URユニットバトル2
スキルのクールタイムが終わるまでの間、議論した末に選んだのは……工学士のエルシア・エテルライトだ。
エリザと非常に迷ったが、支援系で機械ユニットまで出せる点が期待できたので彼女に決まった。
魔導工学士って称号があるぐらいだから魔法にも詳しいだろうし、エステルと協力して魔導具作りの強い助けにもなるはずだ。
さっそくURユニットバトルでエルシアを選択し俺達は別空間に飛ばされた。
場所は室内で鉄製の床や壁に覆われた場所で、ぶっといパイプやケーブルがあちこちに張り巡らされている。
何かが動く鈍く重たい音や鋭い金属音、透明な管には光る謎の液体が流れていて見るからに研究所だ。
「ここは研究所か? 随分近未来な雰囲気だな」
「私達の世界にもこんな場所があったのでありますね。初めて見る物ばかりなのでありますよ」
「私は工学士という方自体、聞いたことがないので無縁でしたよ。魔法が関わっているようですが、エステルさんはどうですか?」
「私もこういう施設は見たことがないわ。あちこちから強い魔力の反応を感じるから、魔法で機械を動かしているようだけれど」
GCの世界は剣や魔法がメインのファンタジー世界だが、一部じゃ俺のいた世界の現代技術を超えてる部分もあったからなぁ。
エステルを見ていればよくわかるが、魔法や魔導具が便利過ぎるせいか機械の発展もだいぶ偏っていた覚えがあるけど。
研究所内の様子に俺達が関心を抱いていると、マルティナが腕を組んで何やら考え込んでいた。
「うーん……」
「どうかしたのマルティナちゃん?」
「いや、ちょっとね。前に似た施設を見たことがあってさ」
「知ってるのマルティナちゃん! 凄いんだよ!」
「全く同じかはわからないけどね。多分グドス帝国と関連がある場所じゃないかな。僕が前に探った、魔導機兵を作っている国だよ」
「ふむ、相変わらず物知りな奴だ」
そういえば前にサレナと関わった時に、魔導機兵を見ただとか言ってたな。
グドス帝国と言えば……期間限定イベントで話が出ていた気がするぞ。
詳しいストーリーは覚えていないが、魔導機兵ユニットが主体のステージで結構難しかった。
帝国出身のURユニットも何人かいるけど、エルシアは帝国所属じゃなかったはずだ。
俺は持っていなかったから詳細は知らないが、キャラクターシナリオを読めば何か話が出てきたかもな。
とりあえず研究所の通路をひたすら進んでいると広い部屋に出た。
通路とは違いパイプやケーブルもなく、頑丈そうな金属で作られた四角い部屋だ。
その中央には黒いスーツに白衣を羽織った女性が1人立っていた。
桃色の長髪は少しボサボサで乱れており、綺麗な青い瞳をしている。
目元には深い隈があり眼鏡をかけていた。
あれが今回選んだ対象である工学士のURユニット、エルシア・エテルライトだ。
彼女は部屋に入ってきた俺達に気が付く様子もなく、ぼーっと天井を見上げながら何やらブツブツと呟いている。
「はて、どうして私はここにいるのだろうか。移動した覚えはない……無意識? 時間がいつの間にか飛んでいることはよくあるがこれは初めての経験。……いや待て、夢の可能性もあるか? そもそも最後に寝たのはいつだったか……全く、夢と言うならもっと気の利いたものを見せるべきではないか。これだから融通の利かない我が頭脳は嫌になる」
あまりに上の空なエルシアの様子に声をかけるか迷っていると、ようやく彼女は俺達がいることに気が付いた。
「おや? ここに客人とは珍しい。人が訪ねてくる予定はなかったはずなのだが……もしかして迷い込んでしまったのかな?」
「あっ、いえ、迷い込んだ訳じゃ……」
「これは驚いた。まさか正直に答えてくるとは思わなかったよ。私をからかっているのかい。それとも本当に夢で私の頭が気を利かせて変化を加えたのだろうか」
目を大きく見開いたエルシアは本気で驚いているようだ。
えぇ……ただ普通に答えただけなのに驚く要素があったか?
