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破滅への序曲

「よし、ここら辺で一回野宿しよう。」


山を降りてしばらくすると風景は夕焼けが顔を隠す所であり、木の奥はすっかり見えなくなっていた。


気が競っていてすぐに降りてきたのは良かったがそのあと、時間帯を考えてガルドのログハウスで一泊したら良かったと後悔する。


「え?」


「どうした?ああー、野宿は嫌かー。急いで降りてきたのは悪かった。一応人数分の寝袋とテントは持ってきたけど。」


いきなり馬の操作も忘れて顔を固まらせたエルザを見て翔太は思わず苦笑してしまう。


本人の性格と態度で忘れがちになってしまうがエルザは王女様なのだ。その事がなくても女の子として野宿なんていやだろう。


そういう気の回らない人間にはなりたくないと常日頃から思っているのだがどうにもうまくいかない。


小さい頃から親からひとつのことに集中しすぎて回りが見えていないと言われていたがなかなか難しい物だ。


「いや、そういうことではなくてだ。私は上に立つものこそ部下の気持ちを知るべきだと考えているからな。普段遠征なんかでも部下と野宿しているので平気だが・・・その。」


その言葉に改めて少しだけ一緒にいたエルザの部下の人達が思い出される。


あの人達もかなりエルザに振り回されているんだろうなー。と思いながら聞いていると横のキリカが


「その?」


といって首をかしげる。


「あー!もういい。問題ない。テントを敷こう。」


「いいのか?」


そういわれると気になるが詮索はあまりしないほうがいいと思ってそのまま魔法鞄からテントや寝袋を取り出す。


エルザは顔を伏せたままテントを受けとると向こうを向いて素早く組み立て始める。


いつも野宿しているという言葉の通り瞬くまに出来上がっていく。


「なんだったんでしょう?」


「さあ?」


お互いに顔を見合わせて首をかしげたあとに各々で準備を進める。


そのまま暗くなる頃には野宿の準備をもすみ、

中に入ると思ったよりも暖かく快適だった。


恐らくインベントリに入ってるアイテムはこの世界でも最高峰のものらしいのでそのお陰だろう。


確か効果で所有者が許可した人以外のかなりの魔法耐性が高いモンスター等の接近を禁止することができたはずだった。


これも凄い魔法道具なのだろうかと思いながら寝袋を敷いているとエルザおずおずと


「その、着替えたいのだが掛け布はあるだろうか?」


と聞いてきた。


「あーそれなら俺外に出とくよ。」


といって自分も着替えとこうと服を持って外に出ると幕を下ろす。


手早く着替えをすませてしまうと欠伸をしながらテントに近づくとまだ絹の擦れる音が聞こえたので


「入っていいか?」


と聞いておく。まあこのくらいは普通だ。


「ああいいぞ。」


しばらく音が連続するとそのあとに返事が帰ってくる。


布をめくって入ると着替え終わった二人が座り込んでいた。


「翔太さん、エルザさんが私は着替えるのは別にいいって言ったのに。」


となんだか無理矢理着替えさせられた感じのキリカは紫色のフリルがついたパジャマに着替えていた。


サイズは少し大きいようで布が余っていろんな所がダブダブになっていた。


「大丈夫だよ。似合ってる似合ってる。」


「そうだぞ、前に私の来ていたものを持ってきてよかった。」


そういうエルザの方を見やるとエルザは少し頬を染めて目をそらす。


さっきから調子が悪いのかと言う風に思っていると


エルザは少しの意を決したようにこちらを再度見やると


「似合っいるだろうか?」


と聞いてくる。


エルザは飾りが少な目の白のネグリジェっぽい姿で鎧姿しか見たことがなかった翔太には少し眩しく写る。


うん、お姫様してるわ。


「エルザも凄い似合ってるよ。」


「本当か?それはよかった。」


エルザは嬉しそういうと、


「これは私もお気に入りなのだ。」


といい笑顔で微笑んでくる。


その自然な顔に少し胸を打たれながらまだ少し赤いエルザの顔を見る。


いつもの調子が出てきたわけでは無さそうだが元気そうなのでよかった。


しかしこうしてみると異世界に来たって言うことを自覚させられる。


異世界ハーレムものみたいなご都合主義な世界があるか!と思っていたが現実に目の前にかるのだから恐ろしい。


「ああ、そう言えば俺は外で寝ようか?さっきもエルザ気になってたみたいだし。」


「え?あー本当に大丈夫だ。テントのほうが快適だろう。」


エルザは何故か苦笑しながら顔の前で手をふる。


「?まあいいか。じゃあそろそろ寝よう。」


翔太は寝袋に入り込むと二人も寝袋に入るのを見届けてからも近くにあったランプを消してゆっくりと眠りについた。



エルザはなかなか寝付けずにゆっくりと寝返りをうった。


すぐ近くに翔太の顔があり、少し目を大きく開いてそのあと赤い顔のままふぅーとため息をつく。


「本当になんなのだろうな、この感覚は」


ゆっくりと寝息をつきながら眠っている翔太の顔をじっくり見ながら再度ため息をつく。


「変に思われていないといいのだが。」


なんだかキリカ等と親しげに話したりしている翔太を見ていると時々胸が痛くなるのだ。


「こんな性格の私と話しても楽しくはないだろうな。」


自分が必要以上に生真面目な性格をしているのはわかっているつもりだ。


「何が宮廷の花だか、本当に呆れさせる。」


時々パーティなどで貴族にいわれるおべっかを思い出して少しの気持ちが落ち着く。


そのままじっと翔太を見ているといきなり翔太が体勢をかえこちら側に手と頭がむく。


その手に向かって手をゆっくり伸ばして。





「駄目だ駄目だ私、本当に今日はどうかしている!」


大声を出してしまったことに気づいてはっと手をおさえるて翔太の方を見るが起きる様子はなく。

まだ夢の中にいたままだった。


なんだか感情に振り回されてばかりだ。


「もう寝るか」


胸を撫で下ろしたまま再び寝袋に深く潜り、睡魔に誘われるまま意識を手放した。







出発してから異変に最初に気づいたのは馬の上で翔太と手綱の間にすっぽり挟まっていたキリカだった。


「翔太さん、翔太さん。」


「ん?どうしたんだキリカ。」


翔太は少し目線を下げると上半身だけを捻ってこちらを見ているキリカと目があった。


「今戻っている方向なんですがかなり高い煙が立っていませんか?」


そういわれて進行方向を見やると目を凝らすようにしてみる。


この体の超人的な視力では日常生活に支障が出るのでいつもは使わないようにしているのだ。


カメラのズームをするように視界が拡張されていくと遥か遠くの草の数まで見えるようになる。


そのまま上に視点を持っていくと大きな山の上から煙が立ち上っているのが確認できる。


「あれは・・・?近いな。」


「あの辺りってくる時に寄った村があった所じゃないですか?」


キリカの言葉にはっとすると共にその記憶力に感心する。


「言われてみれば確かにそうだ。急いだほうがいいかもしれないな。エルザ!」


「どうした?翔太殿。」


「話は大体聞いていただろう?そんなわけだ。もう少し急がせよう。」


「了解だ。」


手綱を強くひいて急がせると馬はその意を受け取り、風景を後ろに置き去りにしていく。


行く手は空を覆うほどの雨雲だった。

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