⒌可能性
開かれたウィンドウをみて、俺は驚嘆の声をあげる。
(お、おぉ……すごい、めちゃくちゃ事細かに情報が示されてる)
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[ ■ ANALYZE_RESULT ]
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[ TARGET ] ─────────────────────
- NAME : 魔法大全:初級・中級 [変更]
[ PHYSICAL_DATA ] ─────────────────
- HEIGHT : 30.0 cm
- WIDTH : 22.0 cm
- DEPTH : 6.5 cm
- WEIGHT : 2.5 kg
[ FILE_DATA ] ────────────────────
- SIZE : 64 KB
[ SECURITY ] ────────────────────
- STATUS : ENCRYPTED
- LEVEL : 01
───────────────────────────────────
───────────────────────────────────
[ ■ ANALYZE_RESULT ]
───────────────────────────────────
[ TARGET ] ─────────────────────
- NAME : 古代神話物語 [変更]
[ PHYSICAL_DATA ] ─────────────────
- HEIGHT : 18.8 cm
- WIDTH : 12.8 cm
- DEPTH : 1.8 cm
- WEIGHT : 0.35 kg
[ FILE_DATA ] ────────────────────
- SIZE : 12 KB
[ SECURITY ] ────────────────────
- STATUS : ENCRYPTED
- LEVEL : 01
───────────────────────────────────
『粗方の確認は終わりましたか?』
(うん。まあ大体は。すごいな、詳細なサイズまで書いてあるぞ)
『実際には、この裏でもっと複雑なコード解析を行なっております。全て、【コピー&ペースト】に転用可能なようにです。では、一旦3Dモデルに出力してみましょう』
シェルがそういうと、また新しくウィンドウが開く───今度は横向きに。そして、ヴンッと音を立てながら、少し紫がかった3Dモデルが展開される。
(おお、すっげーリアル)
そう言いながら、手元に浮かんでいる(シェルの優しい心遣いだ)二冊の本とモデルを見比べる。いや、それにしても本当に似てるな、これ。
(もうちょっとじっくり観察してもいい?)
少し、いやかなり好奇心がそそられる。
『はい、いくらでも』
その言葉を聞いて安心する。これでそれなりに楽しめそうだ。
………
『マスター、いつまで寝ておられるつもりですか?早く起きてください。私はあくまで設計されたシステムですが、それにしても限度というものがあります』
「……あう?…………」
………
(………はっ!シェル、俺寝てた!?)
『はい、ぐっすりと。おおよそ10時間ほどになります』
(うわぁ、やべー)
こりゃあやらかしましたな。まあしゃあない、だって赤ちゃんだもの。
『眠気はもう大丈夫ですか?』
(おう、気分爽快最高の目覚めだぜ)
『それでは続きを始めるとしましょうか』
(いえーい)
『まず、この解析結果のウインドウに向かって、コピー&ペーストのコピーを使用してください。コード入力の場合は「copy.target_data(ANALYZE:魔法大全:初級・中級&古代神話物語)」と入力してください』
(えーと、copy.target_data(ANALYZE:魔法大全:初級・中級&古代神話物語)、と)
そう呟きながら、青っぽい色の透けるキーボードで画面にコードを入力する。というか便利だな思考伝達。多分口頭で伝えられたんじゃ一切理解できないコードが頭の中にスッと入ってくる。
(打ち込めたよ)
『それでは起動してください』
エンターキーを軽くタップする。すると、新たなログが流れていく。
[ SYSTEM_LOG ] ───────────────────────────
▶ ターゲット:『魔法大全:初級・中級』のコピーを開始します
▶ スキャン中…… [━━━━━━━━━━] 100%
▶ コピー完了:[Data:魔法大全:初級・中級]
▶ ターゲット:『古代神話物語』のコピーを開始します
▶ スキャン中…… [━━━━━━━━━━] 100%
▶ コピー完了:[Data:古代神話物語]
▶︎データの永久保存を選択……
▶︎システムにより否認されました
▶︎データの一時保存を開始……
▶︎一時保存完了
▶︎スキル【コピー&ペースト】[ペースト]の用意完了
『それでは、ペーストを使用してください。コードで行う場合は「paste.target_data(魔法大全:初級・中級&古代神話物語)」です』
(えーと、paste.target_data(魔法大全:初級・中級&古代神話物語)、か。よし、できたぞ)
『スキル補助システム……起動』
シェルがそう呟くと、俺の視界に、先ほどの魔法大全が青白い状態で見えた。
(なにこれ)
『そのデータモデルを、ペーストしたい場所に合わせて移動させてください。演じるだけで移動は可能です。モデルが赤くなっている時はペースト不可……他の物質と座標が被ってしまう位置になりますので、位置を移動してください。決定しましたら、ペーストを起動してください』
(OK)
どういう原理でこんなことができるのかは意味不明だけど、まあ便利だしいいか。そう思いながら、モデルの位置を移動させていく。
(うーん、もうここでいいや)
別にどこに出したところで大した変わりはないので、適当に目の前にモデルを移動させペーストを起動する。もちろん、空中に浮かないようにしてある。それで俺が怪我すると面倒だからな。どうやって本を移動させたのかとか、どうやって怪我するような状況になったのかとか。
(ん?というかさっきの本ってどこに置いてたっけ?)
