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神話級のサレナ

 ついに姿を現したサレナ。

 宙に浮かぶ彼女を見上げていると、銃口に紫色の光がチャージされていくのが見えた。


「ちょっ――」


 慌ててエステルを抱えてその場から逃げると、極太のレーザーが発射された。

 ミニサレナの攻撃と比にならず、余波だけでダメージが入っている感覚がある。

 ノール達も回避していたが同じようで、全員に向けてシスハが回復魔法をかけていた。

 追撃が来るかとすぐにサレナの方を見ると、俺に銃口を向けている。

 だが、ミニサレナが俺を庇うように銃口の射線上に入ってきた。


『ヤァー!』


 元気よく叫ぶミニサレナを見て、サレナは銃口を向けつつも動きが止まった。

 サレナから細いレーザーが放たれてミニサレナに当たる。

 当たっても何も起きてないから攻撃性はないようだ。


「SLNーM00……該当端末なし。識別コード有効……再接続不可。上位権限実行……拒絶」


 ミニサレナを調べたみたいだな。

 何か命令しようとしたようだが、このサレナに権限がないようだ。

 緊急召喚で呼び出したサレナと完全に同じ存在じゃないってことか?

 サレナは俺達のことは無視してミニサレナに質問を始めた。


「問い。何故その人物に従っている」


『ヤァ、ヤァヤァ!』


「本機の命令……実行記録なし。SLNーM00を未確認機体と認定。回収、分析を検討」


『ヤァー!?』


 おいおい! もっと詳しく聞くのかと思ったらすぐ打ち切りやがった!

 回収や分析と言われたミニサレナも驚いて声を上げている。


 しかし驚いた理由はそれだけじゃない。

 ルーナが背後に迫っていたのだが、攻撃する直前にサレナが振り返ったからだ。

 まさか攻撃してくるのに気が付いてやがったのか!

 

 それでも間近に迫っていたルーナはカズィクルを放つ。

 完全に直撃したと俺は確信したが、サレナはブラドブルグの先端を指で摘まんで止める。

 スキルは継続中で槍はまだ赤いオーラを纏っていたが、ルーナの動きは完全に止まった。

 

