小さな強敵
いつもお読みくださりありがとうございます。
大変お待たせいたしました。
URユニットバトル、神話級のサレナに挑むことになった。
そこでフリージア達も集め、事前に説明をしておくことにした。
「わーい! またサレナちゃんに会えるんだね!」
「URユニットバトル……嫌な記憶しかない」
「うっ、なんかごめんなさい……」
前回の対象はマルティナだったが、ルーナだけ倒されたからなぁ。
そりゃ嫌な記憶にもなるだろう。
それでも神話級と聞いて、結局は参加してくれることになった。
さらに、もう1人……いや、1体。
ぷかぷかと俺達の周囲を浮くミニサレナも、元気に声を上げている。
『ヤァー!』
「ミニサレナまで付いてくる気とはな」
「相手がサレナなんだからミニサレナがいてくれた方がよさそうでしょ? 敵対せずに意思疎通ができるかも」
「敵対したとしても一瞬混乱させるぐらいはできそうですからね。リスクも特にありませんから連れていくのは賛成ですよ」
『ヤァ!ヤァヤァ!』
「ミニサレナちゃんもやる気満々なんだよ!」
ミニサレナはサレナのUR装備である武装ユニットの銃を取り出し、完全にやる気だ。
一応、因縁というか分身みたいなものだから聞いてみたが、ここまで乗り気とはな。
URユニットバトルのサレナと会ったらどういう扱いになるのか……。
「それじゃあURユニットバトル、スタートだ!」
全員準備も終わりスマホでURユニットバトルを選択し、画面に【神話級:サレナに挑戦しますか? Yes、No】と表示される。
Yesを選択するとスマホの画面が眩しく輝き始めて、目の前が光で埋め尽くされた。
●
光が収まると、自宅だったはずの景色は、一瞬で何もない荒野へと変わっていた。
昼のように明るいはずなのに空は薄暗い。煙が立ち込め、焦げ臭さが鼻を突く。
地面には大きなクレーターがあちこちに開いていた。
遠くには船のような物体が浮かび、極太の光線を放っている。
その周囲では無数の人型らしきものが飛び交い、光線と爆発が絶え間なく繰り返されていた。
「ここは……どこだ? バカでかい船みたいなもんが飛んでるけど……それに爆発音までしやがるぞ」
「戦闘、でありますかね。ここは多分戦地なのでありますよ」
「えっ、戦地だと!?」
「主戦場とは離れていますけどかなり大規模な戦闘を行っているようですね。戦争ってやつですよ」
「随分と物騒な場所からのスタートじゃない。マルティナの時と全く違うわね」
マルティナの時は静かな墓場だったのに今度は戦場近くかよ。
見渡す限りの戦場だ。マルティナの時の静かな墓場とは何もかもが違う。
「あ、あれはまさか魔導戦艦!? 本当に空を飛んでる!」
「知っているのかマルティナ」
「滅神大戦中に使われていた戦闘用の乗り物だよ! あれを母艦にして魔導機兵を戦わせていたんだ! 古文書で読んだことがあったけどあれも真実だったんだ……」
「相変わらず物知りな奴だ」
「色々詳しくて凄いんだよ!」
あの浮いているのが魔導戦艦……それじゃあ周囲を飛んでる小さな人型が魔導機兵なのか?
見た感じだと母艦を落とされないように守っているみたいだな。
マルティナの時と違ってすぐにサレナが現れることもなく、俺達は周囲の様子を確認することにした。
出来るだけその場で動かずに警戒しつつ、マルティナのゴーストに頼んで探索してもらう。
「探索してみたけど近くに誰もいないね。それに一定以上離れると見えない壁があって進めないや」
「あの戦闘の景色はあくまで再現でしかなさそうね。マルティナは墓場だったし、サレナにとってはこの戦場が因縁深いのかしら」
「滅神大戦以降起動していないと言っていましたから、これがその戦争なのかもしれませんね。戦争に巻き込まれないのは幸いですね」
滅神大戦とやらで使われていた魔導戦艦にサレナが最後に戦った戦闘となれば、それがこの戦争と思ってよさそうだな。
つまり神話の戦場に俺達は呼び出されたって訳だ。
今も遠くで1発で都市や山が吹っ飛びそうな光線が放たれているし、巻き込まれたらひとたまりもないぞ。
周囲の安全は把握できたので、これからどうなるのかと思っているとミニサレナが叫びだした。
『ヤァー! ヤァヤァヤァ!』
「ん? どうしたんだ」
「何か来るって言ってるんだよ! あっち!」
ミニサレナが指差す方向を見ると、遠くから黒い光を纏った何かが飛んでくる。
直後、ドカンと大きな音が響いた。見えない壁にぶち当たったらしい。
だが、それは何事もなかったかのように壁を突き破り、俺達の前まで飛んできた。
ま、まさかサレナが来やがったのか!