『既に、元の位置に戻しております。マスターがすやすやと眠られている間、何回か使用人らが来ましたので』
(あ、そうなんだ。ありがとう)
『いえ、大して労力を必要としませんので。この程度なら何なりと』
(そっか。まあ早く自分で色々でき雨量にならなきゃなー……【ハック】でなんとかならない?)
『今のレベルでは、というかまだ【解析】と【コピー&ペースト】しか使用したことのないマスターでは、身体のハッキングなど到底無理ですね』
(まあそうだよなぁ。まあいいや、とにかくペーストしよう!)
『それがよろしいかと』
そう言って、エンターキーを押す。すると、一瞬、視界がぐにゃりと歪んだように見え、だんだんと光の粒子が集まった次の瞬間、目の前に2冊の本が現れた。
(ほえー、すげぇ)
『実際に触ってみてください』
そう言われてので、解析結果で軽かった古代神話物語を手に取ってみる。
ズシッ
あっ、だめだこりゃ。持ち上げるなんてもってのほかだわ。無理無理、こんなん持てるわけない。というか、よく考えたら生後1ヶ月と1日の俺が1.8キロなんて持ち上げられるわけねえし。まあ開いてみるだけにしよう。
「第一章:神々の誕生
およそ世界の始まりにおいて、神々は「無」より出でたまうた。
天地もいまだ分かたれぬ混沌の最中、一番最初に顕れた孤高なる神は、その誕生の瞬間に、遍く世界を覆う一筋の「白き光」を放ちたもうた。これこそが、万物の祖たる【創造神】の夜明けである。
やがて、その大いなる白き光の器より、すべての根源たる【七柱の神】が生まれ出でた。
七柱の神々は、おのおのが異なる色の光を世界に与え、その織り成す「七色の光」の調和の中から、さらに数多の気高き神々が次々と産み落とされたのである。
しかし、世界の平穏は一様ならず。
創造神は、光と闇が激しく交わる最果ての境において、すべてを無へと還す【破壊の力】をも密かにその身に宿しておられたのだ。……」
(お、おう、なんというか、いかにもな感じのだな)
『これについては、また後日訂正させていただきます。一部、というか全体的に事実と相違がありますので』
(りょーかい)
『ということで、これが今現在マスターのできる「ハッキング」です』
(ふーん。でも、なんというか……しょぼくね?)
『レベルを上げていただいてから仰ってください。今のレベルでは、最大レベルの状態と比べれば、計り知れない差があるのですから』
(えー。でもなぁ……)
『はぁ……』
お、クソデカため息をされたぞ。なんかこういうところを見ると人間っぽいよな。
『最大権限の一時取得条件を開示……条件の達成を確認。最大権限一時取得を審議……G1:承認、G2:承認、G3:承認、G4:承認、G5:承認、G6:承認、G7:承認、G0:承認、満場一致最大権限一時取得……完了』
(ん?どうした?)
『いえ。今から、ハッカーの可能性を見せようかと』
(え?)
『まずは……【初期化】…範囲:全域……除外指定:フィリス・メトリオ』
シェルがそう呟いた瞬間、世界が崩壊する。いや、比喩とかではなく。世界に存在するすべての物質が、細かな光の粒子となって、散っていく。一瞬、母さんの顔も見えた気がする。しかし、次の瞬間には光の奔流となって消え去る。
「え、ちょ」
そう言った後、驚愕する。
「え、なんで喋れてんの?」
しかし世界の崩壊は止まらない。光の奔流は上へ上へと流れていき、消え去る。いつの間にか、俺の足元は真っ白な空間と化していた。俺は浮いているのか?遠くの方に、少しだけ、色が見える。しかし、それもあっという間に消え去っていく。
『どうでしょうか?』
シェルがそういった。だがそれどころでは無い。ベッドは?本は?母さんは?父さんは?兄は?メイドは?家は?庭は?…………世界は?
『混乱しておられますか?そうでしょうね。これは初期化。指定した範囲を、未定義の状態に戻す。いつか、獲得できるスキルですよ。まあこれ以上のものもあるのですが……やめておきましょうか』
「え、あ、あ?」
『全てが未定義になったんです。説明したでしょう?マナはコードによって定義されると。それを未定義に戻したんですから、全てが霧散するに決まっているでしょう』
いや、決まっているでしょうじゃなくて……
『大丈夫ですよ?あなたは消えませんから。しっかり、可能性を見てもらわないといけませんので』
「いや、そうじゃ無いだろ!?」
意識が急に覚醒する。
「ベッドは?家族は?世界は?どうなってるんだよ!?」
『言っているでしょう?ハッカーの可能性を見せるって。これが、ハッカーの可能性です』
「やば、すぎだろ……」
『それでは【コード追加】:【再構築】…指定範囲:全域』
また、シェルがそう呟く。すると、消え去っていった光の奔流が、まるで時間を巻き戻したかのように、下へと戻ってくる。そして、世界が再構築される。
……
気づけば……いつものように、ベットの上。横を向くと、シェルの姿が。
『いかがでしたか?これが、〈ハッカー〉の力です』
今日、俺は〈ハッカー〉の恐ろしさを知ったような気がした。
別にそんなつもりじゃ無いのにシェルさんが怖い感じになってしまう……これは、普通に作者の文章力が足りないだけです。シェルさんはそんな怖い子じゃありません




