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霧隠れの森 第三の皿(ポタージュ)

そして、キリカ達は先程来たと思われる少し開けた場所まで戻ってて来ていた。


「だいたいこの辺だったですよね。」


「ああ、ここにも一応フェアリーライトをつけておくか。」


エルザが妖精の篭を振ろうとしたときだった。


鋭い風切り音がした。


「伏せて!」


キリカは覆い被さるようにエルザにぶつかると不意をつかれたようで簡単にバランスを崩し、そのまま勢い余って地面を転ぶ。


「いきなりどうした!」


エルザが驚いたように後ろを向くと木に深々と柄まで刺さった短剣があった。


当たれば致命傷まではいかないだろうがそれに近いダメージをおっていただろう。


「あ~あ、今のでしとめられたら楽だったんだけどな~」


気だるげな声と共に霧の奥から姿を現したのは銀髪の青年だった。


黒のシャツに似た薄いプレートアーマーを身に付けており、たくさんの銀の装飾がされていた。


「貴様、何者だ。」


「人間風情に名乗る気はないね。」


「エルザさん気をつけて、そいつ驚くほど強い。」


エルザはその忠告に頷きながら返答する。


「逆にその台詞と風貌からわかるな・・・・貴様は魔族だな。」


その台詞に目を細めると肩をくすめる。


「はいはいご名答。それじゃあお前ら、後はやっとけ。死体は好きにしていい。」


その言葉と共に現れたのは全てが異形のものだった。


霊体や捻れた角を持つ牛のような二足歩行のものや目に羽が生えて飛んでいるようなものまでいる。


霧に乗ってその大きな悪意と嘲笑の声が聞こえてくるようだった。


「悪霊(バーゲスト)、浮遊(フローティング)する眼(アイ)下級魔族か、しかしこの数は・・・」


最下級、下級、上級等に分類されるがだいたいの下級魔族は悪魔と呼ばれる。


強さの幅も大きいが下級魔族ならエルザが負けることはないだろう。


この数でなければ悪魔達はこの開けた場所を包囲するように出現しており、10や20ではきかない。少ないが上級魔族の姿もあった。



しかも更に霧の向こうから新しい影がちかづいてきていた。


総数は数えたくないほどいるようだった。


ーこれだけの数の悪魔を従えているとなるとキリカの言う通りあの魔族は普通じゃない。どうにかして撤退はできないか・・・・。



そんな想いとは裏腹に悪魔達は一斉におそいかかってくる。


「光(ライト)の解放(バースト)!」


悪の力を持つものに有効な武技を展開すると盾を構える。


キリカは天河を構えると腰を落として迎撃体勢にでる。


そして濁流のように悪魔は押し寄せてきており近づかれる度に剣を当てる。


「盾打突(シールド ストライク)!」


盾系統の初歩の武技を使って剣を振ったあとの隙を無くしていく。


この武技は硬直時間(デイレイ)も少なく、呼び動作に入るのが簡単なので重宝している。


敵の鉤爪を盾で受け流しているとキリカの姿が見えた。


その戦闘の姿は鬼神のようでありエルザから見ても動きが霞んでみえるようだった。




その実、キリカは焦っていた。


予想より数が多すぎる。

敵一体一体の戦闘能力はさほどでもない。

翔太から貰った刀は敵に吸い付くようであり一撃で急所を抉っていた。


もともと暗殺者(アサシン)は一対多の戦いは得意ではない。


一体を切っているうちに他の攻撃への対処はおろそかになりたまには攻撃も当たる。


キリカがもっとリーチの長い武器や広域魔法を使えれば別だっただろうが分が悪い。


天河の効果なのか敵に攻撃を当てる度に黒の刀身に散りばめられた星のような輝きが光り、かすり傷が癒えていくがそれではカバーしきれない。


もっと攻撃回数を増やさなければ、

もっとスピードを上げなければ。


まだ腰にポーチ型の魔法鞄を着けたままで少し邪魔になっていた。


今はこのくらいの少しの邪魔でもなくしといた方がいいな。これと予備の刀も・・・


そこで天恵のように思い付く物があった。


そのまま凍刄零機を引き抜くとポーチと紐を切ると構える。


命のかかった闘いの途中に戦闘スタイルを変えるなんて普通は正気の沙汰ではないがその両手に刀を持つスタイルはよく身体に馴染んだ。



「はぁ!」



キリカは片手で防御、片手で攻撃をしながら死を撒き散らす。


「螺旋斬!」


試しに本来は二つの武器を持つと言う条件を達成していないためキリカは使えない盗賊の短剣系統の武技を使ってみる。


緩やかに螺旋を描いた刀は赤く光り、前にいた複数の敵を葬り去る。


凍刄零機の効果か凍りついたまま絶命した悪魔には見向きもせずに刀を振るう。


そこで大型の悪魔が飛び出してくる。


その大きな木槌(モール)にたいしては流水辻切、本来敵の攻撃を受け流しきってから一撃のカウンターをするこの武技は受け流しと同時にカウンターを喰らわせ体を捻りながら受け流した方の刀でも追撃を加えるという強力な物になっていた。



そこで凍刄零機の特殊効果を起動し、振りながら氷の刃を伸ばす。


「はぁ・・・はぁ・・・」


ここまで止まらずに動き続けていたので流石に息がきれてくる。


これを期にと殺到してきた攻撃をバックステップで避け全身を弛緩させる。


一気にスピードをトップにまで持ってくると一気に回りの悪魔の特殊攻撃を使わないうちに斬る。


早くエルザを助けにいかないと。見たところエルザもかなり強そうだったがこの人数ではつらいだろう。


まだ。諦められない。

この手が動く限り刀を振い続ける。

翔太にあそこまでしてもらっていて恩を返さないなんて・・・自分はどうなってもいいエルザだけは必ず守る。


闘いはまだ終わらない。



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