霊山へ
「私が聞いたことろによるとだがこの町から西にしばらくいった所に山頂が雲をつき抜ける姿から霊山と呼ばれる非常に高い山があるのだが。」
エルザは前置きを入れたあと、語り始めた。
「その山の頂上付近にログハウスの店があり、そこでの料理が絶品だという噂だ。」
そして肩をくすめて付け加えた。
「しかし、気に入った客にしか作らないという話だし強いモンスターの生息している霊山に本当にあるのかどうかも不明だ。」
癖で少し腕を組ながら顎に手を当ててしまう。
「なるほどなー。しかし本当にモンスターの生息域なら客何て来るのか?」
「それが専属の冒険者を雇ってまで登ったけれど店主に気にいられなくて料理を作ってもらえなかった貴族がいる何て言う眉唾な話もあるくらいだ。」
「それは凄いですね!」
とキリカは言うがにわかには信じがたい話だ。
そんな自分に利益のならない店をひらいて権力の象徴とも言える貴族に逆らって料理を作らないなんて。
しかしそこまで言われると見てみたくもある。
この料理の盛んではない世界で主義もかえず。料理への覚悟のみで店をだす。
そんな生き方は前の世界ではけしてできなかったことだ。
「俺はいってみる価値あると思うよ。」
興味が出てきた翔太は宣言する。
「なら善は急げだ。早くいく支度をしようか。」
「そうだな。」
そう返してきたエルザに不思議になる。
「エルザも来るのか?」
それを聞いたエルザはずっこけそうになる仕草をする。
「だめなのか!?」
「いやそうじゃなくて王女としての仕事とかないのか?最近俺らと一緒にいるけど大丈夫なのか。」
「それについては大丈夫だ。」
とエルザは胸をはる。
「そのために部下がいるのだしな。本当に必要なもの以外はしていない。」
なんとなくこき使われているエルザの部下が想像できてなんとなく『ブラック企業』という単語が頭を掠める。
可愛そうな気もするがまあ、エルザはそこまでデスクワークが向いていないように見えるししょうがないか。
「そういうことかーけどエルザってそんなに料理に興味あったっけ。」
「え?ああ、それは・・・」
少し目がそれるが急に気を持ち直したようにガバッと顔が上がる。
「この前に翔太殿が料理を作っている所を見て興味をもってな。」
と朗らかな笑顔で言う。
「キリカも来るんだよな?」
と一応意思を聞いてみると
「はい、勿論です。」
嬉しそうに頷くとぱぱっと皿を纏めて
「洗っときますね?」
という。
「いいよ、いいよ。下積みの時に散々皿洗いしたし、なれてる。」
「翔太殿にもそんな時代が?ひたすら剣の修行をしていたのかと思いました。」
「私もです。」
「そんなことないよ。」
と苦笑しながら言うが、ふと前の世界のことを思い出した。
とてもひた向きにただ料理のことを考えて生きた人生。
そんな人生をわかってくれる程の料理人がその山の上にいるのかどうか。
「じゃあ急いで準備をしよう。明日にはもう主発したい。」
そういって翔太は勢いよく立ち上がった。
「翔太殿~見えてきましたよ。」
「おー間近でみると凄いですね!翔太さん。」
町をでて途中の村で休憩を入れたあと、特に障害もなく(道中にでたモンスターは弱かったので三人により瞬殺された。)村では料理を振る舞ったりそのお礼に調味料や特産品をわけてもらったりした。
ーー早速、新鮮化魔法鞄が役にたったなー。本当にいい買い物をした。
そんなことを思いながら正面を見ると大きな山肌がはっきりと見えた。
翔太の視力は常人と比べるとあり得ないくらい上なのでここからでも樹の一本一本が確認できる。
「本当にでかいなー富士山とは比べ物にならない。」
「富士山ってなんだ?そんな山は聞いたことがない。」
「富士山は俺の故郷の山だよ。あれも雲を貫くくらい大きかったけど、これのほうがはっきり大きいってわかる。」
「話によればしっかりとした道はなくて半ば獣道のような道が繋がっているそうです。」
「まー直接山を登っていくよりかはいいよ。そっちを通っていこう。」
富士山より高い山を登るなんてかなりの大事だがこっちの世界の体は能力が違う。
向こうのオリンピック選手が子供に見えるような筋力や全速力で走っても息がきれないスタミナがある。
「了解です。」
「わかった。」
この二人も大丈夫だろう。この世界では見た目の筋肉と本当の筋力は比例しない。
キリカなどはとてもほっそりした腕をしているのに鉄の剣くらいなら曲げれる程力を持っているはずだ。
あと心配なのは高山病など(もともとあるのかどうかもわからないが)とかだが最悪アズリエルを呼ぶか魔法を使えばよいだけだ。
まあアズリエルには怒られそうだが、本当に緊急事態の時のみにしようと思っているので許してほしい。
何でも神頼みはよくないというし(この場合は少し意味が違うかもしれないが)
この前みたいな思わず肝を冷やすことはないように万全なことを確認してから登り始める。
踏みしめる草の音が只響くなかエルザに話しかけてみる。
「エルザも料理に興味をもったっていってたよな?」
「?ああ、そうだ。」
「けど今まで料理をしたことはないんだよな?」
「それは・・・使用人が作ってくれていたからな。」
「そうかー、じゃあ今度教えてあげるよ。その時にキリカも練習してみよう。」
「今度は成功させます!」
料理に興味を持ってくれるのはよいことだ。
将来、もし店を開くとなったときにはアシスタントか給事ができるひとがいるといいのだが。
「それは内の隊にも料理が上手いものはほとんどいないのでありがたいが・・・笑わないでくれよ?」
エルザの不安そうな声にゆっくりと首をふる。
「最初からできる人なんていないんだから大丈夫だって。何事も経験だ。」
料理をする楽しさを食べることの喜びをもっとこの世界に広めたい。と翔太は考えていた。
いまでも料理の店はあるが規模が小さく、数は酒場と変わらないくらいだ。
翔太はそんな希望を胸に山道を進んで行く。




