ログハウスにて 3
最初に感じたのは懐かしいようなじんわりとした暖かさだった。
「・・・・美味しい。」
ゆっくりと長く煮込まれていた野菜が溶けるように口に入っていき、そこに大きめに切られた厚い肉が訴えかけてくる。
適度に胡椒がふられたそれは噛めば噛むほど味が溢れてきて、そのしつこくない旨味は舌を充分に楽しませる。
何処か粗野だが奥深い味は懐かしい思い出のように広がって消えた。
明らかにこの世界では別格、前の世界だったときでもここまで腕の人はあまり見たことがない。
「ガルド、これは相当の料理だな!」
他の二人は全く想定外だっちようで目を丸くして呆然としている。
エルザにいたっては口の端からシチューが少しこぼれている始末だ。
流石に見ていられなかったので机の端に立て掛けられていた小物入れからナプキンを取り出して優しく口元を拭うとエルザは突然気を取り戻してしかし手を止めずに二杯目にスプーンを運んでいく。
「これで独学は凄いなー」
と素直に感嘆するとガルドは
「まあ最初の頃はいろいろ学びにいってたりしたがな。自分で探求したほうが性にあってたんだ、」
そういって豪快に笑うと更に続ける。
「このビーフシチューも、もともとは肉も固くて味が単調なもんなんだ。ここに来て最初に研究し始めたがこれは納得がいくところまで成功した。そうやって味がわかる人に食べてもらえるってのが嬉しいんだよ。」
彼は翔太を指差していた。
どうやら彼に言いたかった料理の細かい感想は余さず顔に書いていたらしい。
「まあ美味しいものをわかる人に食べてもらいたいって言うのはわかるけど」
そこでゆっくりと苦笑する。
「そういう境界線も全部取り払える料理が作りたい。っていつも思って、いや想ってるんだよ。」
完全に自論だなと気づいていながらも少しアクセントの違う言葉で思いの丈を伝える。
それをガルドは神妙な顔で聞いていたがふぅーっと長くため息をつく。
「確かにそんな考え方もあんのかもな。」
彼は一方で肯定しながら否定をする。
「そんな風に全員に賞賛される料理があっても『わからない人間』はいるもんだ。」
そのままでは平行線だと思い話を打ち切る。
譲歩はすべきでも誰にだって譲れないものはある。
「そろそろ立とうかと思ってる。ガルドの料理も食えて噂以上だってのも証明されたわけだし。今度はもっとあっと言わせるような料理を作りにここにくるよ。」
翔太が手を伸ばすとガルドはその手をがっちり掴んだ。
わかりあえなかった訳ではない。
ただ、譲りあえなかっただけだ。
それがガルドの料理で翔太の料理だっただけだ。
共生して悪いいわれはない。
「ずいぶんと早いな。もっといればいいのによ。」
「いやーなんか燃えきちゃってさ。ちょっと家に帰って試したいことが増えたんだよ。」
これで前に進む理由も増えた。ガルドの料理で元の世界の料理でもそれを越えるようなレベルで作れることがわかった。
翔太も寿司を作ったがあれではまだ完成とはほど遠い。
改良の余地を残しているうちはこのシチューには届かないだろう。
「俺もちかじか王都にいく必要がでてくるかもしれねえからそんときにはよろしく頼むぜ。」
ガルドは肩をバシバシ叩くとニヤッと笑う。
それに頷いて応じると二人に声をかける。
「そろそろ行こうか。」
たった一日の体験だったがそれはかなりの発見があった。
キリカは振り替えるとガルドに一礼をし、
「美味しかったです、また来ます。」
それにエルザもあわせて礼を言う。
「まあいいってことよ。俺も久しぶりに料理をふるまえたしな。最近はスモールと少しの客しかあってないからな。」
居心地がよいログハウスの扉は閉じられ、冷たい外気が流れ込んでくる。
ライバルともいえるガルドの出現で料理に対する気概がさらに高まっていく。
「なんか料理したくなってきたー!」
「さっきしたばっかりじゃないですか、」
とキリカは少し笑いながら言う。
「本当に翔太殿は料理が好きなのだな。」
少し遠くを見るような目でエルザは口の端に笑みを作る。
そうして歩みだした足取りは軽く弾んでいた。
先に何があるかも知らずに