 俺が唖然としていると、サレナはもう片方の手に握っている銃をルーナに向けた。

 極太の紫色のビームが放たれたが、ルーナは槍から手を放して飛び退いて間一髪で避ける。

 そのまま俺達と合流すると、サレナに握られていた槍も自動回収で彼女の手元に戻ってきた。


「カズィクルを素手で止めやがったのか……」


「あれって素手で止められるのでありますね……」


「こんな屈辱は初めてだ。次は貫いてやる」


 ルーナは歯軋りをして本当に悔しそうにしている。

 まさか片手の指先で止められるとはな。

 威力としては俺達の中じゃルーナは単体最強の火力だ。

 それが軽くあしらわれるって……勝ち目がなくないか。


 絶望的な状況だと思っている最中もサレナの攻撃は止まらない。

 俺達の攻撃が届かない上空から極太レーザーを連射してきたので、慌てて全員散らばった。

 俺はエステルを抱えて逃げ回っているが、時折レーザーが近くを横切り肝が冷える。


「うおっ、あぶね! くそ、空から降りてこねぇ!」


「ルーナの攻撃を防げるぐらい強いのに随分慎重だわ」


「本気で攻撃してこないのはある意味ありがたいけどな」


「様子見されているわね。何を考えているのかしら」


 サレナが本気ならもっと連射してきてもいいはずだ。

 なのに単発でレーザーを撃ってくるだけだから俺でも何とか回避が間に合う。

 代わりにサレナは空を飛んでいるから、俺達も攻撃する手段が限られる。

 一体何を考えているのか……強い上に油断もしてくれないとか勘弁してほしい。


「ダメだ、僕の友達でも憑りつけないや。それに負の力も弾かれちゃう」


「カノネスサギッタも当たらないんだよぉ!」


 マルティナとフリージアも回避をしながら色々試しているようだが、全く効果がないようだ。

 デバフも入らずスキルの攻撃すら回避されちまうとは。

 このままじゃ一方的に攻撃されてジリ貧になるだけだ。

 よし、あれをやるしかない。


「ノール、エステルを頼む。俺はやることがある」


「了解でありますよ!」


「お兄さん、気を付けてね」


 エステルをノールに預けて俺は駆け出した。

 脅威認定されているのか、比較的狙われる頻度の高いルーナの近くへ行く。


「ルーナ!」


 叫んでルーナに合図を送ると、察してくれたのか俺の方へ向かってくる。

 それと同時に俺はスパティウムを取り出して、サレナへ向けスイッチを押す。

 一瞬で視界が切り替わり俺は遥か上空に移動する。

 ガチャアイテムのスパティウムを使って俺とサレナの位置を入れ替えた。

 スパティウムはSSRだからURユニットバトルでも持ち込みが可能だ。

 

 エステルが魔法で対応してくれたのか、俺はゆっくりと降下しながらルーナの状況を見る。

 不意打ちが成功したのかサレナの胸部に槍が突き刺さり、貫通して背中から飛び出していた。

 見た目はかなりのダメージのはずだが、サレナは微動だにしていない。


 俺が着地するとルーナもサレナから離れて俺の方へやってきた。

 サレナは追いかける様子もなくその場に留まっている。


「ふん、一撃は与えてやった。だが手応えが足りない」


「結構な大ダメージに見えるが……」


「平然としていた。追撃は危険だから離れた」


 ルーナがそう言うのなら間違いないな。

 サレナの胸元から光が発生しているから、自動回復が始まっているようだ。

 何にしてもこれが千載一遇のチャンス。一気に畳み掛けるしかない!


「皆、スキルを使え!」


 もう同じ戦法は通用しない可能性が高い。

 どれだけサレナにダメージが入ったかわからないが、ここで全力を出す。

 まずはマルティナがスキルを使い、紫色のオーラを放ち出した。

 いつもと違いドス黒い色をしたゴーストが出てくるとサレナに飛びつく。

 それでもサレナは平然としていたが、全身が黒いオーラに包まれている。


「クックック! 僕が本気を出せばサレナ様でも無力化はできないのさ!」


「マルティナよくやった!」


 サレナは飛ぼうとしたが、ダメージとデバフのせいで動きが鈍い。

 更にスキルを発動したエステルが光の球体を出現させチャージしている。


「えいっ!」


 エステルの掛け声と共に光線が放たれサレナは飲み込まれた。

 しばらく照射が続き光線が収まると、全身から煙を上げてサレナは跪いていた。

 続くようにフリージアがカノネスサギッタを放つが、サレナは銃からビームを放って相殺する。

 流石に反撃はされるが確実にダメージは入っているな。

 もしかしたらこのまま行けるんじゃ……と思った瞬間。

 サレナがカッと強く光を発して紫色の粒子が放たれる。

 

 俺だけを避けるように粒子は一瞬で広がり、粒子に触れた途端にノール達は消えてしまった。

 ……えっ、何が起きたんだ? まさか今ので俺以外全滅?

 あまりにも、あまりにもあっけなさ過ぎる状況に俺が言葉を失っていると、サレナはゆっくりと近づいてくる。

 頭部のアーマーを外して素顔を晒し、左右の赤と青い瞳で俺を見て声をかけてきた。


「あなた方は魔神の眷属ではありませんよね?」


「えっ……そ、そうです」


「そうでしたか。ミニサレナを破壊し、私に損傷を与える存在がいたのに驚愕しました」


 サレナは本当に感心している表情で頷いていた。

 もう俺に戦意がないのを察しているのか、完全に戦闘は終わったような雰囲気だ。

 さっきまでの圧も感じないし穏やかな空気をしている。

 現れた時は聞く耳を持たない感じだったけど、意外と話をしてくれそうだな。

 せめて情報を持ち帰るとするか。


「……一体どれぐらい本気を出して戦っていたんだ?」


「1割にも満たないですね。私と戦うには全てが不足しています。損傷はありましたが、自動回復を覆す程でもありません。バリアも未展開です。最後の武装だけは少し本気を出しましたが」


「だよなぁ……。最後に使ったやつはなんだ?」


「攻撃性を含んだ神気粒子の散布です。対象のみを素粒子レベルで分解します。痛みを感じる間もないですよ」


 素粒子レベルで分解する粒子の散布って、どんだけやべー武装持ってやがるんだよ!