それは、抱きかかえられるぬいぐるみほどの大きさをした人型だった。
黒紫色の甲冑で全身を覆い、背中のバックパックから同じ色の粒子を噴き出している。
前に見たサレナの武装形態を、そのまま小さくしたような姿。
パワードスーツ姿ではあるが、どう見てもミニサレナだった。
敵のミニサレナは手に持った銃を俺達へ向ける。
だが、こちらのミニサレナに気付いたのか、引き金を引く直前で動きを止めた。
《ヤァ?》
『ヤァ! ヤァ!』
≪ヤヤァ? ヤヤヤ≫
敵のミニサレナと味方のミニサレナ同士で何やら会話をし始めた。
何を言っているかわからないから通訳はフリージア達に任せよう。
「まさかミニサレナが来るとはな……」
「あっちのミニサレナは鎧を纏っているのでありますね」
「狙い通りこっちのミニサレナを見て混乱しているみたい。何か聞いているのかしら?」
「えーと、どうして同期していないのか、命令違反だ、とか言われてるよ」
「怪しまれているけど先制攻撃されなかっただけマシだね。攻撃するなら今の内だけど……」
どっちか紛らわしいから相手はミニサレナ2とでも呼んでおこう。
ミニサレナ2から質問されてミニサレナが受け答えをしているようだ。
サレナ本体が来ない理由は分からないが、倒す対象なのは間違いない。
なら、やることは1つだ。
「ルーナ、カズィクルをぶち込んでくれ」
「ふむ、流石平八、鬼畜だ。任せろ」
会話に気を取られている今が好機。
ルーナは瞬く間に距離を詰め、無防備に浮いていたミニサレナ2へ槍を叩き込んだ。
決まった、と思った瞬間。
ミニサレナ2を覆うように、薄黒い球体が出現した。
≪ヤァァァァー!?≫
薄黒い球体がバチバチと音を鳴らしながら、衝撃を受けてかミニサレナ2は叫びながらぶっ飛んでいく。
だが本体にダメージは見えず、すぐに空中で体勢を整えると、ルーナへ銃口を向けた。
「ちっ、仕留められなかった。なんだあの膜は」
「サレナのエナジーフィールドか! ミニサレナまで使えるようになってるのかよ!」
「強化されたルーナさんのスキルすら防ぎ切るって反則じゃあないですか!」
あれはサレナが持つスキル、エナジーフィールドに違いない。
物理魔法攻撃のダメージを吸収し、能力値に変換する反則じみた防御スキルだ。
防御貫通のルーナの一撃でも吸収されちまったのか。
ミニサレナがサレナと同じスキルまで使うとは……一体どこまで再現されているんだ。
ミニサレナ2がルーナを狙い銃から光線を放ってくる。
ルーナがその場から飛び退いて回避すると、ミニサレナ2は俺やノールを完全に無視して執拗に追いかけていく。
「狙いは私か。ならしばらく引き付けよう。その間に対策をしろ」
「わ、わかった! 危なくなったらこっちに来いよ!」
「うむ」
ルーナが俺達から離れるとやはりミニサレナ2はその後を追った。
どうやら不意打ちでルーナを1番の脅威だと認識したようだ。
エナジーフィールドがなかったらあれで破壊できた可能性は高い。
今の内にどうにかシールドを突破して倒す方法を考えなければ。
ミニサレナ2は自由自在に宙を飛び回り、絶妙な距離を保ちながら光線を連射する。
あれは飛行しながら中距離で攻撃できる、サレナのミドルレンジ装備だ。
リロードもなく攻撃は途切れず、時折こちらにも流れ弾が飛んでくる。
シスハとエステルが結界を張り俺とノールが防御に専念するが、それでも完全には防ぎ切れない。
俺は飛んできた一撃を鍋の蓋で受け止め、腕を弾かれながらも何とか直撃を逸らした。
「ぐっ、流れ弾でこの威力か! 狙われたらひとたまりもないぞ!」
「シスハの結界と私の魔法でどうにか相殺できるけれど、直接狙われたら危険ね。それにあれ以外の武装もあるのよね?」
「ああ、あれは多分ミドルレンジだ。ショートレンジやロングレンジで襲われたら防げるか怪しいぞ」
「ルーナさんを脅威として主に狙っているのに救われていますね。見ていてハラハラしますよ……。できれば代わりたいですが、いくら私でもあれに狙われたら瞬殺されちゃいそうです」
「そんなことするぐらいなら大人しく回復に専念してろって言われるぞ」
ミニサレナ2の猛攻はルーナ以外じゃ回避すらできないだろうな。
そのルーナですら長く持ちそうにないから、早く対処法を考えなければ。
俺達が作戦を練っている間も、マルティナはゴーストを飛ばしてミニサレナ2に対して憑依によるデバフを試していた。
その結果、ゴーストが取り憑いた途端ガクッと飛行速度が落ちる。
「やった! 魔導機兵でも僕のデバフは効果がある!」
「マルティナちゃんナイスなんだよ! それなら私も!」
フリージアが弓を放つ。
だが矢はエナジーフィールドに阻まれ本体に届かない。
それでもフリージアはさらに強く弓を引き、緑色のオーラを纏わせた。
新スキル、カノネスサギッタだ。
カノネスサギッタが放たれると周囲に暴風が吹き荒れて、ミニサレナ2の光線にも劣らない速度で飛んでいく。
そしてミニサレナ2に当たったのだが、やはりエナジーフィールドに阻まれて本体に直撃しない。
だが、薄黒い球体が更に薄くなっている。
ルーナとフリージアのスキルを一発ずつ受けても、まだ突破できないのか。
ミニサレナ相手でこれって反則だろ!
