ログハウスにて
「ここが俺の家だ。」
と指差した先には通常よりもかなり大きなログハウスで丸太を積むように作られており、苔が所々に蒸していた。
入り口には松明をおくスタンドが両側にたてつけられておりとても生活感が感じられた。
「まあ入れや。」
と言ったあと、ログハウスの側にあった小屋から巨大な何かがガルドにとびかかる。
そのままガルドに覆い被さって吠えた。
「落ちつけってスモール。お客さんだ。あんまりほえるな。」
ガルドはゆっくりと体勢を上げるとその巨大な何かの頭を撫でる。
「朝さっき餌やっただろ?もう少し待て。」
ふとこちらの様子に気づいたように見てくる。
「あー、こいつは俺の飼い犬のスモールだ。こいつよく食うからご飯作ってやるのが大変でよ。」
困ったものだといっている後ろでスモールは尻尾をぶんぶん振り回している。
「一つ、つかぬことをうかがってもいいか?」
「敬語はいいって。で、なんだ?」
「何処をどう見ても小さいではないのだが。」
先程の行動を見てわかるように二メートル以上のガルドが覆い被さられるほどスモールは大きい。
翔太はこの世界の犬はこんなのなのかと納得しかけていたがどうやら違うようだ。
「なにいってんだ。犬にしちゃあ今でもちいさいほうだろう。」
何故か意見は食い違っており、ガルドはキョトンとしていた。
「犬といったらグレーターヘルハウンドとか自然守護犬とか三頭犬だろ?あいつらと比べたら可愛いもんだ。」
その返答にエルザとキリカは唖然とする。
「それは例えが可笑しいだろう!あのレベルの魔物を犬と言っていいのか?」
「とにかく俺はこいつより小さい犬なんてみたことないぜ?」
ついにエルザは空を仰ぎ始めた。
「あー、それならいい。しかし本当に街に降りたりはしないんだな。」
「まあほとんどない。」
といいながらスモールを小屋に戻しにいく。
「こいつにはまだちょっと山の奥は危険だからな。しっかりと見てないと。先に家に入ってていいぞ。」
そう促され、思い立ったように全員でログハウスに入っていく。
なんだか気づくとこの人のペースになってしまう。やっぱり特徴の濃い性格だからか。
ログハウスの中はとてもさっぱりとした雰囲気で奥の暖炉がパチパチと暖めながら燃えている。
ほとんどの家具が木製でとても綺麗な艶をはなっており、いい樹を使っているのがわかった。
用事は終わったのか後からガルドが入ってくると荷物を壁にかけながら
「キッチンは好きに使っていいぞ。まああんまり汚さんようにしてくれや。」
と言って席に座る。
「料理の仕方でもどのくらいの腕かはわかる。なるべく時間のかからない物だと俺が作る時間もあるかもしれんぞ。」
と笑いながら、しかし真剣な目でこちらを見てくる。
「ガルドは魚食べるのか?」
と好みの確認をしておくと。
「ああ、ほとんど川魚だけどな。」
と承諾がくる。
翔太はキッチンの前にたつ、宿屋のキッチンよりもしっかりとした作りで調理器具もそろっている。
しかし今回はほとんど使わないが、
まず分量を見ながらたれを作っていく。これを作るのには尋常ならざる努力をした物だ。
幸い市場で似たようなものを見つけ、それを頑張ってもとの味に近づけたものだ。
本音を言うとまだ違うところがあるのだがそれはしかたない。
できたタレに加えてさらに小瓶を取りだし、机におく。
「その小瓶の調味料はなんだ?初めてみるが。」
ガルドが不審そうに聞いてくる。
「これは醤油みたいなものです。」
「ショウユ?」
「まあ本来は大豆という豆を発酵させたものを使うのですがそれは出来ませんでした。」
「豆のほうも聞いたことがねえな。しかしそれは楽しみだ。」
さらに材料を取り出していき、最後に本来蒸すのに使うのらしい窯を取り出す。
そして米を取り出して井戸の水で研いでいき白く濁った水を捨てる。この時研ぎすぎないよう注意する。
結論から言うとこの世界にも米はあった。あくまでも麦が主体だが米も売っており。今回はそれを買ってきた。
すぐにできる炊飯ジャーを懐かしく思いながら米を炊いていく。
「なかなか面白いことをするなー。米をそんな風に使うっていう発想はなかった。」
「私もあまり米は食べたことがないな。そこまで出回ってもいないし。」
「俺の故郷じゃあ米は結構主食だったんですよ?まあ最近はパンや麺なんかが多いですけどね。」
なんとか方法を思い出しながら炊きおわり、檜っぽい樹でできた器にうつしかえて酢を入れていく。
水加減少な目のご飯は酢を瞬く間にすっていく。
これを切るように混ぜ、水分を飛ばしながら蓋を閉めておく。
次に魚を取り出して裁いていく。
やはり新鮮さが命なのですばやく包丁をたてながら切っていき並べていく。
思ったよりも時間がかかってしまった。
なるべく早めに作るようにしながら、しかし丁寧に終わらせる。
蓋を開けてから手に酢をつけると人差し指にわさびに似た味の植物をすりおろした物をつけ、シャリを優しく崩れないように握っていく。
「今度はビーラの根か、全く普段使わないようなものばかり使っていくな。」
最後にネタをのせていき皿に盛り付けて小皿に自家製醤油?をかける。
「はい、お待ちどう様。全員分作ったから二人も食べてみて。」
これはある意味賭けだった。生魚を食べる習慣がない地域では好まれないこともあり道具もそろっていない。醤油や山葵も未完成だ。
しかし翔太はこれを選んだ。寿司は翔太が得意な料理の一つであり、向こうの家でよく作っていた。
「これはなんで料理なんだ?」
「これは寿司だよ。醤油に少しつけて食べてほしい。山葵は少な目にしているから大丈夫だと思う。」
そういって翔太も長椅子につくと手をあわて言う。
「頂きます。」
それにキリカもなぞるように復唱する。
「頂きます。」
エルザはきょとんとしていたが慌てて真似をする。
ガルドは軽く心臓の方に手を持っていきながら礼をすると言う。恐らくガルドの生まれの地域(もしくはガルドが決めたのもも)の食事の挨拶をしたようだった。
「見た目はとても美しいな。」
とガルドは寿司を掴み、少し醤油をつけてから大きく口を開いて口に入れる。