俺が疑問に思っていると答えるようにエルシアは話を続けた。
「ここは人が偶然迷い込むような場所ではないよ。つまり君達は意図的に侵入してきた訳だ。それに警報も鳴らないとは不思議なことだ。心当たりがあるとすれば帝国ぐらいだが……この場所を知られたのはとても困る。既に報告もしているのだろう?」
「俺達は帝国とは無関係だ。偶然迷い込んだとは言わないけどな」
「ほお、なら何故ここにいるんだい? 帝国以外で私に用事がある者がいるとは思えないのだが。私が何者かは知っているのかね」
帝国って言うと、マルティナがさっき言っていたグドス帝国のことか?
口振りからしてまるで追われているような感じだが……俺達を帝国の追手と勘違いしていそうだな。
つまりここはエルシアの秘密研究所ってところか。
まあ、帝国の追手と勘違いされていようが、俺達はただURユニットバトルとして戦いに来ただけだ。
詳しく説明して誤解を解く必要もない。
「エルシア・エテルライトだろ。俺達はお前と戦いにきたんだ」
「どうやら君達のお目当ては私で間違いないようだ。戦いに来たとは穏やかじゃないね。何故戦いに来たのか言ってみたまえよ。話し合いで解決できるならそれが1番平和的だ。争いはあまり好みではないものでね」
「そ、そう言われてもな……」
エルシアは本当に戦う気がないのか、俺達をジッと見たまま動く素振りがない。
URユニットバトルなのに相手に戦う気がないことがあるのかよ。
話し合おうなんて言われるとどうも調子を崩されるな。
でも争いが好みじゃないなら、正直に話したら大人しく負けてくれる可能性も……なんて考えていると。
「せいやぁぁぁぁ!」
シスハが雄たけびを上げて光線を放った。
すると頭上から何かが落ちてきてその光線を阻んだ。
それは見上げる程の大きさをした巨大ロボット。
丸く鈍そうなフォルムに短い手足で、メタリックな緑色をした金属製の機体だ。
青く光るモノアイのカメラで俺達を認識している。
シスハの光線が胴体に当たるが何の変化もない。
元々シスハの光線に物理的威力はないけど、あのロボット自体の防御力も高そうだ。
「ちっ、防がれましたか。何ですかあのロボットは」
「お、おい、まだ話している最中だっただろ」
「大倉さんがよくやってることじゃないですか。URユニットバトルは絶対に戦いになるんですから話すだけ無駄ですよ」
確かにいつもの俺なら嬉々として奇襲をしていたが……どうもエルシアの雰囲気に呑まれていたようだ。
そうだよな、話せば大人しく負けてくれるなんてあり得ないか。
あんなロボットを即座に出せるってことは、戦う準備をしていた証拠だ。
「なんだい君は、神官のようだが非常識じゃあないか。会話の途中で攻撃してくるとは随分と野暮な真似をする。さては私が無神論者だと見抜いたのかね」
「うふふ、その通りです! 神は言っています、あなたを倒せと!」
「神とやらに嫌われる行いをした覚えはないのだが。理由が何にせよ戦闘は避けられないようだ。だが丁度いい、近々魔導機兵の性能試験を実施したいと考えていたところなのだよ」
そう言うとエルシアはパチンと指を鳴らした。
先ほどと同様に天井から次々とロボットが降ってきて俺達の前に立ち塞がる。
巨大な剣を持った赤い機体、巨大な銃を持った青い機械、空中を浮遊する黄色い機体。
最初の緑の機体と合わせて計4体の巨大ロボットが姿を現す。
「私自身は戦えないのでね。この子達に相手はお任せしよう。どれも私の造った自信作、大切に扱ってくれたまえよ。ちなみに緑がα三式、赤がβ六型、青がγact四、黄色がδ五号だ」
「わぁー! 大きいんだよ! それに名前も強そう!」
「クッ、僕に匹敵するネーミングセンスだね……。間違いない、あの人は強敵だ!」
「三式や六型って、その前にも他のバージョンでもあったのかしら?」
「よよよ……残念ながら試験中の不運な事故で失われてね。なに、研究に犠牲はつきものさ。その犠牲を無駄にしないためにも、今ここで彼らの存在した証を証明してみせようじゃあないか!」
「さっきまで戦いに乗り気じゃなかったはずなのに、なんかノリノリになっているでありますよ……」
エルシアはハンカチを出して泣くふりをしたと思えば、今度は片手を前に振ってテンション高く宣言している。
さっきから言動がふざけているというか、情緒不安定というか……なんだろう、なんか深夜テンションに近いものを感じるんですが。
あっ、そういえばさっき独り言で最後に寝たのはいつだったかとか言ってたな。
「さあ、それでは実験を始めようか。良いデータを採らせてくれたまえよ」




