?」


「ナバール内迷宮(ダンジョン)における遠征帰りの通過点

 一泊して明朝には発つ予定との報告です」


「いつものパターンだな」



 大陸南東部のナバール朝から

 西側のエルザディアまで戻ろうと思えば

 最も発展したオラクロンを経由するのは自然。

 商人や冒険者もよく使うルートであり、

 一泊していくのも何ら不思議な事ではない。


 が、異様なのはその回数。

 万博が終わってから明らかに

 ラルダの公国に訪れる回数は増えている。

 どんな任務で来るかは毎回微妙に異なるが、

 何かと理由を付けて一泊していく。



「どう見る? お前たち?」



 大公は執務室のソファで

 大胆に寛ぐ連中に話題を振った。

 アクア、ブルーノを含む災禍遊撃隊(カラット)の面々。

 当然そこには渦中のベリルも居た。



「あー……やっぱり、牽制とか?」



 どこか申し訳なさそうに弱々しく、

 ベリルが首を傾けながら回答した。



「聖騎士団長直々の公国への釘差し、か

 確かに理解できない事は無い、が……」


「納得しておらんようじゃな大公殿?」


「ああ。ラルダの行動にはそれで説明が付くが

 エルザディアの対応としては違和感が残る」


「あの国が我ら魔物を見逃すはずも無し

 ……同感ですな。我が君の正体を知って、

 聖騎士団を派遣しない理由がない」


「となると、ラルダはベリル(こいつ)の正体を知って

 なお誰にも話してないって事か? 何故?」


「それが分かれば苦労はしませんよ

 アクア・メルディヌス特装技官」


「案外そのラルダって奴が大将に惚れたとか!」


「ヘリオ殿……今は真面目な場ですぞ」



 唯一正解に肉薄した考察はすぐに流れ、

 理屈をこねくり回す議論が続く。

 されどそこに答えなどあるはずもなく、

 結局はありきたりな結論に辿り着く。

 外出自粛。遭遇率を下げるための延命措置。



「う~ん……」


「不服か、小僧?」


「ああいえ……当然の対応と理解してます

 ただちょっとぉ……その……」


「『かれこれ二年、長過ぎる』だろ?」



 ベリルの言葉を奪ったアクアに

 天魔はただこくりと小さく頷いた。


 実はベリルの活動自粛は

 帝国万博終結直後から既に発動されており、

 災禍遊撃隊(カラット)全体の活動も縮小傾向にあった。

 既にベリルが魔物と悟られてしまった上で

 更に証拠を出さないための即断だったが、

 結果としてそれは成長期のベリルを

 退屈という名の猛毒で蝕み続けていた。


 例えるならそれは精神を削る籠城戦。

 これに関してはギドも同意見だったようで、

 私も看過出来ないと会話に割って入った。



「そろそろ活動の再開をしてもいいのでは?

 私の仕事を割り振るというのも手ですね」


「ギド……」


「ふふ、感謝は不要ですよベリル

 私は常に貴方の成長を第一に考えて――」


「また僕に仕事押し付ける気?

 隊長の仕事だけに飽き足らず?」


「もしや恨まれてます?」



 予想外の角度からの不意打ちで

 ギドの意見は霧散した。

 だが零れ落ちたその欠片を拾い上げるように

 アクアが自分の意見と繋ぎ合わせた。



「ともかく状況を動かす変数は欲しい

 今のままじゃジリ貧ですよ、大公陛下」


「ふむ……」



 納得、はしなかったが理解はした。

 ラルダは明らかに公国に狙いを付けている。

 このまま雲隠れを続けたところでそれは

 終わりのない隠れんぼをしているに等しい。

 否、公国内という範囲指定がある以上、

 確信を持つ聖騎士はいずれ天魔に辿り着く。


 国内にベリルを置き続けていては

 いずれタイムリミットが来てしまうのだ。


 とはいえオラクロン側から

 何か出せる手がないのもまた事実。

 ラルダを秘密裏に暗殺するなど無謀だし、

 絶対に安全な隠れ家なども他に無い。

 故に大公の心情は理解までに留まった。



「一考はしておこう。今回は以上だ」


「しかし……!」



 アクアがそう告げた次の瞬間、

 執務室の扉が叩かれ声が響いた。

 それは非常に若い男性の声。

 その声を聴いた瞬間、

 ベリルを含む魔物たちは退出する。



「あ、ギドさん。失礼、お話し中でしたか」


「お気になさらず、カイヤ様」



 金髪蒼眼の青年にギドは微笑む。

 彼の名前はカイヤ・ビクスバイト。

 大公オスカーの養子にして、

 オラクロン大公国の跡継ぎ候補である。

 最近では後継者としての修行がてら

 秘書的な役割を課せられていた。



「カイヤ。貴様、雑談が出来るほど暇なのか?」


「ひっ! 申し訳ございません大公陛下……!」


「先の報告書に不備があった。まずこれをやれ」


「は、はい……」


(また怒られてる。大変そうだなぁ)



