集いし者への四重奏(カルテット)5
「ようやく来たか、エルザ。」
一国の王はその見た目にあった威厳のある声でいった。
王家の血のなかで洗練された整った顔は年のせいか銀髪に代わり始めた金の髪と強い意思を感じさせる瞳を持っていた。
「お父様、堅苦しいあれこれは不要です。現在の詳しい状況を教えて頂けませんか?」
いくら父とはいえあんまりな物言いに王は苦笑したようだった。
「まあ先に座りなさい。」
と自分が座る高級感漂うソファーの向かいを示す。
王の横には先程とは違う皇帝守護とメイドや執事が控えており、翔太は王と言う立場の大変さをかいまみたような気がする。
少なくても自分では常に沢山の人に囲まれて世話をされるのには耐えれそうもない。
「そちらの二人は何方かな?」
エルザが席に座るとメイドが自然な体運びで前に出て礼をし、ソーサーをおく。
器が満たされていく音にエルザは小さく深呼吸してからその紅茶に手をつけた。
半分ほど一気に飲み干し、少し落ち着いてからエルザは口を開いた。
「この二人は冒険者仲間だ、この前の『森』や遠征の件で命を助けて貰った。」
やけに仲間という部分を強調しながら言ったエルザは顔の色を変えて向かいを伺った。
「それは・・・娘の命を助けて貰ったというのに正式に礼を言えなくて失礼した。しかし今回の件でようやくはっきりと礼がいえそうだ。」
当たり前のように顔を下げようとした王を必死に押しとどめ、こちらが礼をする。
見るとキリカも顔を恐縮させながら焦っていた。
「い、いえ。そこまでいって頂かなくても。」
いってみれば一般人に総理大臣が頭を下げたようなものだ。
・・・これが王か
もっと固いイメージがあったけれどそれを払拭するようなインパクトがかれにはあった。
「一人の父親として当然の感謝さ。」
と朗らかに笑いながら表情を真剣なものに戻す。
「エルザ、お前の言っていたことだが正式に巡回の兵から魔法映像での報告があった。これはそれをまとめたものだ。」
王は数枚に重ねた紙をエルザに手渡すといぶかしげに受け取ったエルザの目線が書類の上を滑っていく。
「・・・王都から南部で魔族軍確認、亜人部隊 小鬼人食い鬼が主軸に見たことがない亜人を含めて最低三万。低級、中級主軸の魔族最低一万強、魔人の姿あり。・・これは。」
「そうだ。本格的に開戦したといってもいいだろう。奴等に宣戦布告などという選択肢はないからな。」
「しかし、お父様!現在の城にいる兵力を総動員したとしてもこれでは圧倒的な戦力差があります。」
目を見開いたエルザは焦ったように立ち上がりかけた。
「それはわかっている。なので冒険者や各領地や別の国になどに援軍を打診している。」
王は厳しい顔で頷いた。
「なので数はなんとかなるかも知れないが・・問題は最上位の悪魔や魔人だ。奴等は数でどうにかなる相手ではない。無駄に死なせるだけだ。」
「・・・なのでジェイドを召集したと。」
深く頷いた王に翔太は質問をする。
「僕達が魔族軍の痕跡を今日見たのですが援軍は間に合うんでしょうか。」
「今日見たと・・・」
「私もそれは気になっています。」
王は暗い顔をした。
「少数精鋭の部隊や、付近の領主はもうあつまっつているのでよいが、奴等の行軍速度が遅いのは付近の村を襲っているからだ。」
「そんな・・・」
「もう数々の村がやられた。しかしそれでも長い時間は止めることはできなかった。」
王はエルザの目を見つめて言った。
「後一日もたたずにやってくるだろう。わしはその指揮を勤めなければいけない。
エルザ、お前にも部隊を率いて戦ってくれ。会合は夜ある。」
「大体の理解はできた。一度準備にいってくる。翔太殿、キリカ殿、行こう。」
エルザは素直に頷くと立ち上がって部屋を後にする。
出るときには丁寧に礼をして。
閉じられた扉の奥で王は窓をみた。
窓の外では召集された兵たちが着々と準備を進めている。
「予言の時がきたのか・・・・」
その呟きは小さく、室内の他の誰にも聞こえることはなかった。