『ヤァー!』
「えっ?」
ミニサレナの叫びに反応して振り向くと、全く警戒していなかった後方からフリージア目掛けて光線が飛んでくる。
慌てて滑り込んで鍋の蓋で何とか防ぎ切った。
あ、危なかった……理外の方向から飛んできやがったぞ。
「直撃なら今のでやられてたな。ミニサレナ、助かった」
『ヤァ!』
「誰もいない方向から飛んできたのでありますよ!」
「ルーナに対して撃った光線が途中でねじ曲がったみたい。いざって時まで能力を隠していたのね」
「カノネスサギッタは当たったけどダメージがなかった! あの透明な壁ずるいんだよ!」
「ですが最初よりは薄くなっているので全く無意味ではなさそうですね」
フリージアも脅威だと認識されたらしい。
このまま時間をかけるのはまずい。
何としても早めにエナジーフィールドを剥がすしかない。
「エステル、ミニサレナが逃げられない程の広範囲攻撃を連発してくれ」
「わかったわ」
「それでバリアが解けたら、フリージアはカノネスサギッタをぶち込め。マルティナもありったけデバフをかけるんだ」
「任せて」
「了解しましたなんだよ!」
フリージアのスキルはクールタイムが短い。
マルティナのデバフ、エステルの広範囲魔法、そしてフリージアの一撃でフィールドを削る。
最後はルーナのカズィクルだ。
ルーナは遠くにいるから事前に打ち合わせできないが、既にスキルのクールタイムも終わっているから察してスキルを使ってくれるはずだ。
まずマルティナがゴーストを増やし、ミニサレナ2へ次々に憑依させる。
流石に無視できなくなったのか、ミニサレナ2は纏わりつくゴーストへ攻撃を始めた。
だが霊体だからか、一瞬霧散するだけですぐに復活する。
そこにフリージアが矢を放ち、さっきのカノネスサギッタを警戒してか高速で飛び回避している。
「えいっ! えいっ! えいっ!」
エステルの掛け声と共に大きな爆発が何度も起きる。
回避不能な広範囲攻撃にミニサレナ2も止まり防御に専念していたが、そこにフリージアがカノネスサギッタを撃ち込んだ。
バリン、と音を立ててエナジーフィールドが砕け散る。
その直後、間髪入れずにルーナが槍が飛んできてミニサレナ2を貫くと大爆発を起こした。
「よっしゃ! ミニサレナを倒したぞ!」
「神話級の割にはあっさり倒せたわね。これならサレナともそこそこ戦えそうかしら?」
「全く通用しないってことはなさそうです。まあ、ミニサレナさん1体にここまで苦戦したのをどう考えるかですけど」
やっと倒した。だが、相手はあくまでミニサレナだ。
本来はサレナ本体と複数体のミニサレナで運用される前提のはず。
そう考えると全然安心できないぞ。
『ヤヤッ!? ヤァァー!』
「また何か来るって!」
指差す方向を見ると、黒紫色の甲冑を纏った人物が突然現れた。
途端に何かに圧し潰されるような感覚が全身を襲う。
周囲の温度まで上がったように感じた。
俺達と同じぐらいの大きさ。手には巨大なライフル銃。
今度こそ正真正銘、機械神サレナだった。
「所属不明勢力を確認。警戒レベル5。これより殲滅行動を開始します」
そう宣言して頭上に浮遊するサレナは銃口を俺達に向けた。