 カイヤにはまだ

 ベリルたちの正体は共有されていない。

 故にベリルが抱く感想はその程度。

 お互いに顔は認知しているが、

 交流もほとんど無いので同情も湧かない。

 精々が我が事に当てはめた共感くらい。



(勉強って、大変だよね)



 そうして魔物たちが立ち去ると、

 カイヤは山のような書類の積まれたの前に座り

 険しい顔で自分の作業を始めた。

 だが不意に触れた手が書類の山を崩し、

 小言を吐く大公に紙束を拾わせると、

 その中の一枚にオスカーの興味は向けられた。



「へ、陛下? また何か不備が?」


「いや、そうではない。……続けろ」



 気になった書類を山に戻し、

 大公は窓へと振り返り空を見上げる。

 方角は西。想起するはとある大国。



(そういえばコレがあったな)



 オスカーの脳内で瞬時に計算が始まった。

 そんな彼の背中に後継者は疑問符を浮かべ、

 彼が気になっていた書類を手に取った。

 書類の種別は国を跨いだ募集案内とその要綱。

 記されていた文言は『特異体質者適応過程』。

 またその下にはとある學園(がくえん)の名もあった。



「最高学府『セグルア・マギア』?」



 ~~二ヶ月後・ベリル宅~~



 人界には稀に、奇妙な能力者が生まれる。


 代表的なのは現聖騎士団長ラルダの父にして

 元勇者パーティの戦士、ヴェルデ・クラック。

 彼はダメージを受ければ受けるほど

 その膂力を増加させる体質を持っていた。

 このような特異体質者は他にも存在し、

 大陸西側の国では彼らの保護および育成に

 力を入れている所も珍しくは無い。


 そしてそれは魔導大国セグルアでも同じ。

 かの国の最高学府もまた数年に一度、

 この特異体質者のための特別枠を設けている。

 そしてその特別枠が、丁度一年後に迫っていた。



「えっとガネットさん……つまり?」


「この枠で()()()()()()()()()()してみないか?

 という提案だ、ベリル殿」


「なっ!?」



 驚きのあまりひっくり返りそうな所を

 ギドに椅子ごと支えられて踏ん張った。

 彼の他に同席しているのは人間二人。

 大公の提案を持ってきたガネットと

 彼に連れて来られたアクアである。


 謎の人選と謎の提案。

 それらにベリルが困惑していると、

 再びガネットが資料を持ち上げ口を開く。



「ラルダに目をつけられている以上、

 オラクロン国内も決して安全とは言えない」


「むしろ標的にされてる以上『危険』まである

 そこは理解しましたが、何故セグルアに?」


「それは関しては俺が答えよう

 ……といっても、理由は至極単純だがな」



 アクアの述べた主な理由は以下の二つ。

 魔導大国セグルアの最高学府は、

 ラルダとは限りなく無縁の場所である事。

 そして其処の制度が他の国のそれと比べても

 圧倒的にベリルの潜伏に有利である事だ。



「まず一つ目の理由だが

 これは純粋にラルダの好き嫌いの話だ」



 魔導大国の最高学府ともなれば、

 当然扱う分野のほとんどが魔導機構(マシナキア)に関して。

 しかし万博で戦ったラルダは

 明らかに魔導機構(マシナキア)の理解が乏しかった。

 戦地で扱う兵器としての認識はあっても、

 明らかに作り手としての興味は無さそうだった。

 そういう者が態々セグルアの學園に来る事は無い。

 ラルダが學園に来る『建前』が作りにくい。



「現状の『何かと理由をつけて来る』作戦は潰せる

 生徒として入学(せんにゅう)するにも分野(はたけ)が違い過ぎるしな」


「強硬策で来る可能性は?」


「無いとは言わないけど、流石に低いだろ

 それをやるならとっくにやってる」


「それもそっか」


「それで? 二つ目の理由にあった

 セグルアの制度がベリルの潜伏に有利とは?

 そもそも何故その特別枠とやらを?」


「ああ、実際に學園生活を考えた時の話です」



 セグルアの學園に入るとなると

 当然セグルア内のどこかに拠点を置く事となる。

 学生寮なのか、はたまた別の居住地なのかは

 まだ未定との事だったが、

 どちらにせよ彼の正体を知らない者が

 多くいる環境に身を移す事には変わりない。



「そこで問題になるのがやはり『食事』だ」


「ああ。人間を食べる事に関してだね」


「いや違う。逆だ」


「え?」


「人肉の確保は公国が支援すればいい

 月に数回加工肉でも送ればいいだけの話だ

 問題なのは――」


「人間の料理を食べない事、ですか?」



 どうやら途中で理解したらしく、

 したり顔でギドは答えた。

 対してアクアも深く頷いていたが、

 まだベリルが理解していない事を察して

 彼は少しほくそ笑みながら逆に問う。



「ベリル。お前もし學園内で

 食事に誘われたらどうする?」


「断る」


「気持ちいいほど明瞭な答えだな

 まぁそれで通るだろう、()()()()()なら」


「え?」


「その断った奴がまた誘って来たら?