 てかそんなのどう防げばいいんだよ! 普通の高威力武装の方がまだマシだろ!

 URユニットバトルは痛みがあるから、痛みを感じなかったのはよかったかもしれない。

 それにしても対象のみを分解するってことは、俺だけは対象外にしたってことなのか。


「どうして俺を残して会話する気になったんだ?」


「何となくです。そのミニサレナを私は認識していませんが、私と関わりはあるのでしょう。なら脅威を排除した後に尋問はできます」


「俺は脅威にならないってことか」


 そう聞くとサレナは無言で頷いた。

 くっ、確かに戦闘力的には俺は無害扱いされても仕方ないが……こういう扱いは結構悔しいな。

 サレナはキョロキョロと周囲を見て話を続ける。


「この空間は特殊な物のようですね。ミニサレナが破壊されるまで私に一切情報伝達がありませんでした。それにあなた方も本体ではない……いや、私も似たような物のようですね。実物の再現体でしょうか? 直前までの記録データが曖昧です」


「そんなこともわかるのか?」


「あなたのお仲間の消滅時の反応が普通ではありませんでした。それに私の損傷も通常戦闘と異なります」


 流石機械神なだけある。この空間や自分が普通じゃないと自覚しているのか。

 緊急召喚時の記憶も残ってないかと期待したけど、この様子じゃそこまでは無理そうだ。

 でも違和感を覚えていたのに俺達と積極的に戦おうとしたのか。

 そんな疑問を抱いているとサレナが察したのか答えてくれる。


「あなた方と戦わなければならない。そう思考が誘導されていたようです。脅威がなくなりそれもなくなったようですが」


「疑問に答えてくれて助かるよ。そうだな……ある意味これは試験みたいなものかな。今の俺達には早すぎたみたいだ」


「私を再現し思考を誘導できる力は興味深いですね。何の試験なのか疑問ですが……そろそろ終わりにしましょうか。あなたを倒さないとこれも終わらないんですよね」


「ああ」


 サレナは銃口を俺に向けている。

 あー、しっかりと止めを刺されないと終わらないのは嫌だな。

 せめて楽に始末してほしい……サレナのビームなら痛みを覚える間もなく終わるか。


「もし次があるなら精進してください。今のままでは私の足元にも及びませんよ」


「ははは……わかってはいたんだけどなぁ」


 神級がどんなもんなのかの挑戦だったけど、これは予想以上だった。

 強化されたルーナですらああなるなら、一体今のサレナの強化はどれぐらいなのか。

 少なくとも緊急召喚時よりも強そうだから、凸5以上なのは確定しているだろう。


「それではご武運を」


 微笑んだサレナがその言葉を言うと共に、俺の視界は紫色の光に染まった。

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― 新着の感想 ―
まあ結果は予想通りでしたね それは兎も角コミカライズ14巻発売おめでとうございます エステルの水着姿が映える表紙だけど あれ?此の巻って水着回だったっけ?確か鉱山とシスハの追憶回だった気がするんだが
そうですか、本気度は1割にもみたないですか。。。 神話級はさすがに無謀だとは思ってたけど、ここまでとは。。。 ミニサレナの存在が切り口にならないか?と期待したが、そこまで甘くないよね。。。 いや、で…
書き手がやる気なくなるような事をわざわざ感想で書くな。 不満があるならもう読まなきゃいいやろ。作者さんのモチベ落ちたらどうしてくれんだ。
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