霧隠れの森 食後酒(ワイン)
淡い林檎のような香りを感じながら翔太は果物を手に取った。
見た目はかなり酷似しているが色や形状が少しずつ違うことが多い。
特に味はかなり違っており、今までの経験が通じないこともある。ただ、全体的にこちらの食材のほうが美味しいものが多いようだ。
これは自然が破壊されていないのが大きな原因のようだった。
「これは無花果?」
手に取った果実は紫がかった色をした無花果似にたものだった。
前の世界では無花果は市場には並ぶことが少ないものだ。味は酸っぱいものが多い。
「これ貰います。いくらですか?」
「一袋50銅貨だよ。けどいいんかい兄さんそいつはかなり酸っぱいぞ。」
「ああ、大丈夫ですよ。」
「そういか?ならいいが。」
翔太は皮袋を漁ると青銅貨を数枚掴みとる。
ようやくお金の使い方にもなれてきた。
少し毒々しい見た目の果実が入った袋を貰って歩きながら口に入れる。
「・・・っ!」
酸っぱいとは聞いていたがこれほどとは思わなかった。
口を刺すような味が広がるがすぐに清涼感が広がった。
「これは面白いなー。」
味が前の無花果と全く違うこの強烈な酸っぱさの次に清涼感がくるのは恐らく中心部分と外側の皮付近で味が違うからだろう。
こうしていると森での闘いが嘘みたいだった。
はぐれたあと、翔太はしばらく合流する方法を考えていたが突如天恵をえた。
「こういうときのヘルプだ!」
すっかり忘れていたのはヘルプの存在だった。
急いでステータスを起動させ、ヘルプの場所を押す。
「アズリエル!」
「ずいぶん遅いヘルプだったね。なんか私のこと忘れられてたみたい。」
瞬時にウィンドウが展開されそこにアズリエルの顔が写った。
アズリエルはほんの少しだけ睨むようにこちらを見るとそれと同時に更に奥を見通すように見る。
ただし無表情なので声に含まれる感情を察してだ。
アズリエルの目の色は深い井戸を見ているように恐ろしくもあり引き込まれるものがある。
「え、いやーそんなことないよ。」
と少しあせるが目線を少しずらしているアズリエルに尋ねる。
翔太の経験則ではこういうときは話をそらした方がいい。
「どこ見てるの?」
「画面外」
と短く返答がくる。
なんのことを見てるかはよくわからなかったけど
自分から注意がそれて安心する。
「えーっとそれですこし遠くに離れた仲間を探しているんだけど今持ってるアイテムじゃ相手を特定できる条件があるみたいで使えないんだ。」
「あー神を便利のいい小間使いみたいに使ってくれて・・・」
そういいながら
「まぁ暇だからいいけどね。感謝しなさい。」
と付け加えるところがアズリエルだ。
「それなら簡単よ」
アズリエルはそう言うとウィンドウの淵に手を掛けた。
そして、ゆっくりと顔をつきだしてくるとそのままウィンドウを透過してこちらがわに入ってきてしまう。
「えー!」
「何を驚いてるの?神ならこれくらい出来て当たり前でしょ。」
あーこれだから庶民は見たいな顔をされた。
けどそれよりも・・・
「顔近いんですけど・・・」
近くに出現するウィンドウから出てきたものだから鼻先があたりそうたぐらいの近さに出てきてしまった。
まあ咄嗟に少ししか下がれなかった翔太にも非があるとしてもこの神様はあまりよく考えてないと思う。
特に今下がらなかったら正面衝突だったぞ。
アズリエルは相変わらずの無表情で
「それが?」
といったので翔太はため息をつきながら一歩さがる。
やっぱり人間と同じ尺で考えちゃいけないわ
そう決心していると。
「さっきいいかけたことだけどあれは貴方が魔法を使えばいいのよ。」
とのたまわった。
「俺使えんの!?魔法」
てっきり筋力極振りだと思った。
「貴方の職業構成を見た感じだと使えるわよ。まー剣メインだから使える種類は多くないけど。」
それでも自分に強化魔法をつけられると言うのは大きい。
「魔法ってどうやって使うんだ?」
アズリエルは翔太のステータス画面を少し操作していたがしばらくして顔をあげる。
「これで名前を詠昌するだけで使えるようになったはずよ。まー探知系なら再会への追憶かなー。この魔法はよくその人をイメージしないといけないんだけどさっきはぐれたばかりならちゃんとイメージできるでしょ。あといくつかの魔法も教えとく」
と、棒読みで答えてくれた。
「OK、ありがと。」
といくつかの魔法を暗記していると
「・・・・・」
そこでじっと見つめられる。
なんとなく察した翔太は言う。
「ありがとうございました。」
「よろしい。」
少しでも表情を綻ばせてくれたらいいのだがまだ無表情のままだ。
「再会への追憶」
と唱えて二人のことを強くイメージするといるいる場所が克明に脳内に現れる。
「あの二人戦ってる。しかも敵の数はかなり多い急いで行かないと!」
アズリエルがウィンドウの向こうに引っ込むのを見てから全力で移動移動する。
そしてあそこで魔族と対面したのであった。
「あの時はもう少し遅かったら危なかったな。」
近くにあった屋台で肉や野菜を選んでいると不意に気になる建物を発見する。
「なんだこの建物・・・?光ってる。」
点々と続く屋台があるなかそこだけは屋台が開かれておらず、建物全体が光ってるように見えた。
「食材ももうほとんど買ったし入ってみるか。」
翔太は重厚そうなドアに手を掛けた。