 お前は同じ理由でまた断るのか?」


「あ……」


「ノリ悪い奴、程度に思われるなら良い

 けどもし仮にそこから疑われたら最悪だ

 何度でも誤魔化せる言い訳が欲しいだろ?」


「――! それでその

 特異体質ナントカカントカを使うんだ!」


「『特異体質者適応過程』、な」



 オラクロンの用意した『言い訳』は単純明快。

 彼はそういう体質だから、で押し通すのだ。

 聞けばヴェルデのような戦闘特化な

 特異体質者というのも稀で、

 むしろ生活が少し難儀になる体質が一般的。

 なので細部の設定さえしっかり詰めておけば

 普段の食事を控える体質というのも

 そこまで違和感のない理屈となるらしい。



「ふむ。しかしそういった枠での入学者は

 入学難度緩和の対価に被験者になるのでは?」


「あー……昔はそうだったんですよ隊長」


「今は違うと?」


「ええ。実際にはもう研究価値は薄くて、

 政治的パフォーマンスの色が強いです」


「ほー? 政治的パフォーマンスですか?」


「んぐっ……」



 魔物の含み笑いを向けられて

 大公の側近たるガネットは目を逸らす。

 先にも説明があったように

 特異体質者の保護、育成は西側のトレンド。

 しかしオラクロンに特異体質者はおらず、

 今までこの制度に参加出来ずにいた。


 そこで今回、暇なベリルを体よく利用し、

 セグルアに対する外交カードとして切る。

 どうやら真相は、結局そんな所らしい。



(いつもの大公らしいといえばらしいね……

 それに――)



 顔の前に置いた資料からそっと視線を外し、

 ベリルは向かい合うアクアに目を向けた。

 帝国万博にて獲得した共犯者。

 彼らは共にセグルアに対しての恨みがある。



(――これはチャンス。でしょ、アクア?)



 共犯者もまた目配せで同意する。

 大公とは別のところで

 少年たちの思惑が動き出していた。

 そうとは知らないガネットが

 最後の資料を机に置いた。



「細かい偽造はブルーノに一任します

 ベリル殿の同意が得られれば、ですが」


(同意書か。これを書けば僕はまた()()()に)



 万博での激闘をきっかけに、

 ベリルからシェナの声が消失した。

 またそれはシェナよりもずっと前に死んだ

 モルガナにも適応されつつあった。

 元から希薄になりつつあった物が次第に

 音を失い、色を失い、形を失って消えていく。


 このままでは何も果たせない。

 果たせないままに復讐の気持ちが消えてしまう。

 ベリルにはそれが堪らなく恐ろしかった。

 故に、かの地に向かう理由に足枷は無い。

 与えられたペンを受け取り、

 彼は再び最初に人を憎んだ国への帰還を決める。



(セグルアに、復讐を)



 そんな少年の姿を視界に収めつつ

 ギドは一人静かに口元を隠していた。

 が、何らかの暗算を終えるとすぐに

 彼は全く別の事について尋ねる。



「ちなみにその特別枠とやらは入試において

 何かしらの下駄は履かせて貰えるのですか?」


「え?」


「いや。別枠の定員程度の優遇だ

 テストは一般枠と全く同じものが出題される」


「ふむ。確か試験本番は一年後でしたか?

 間に合いますかね?」


「ちょギド? まさか僕の学力を疑ってるの?」


「正直かなり。君の勉学の師は私だけでしたし」


「え、心外……僕はペツのボディみたいな

 魔導機構(マシナキア)の自作経験もあるんだけど?」


「確かにコイツの工学知識は並の学生より上だな

 ま、実際にテストしてみれば分かる話だ」



 そう言うとアクアはこれまでの資料とは

 雰囲気の全く異なる紙束を取り出した。

 それは過去に彼が入学した際の記憶を頼りに

 アクアが自作した過去問や予想問題。

 本番さながらの様式のプレテストであった。



「明言されてないが合格基準は得点率六割だ

 制限時間は自己採の時間を除いて測るぞ」


(フン! 余裕だよこんなの!)


「よーしじゃあ、始め――」



 〜〜〜〜



「「……ふむ?」」



 アクアの採点が終わったテストを

 ギドとガネットが訝しげに覗き込む。

 そこには何とも微妙な点数が刻まれていた。



「得点率……二割、ですか」


「後半は時間が足りず空欄ですね」


「ぅ、ぁ……」



 青ざめる魔物の肩を共犯者は優しく叩いた。



「君、不合格です」


「うわぁああああああああああああーーッ!!」



 試験まで残り一年。

 ベリルの退屈は吹き飛んだ。



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